一章 始まった世界
そう口に出して、レクセスは手中の目覚まし時計を一握りで跡形もなく潰し、ゴミ同然に無造作に投げ捨てる
「『別の時代』からこの世界に現界した者達のことだ。どういうことか分かるな?」
問いを投げられたエンダルフィンはほんの一瞬、何のことか理解できなかったが、落ち着いて考え、理解を深めてから問いに対しての疑問を返す
「それは分かるが、いくらその連中が強かろうと、そのレベルは他の世界とそこまでは変わらんだろう?」
「………」
レクセスは無言のまま目線を鋭くし、『それは違う』と言わんばかりに沈黙を保つ
しばらく経ってから沈黙の意図を察した巨漢の男は悟った
「まさか…」
「ああ…ザヴァルグ、ゼルラージ、アンジェルノ、スタード…どいつも別の世界で最強だった者達とは並み違いの強さだ…この世界の手記を拝見して、ある程度の強さを持っていると思ってはいたんだがな…」
『次元変動』は微弱な霊気で世界全体を覆うことで始めて成立する力だが、霊気の扱いに相当長けた者ならば、意思の関係もなく、流されている霊気を拾い、己の物として扱うことができる
実際、レクセスは『次元変動』を引き続き行使し、試しに『空間亀裂』を起こそうとしても、あらゆる地域に流した霊気が、各地でことごとくシャットアウトされている
「『次元変動』を続行させるには各地に点在する強者を倒さなければならない…ということだ…まあいい、どちらにしろ『空間亀裂』を起こすにはだ早い。それよりもオレ達が何とかしなくてはならない問題はこれだけではない」
依然としてレクセスは視線を崩すことなく保ち続け、逆にエンダルフィンは落胆したように視線を落とす
「先程オレはスタードという名を口にしたよな…」
「それが何だ…?」
「オレが拝見した手記によると、奴の本名はスタード・ジークフリートというらしいな。何でも、『伝説の英雄』として名を挙げていたと」
「ジークフリート…」
こんな土壇場で厄介な奴が…と、巨漢な男は溜め息をつく