第79話 見落とされた都市
リュミアの成功は、すぐに周辺都市へ広がった。
神託による交易調整。
摩擦のない決断。
利益の増加。
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「うちでも導入しよう」
「神託を取り入れれば安定する」
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都市連盟のいくつかは、それを歓迎した。
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だが。
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同じ頃、別の都市で問題が起きていた。
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都市ヴェルク。
小さな内陸都市。
交易路の分岐点にある。
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だが神託では、
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「西路優先」
「東路制限」
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と示された。
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その結果、
ヴェルクを通る東路の流通は減少した。
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最初は小さな変化だった。
荷が少し減る。
人の往来が少し減る。
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だがそれが積み重なる。
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「商人が来ない」
「倉庫が空いている」
「雇いが減った」
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都市の空気が変わる。
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市場は静かになる。
人の声が減る。
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数週間後。
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「……倒産が出ています」
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報告が都市連盟に届く。
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「複数の商会が撤退」
「雇用の減少」
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リュミアは成功した。
だがヴェルクは沈み始めていた。
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アルノーはその報告書を握る。
「……なぜ」
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答えは簡単だった。
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神託は、
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**全体を最適化する**
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だがその過程で、
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**切り捨てられる場所がある**
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リリアーナは静かに言う。
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「見落とされたのではありません」
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「選ばれなかっただけです」
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アルノーは顔を上げる。
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「それは」
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「正しいのですか」
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問いは重い。
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リリアーナは少しだけ考え、
静かに答える。
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「正しい、という言葉では」
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「説明できません」
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その時、カルドが言う。
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「当然だ」
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彼は報告書を一瞥する。
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「すべてを救う選択はない」
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「一部が落ちることで、全体が上がる」
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「それが最適だ」
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迷いのない声。
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アルノーは言葉を失う。
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リュミアでは人が笑っている。
ヴェルクでは人が減っている。
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どちらも同じ神託の結果。
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夕暮れの空に星が浮かぶ。
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その光は、
すべての都市に同じように降りている。
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だがその下で、
人の運命は、
同じではなかった。
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