二章 始まりの火種
~セルビア国・国境付近~
セイブは『神魂器』特有の世界空間移動『旋回の雲』によって、アウセント、ヴェンマーと共にセルビア国付近まで来ていた
ここに来たのはいいが、彼等三人は目の前の光景をただ呆然と眺めるしかなかった
それは三人が知っているセルビアという国とは明らかに何から何まで違っていたからである
「これは一体…どうなっているんでしょうね…?」
「は…はは…ここは別世界…かな?」
アウセントは苦笑混じりに近くにある建物に手で触ってみる
その後ろでセイブとヴェンマーは目の前の光景をただ疑うことしかできなかった
「レシフォスからいただいた指令と何か関係が…」
そう呟いたセイブが警戒体勢に入ったのは次の瞬間だった
何かものすごい力を感じて、セイブは力を感じた方向を凝視し、遅れてアウセントとヴェンマーも警戒し、建物に身を潜める
「……」
――いる…明らかに強い何かが…
これだけの『力』を隠すことなく堂々とさらけ出して何を―――
が、やがて疑心は一つの確信へと変貌していく
その『力』は一直線にこちらへ向かっていたのであった。もしただの通りすがりだとしてもここまで堂々と『力』を放つ筈がない
狙われている――そして自分達の居場所も既に知られている…と、セイブの直感がそう感じ取った
確率としては大体八割強、もしかしたらその『力』の者には他の目的があるかも知れないが、警戒を強めることに越したことはない
人気がないこの場所に徐々に足音が聞こえ始める