第78話 成功した神託
都市リュミアの議場では、異例の静けさが広がっていた。
本来ここは、怒号と議論が飛び交う場所だ。
商人。
貴族。
代表者。
利害がぶつかり合う。
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だが今日は違う。
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「神託による提案です」
修道士が中央に立ち、書簡を広げる。
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「西路交易を優先」
「東路は一時制限」
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それだけ。
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通常なら反対が出る。
東路の商人が抗議する。
税収の問題が出る。
利権が絡む。
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だが今日は――
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「……神託なら」
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誰かが言う。
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「従おう」
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それで決まった。
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議場は、静かに解散する。
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アルノーはその光景を見ていた。
信じられないほど速い。
そして、
信じられないほど摩擦がない。
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「……決まりました」
彼は小さく言う。
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「ええ」
リリアーナは頷く。
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通常なら数日かかる決定が、
数分で終わった。
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数日後。
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結果が出る。
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西路の交易は増加。
流通は安定。
価格は下がる。
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そして――
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「利益が出ています」
都市の報告書が読み上げられる。
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「混乱もありません」
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成功だった。
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誰もがそれを認める。
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アルノーは思わず言う。
「……正しい」
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この決定は正しい。
結果が出ている。
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その時、背後から声がする。
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「当然だ」
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カルドだった。
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「神託は」
彼は言う。
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「最も合理的な道を示す」
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その顔には疑いがない。
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「人の会議よりも速く」
「人の判断よりも正確」
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「だから」
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「広がる」
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リリアーナは彼を見る。
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「すべてが上手くいくとは限りません」
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カルドは笑う。
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「もちろんだ」
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「だが」
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「成功が一つあれば」
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「人は信じる」
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広場では、人々が安堵している。
利益が出た。
混乱がなかった。
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それで十分だった。
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アルノーはその様子を見ながら、
少しだけ背筋が冷たくなる。
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正しい。
うまくいっている。
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だからこそ、
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**止められない**
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神託は、
静かに、
確実に、
世界の中へ入り込んでいた。
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