第80話 神託国家構想
都市ヴェルクの報告は、神殿にも届いていた。
倒産。
撤退。
人口減少。
紙の上に並ぶ数字は冷たい。
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だがカルドは、その報告を淡々と閉じた。
「問題ない」
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アルノーが思わず顔を上げる。
「……問題ない?」
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「そうだ」
カルドは答える。
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「全体として利益が出ている」
「交易は安定している」
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「ならば」
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「正しい」
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その言葉に、アルノーは言葉を失う。
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「一つの都市が落ちることで」
カルドは続ける。
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「十の都市が安定するなら」
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「それは成功だ」
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迷いのない声だった。
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リリアーナは静かに言う。
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「選ばれなかった側は」
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「どうなりますか」
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カルドは一瞬だけ彼女を見る。
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「適応する」
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「できなければ」
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「消える」
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その言葉は残酷ではない。
ただの前提として語られている。
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沈黙。
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カルドはゆっくり歩き出す。
神殿の中央、星盤の前へ。
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「君たちは」
振り向かずに言う。
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「まだ小さく考えている」
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星盤を見下ろす。
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「村」
「都市」
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「違う」
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「国家だ」
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その一言で空気が変わる。
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「神託は」
カルドは言う。
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「国家を導くために使う」
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「税」
「軍」
「外交」
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「すべてを神託で決める」
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アルノーが思わず言う。
「そんなことが……」
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「できる」
カルドは即答する。
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「すでに都市で成功している」
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「次は国家だ」
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ルシアは静かに彼を見る。
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「人は」
彼女は言う。
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「それを受け入れますか」
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カルドは笑う。
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「受け入れる」
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「なぜなら」
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「楽だからだ」
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その言葉は静かだった。
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「迷わなくていい」
「責任を取らなくていい」
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「それを拒む理由はない」
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神殿の外では風が吹いている。
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星は変わらず空にある。
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だが今、
その星はただの光ではない。
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世界を動かす意思として、
使われようとしていた。
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そしてその中心にいるのは、
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神ではなく、
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それを読む人間だった。
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