第77話 広がる神託
都市リュミアでは、神託の影響がさらに広がっていた。
港。
船の出入りは、これまで商会の交渉で決まっていた。
だが今は違う。
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「本日の優先は第三船団」
役人が紙を掲げる。
「神託による順序だ」
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船長たちは顔を見合わせる。
不満はある。
だが、大きな抗議は起きない。
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「神託なら仕方ない」
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その一言で収まる。
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税務局でも同じだった。
商人たちが列を作る。
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「今年の軽減対象は」
役人が書類を読む。
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「北区画の穀物商」
「南区画の織物業」
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「神託です」
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理由はそれだけ。
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ある商人が小さく呟く。
「なぜ自分じゃない」
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だが声は大きくならない。
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「神託だから」
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その言葉が、すべてを止める。
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都市の中央広場。
人々が集まっている。
星導教の修道士が台に立ち、神託を読み上げる。
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「来月の交易は西路を優先」
「東路は制限」
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人々は頷く。
議論は起きない。
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その様子を、少し離れた場所からアルノーが見ていた。
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「……早い」
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決断が早い。
迷いがない。
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「都市でも」
彼は言う。
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「回ります」
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リリアーナは答えない。
ただ広場を見る。
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確かに回っている。
混乱はない。
争いも少ない。
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だが。
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広場の端で、二人の商人が小さく言い合っていた。
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「本当にこれでいいのか」
「神託だぞ」
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「でも」
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声は小さい。
すぐに消える。
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神託は、争いを減らす。
だが同時に、
**疑問を押し込める**。
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その時、広場に一人の男が現れた。
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黒い外套。
高い背。
鋭い視線。
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カルド・ヴァルグリス。
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彼は広場を見渡す。
人の流れ。
神託に従う都市。
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「……良い」
小さく呟く。
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「これが」
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「正しい形だ」
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その目には確信があった。
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村で始まったものが、
都市に広がる。
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そしてその先にあるものを、
彼だけは見ている。
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神託はもう、
人の生活の補助ではない。
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世界を動かす仕組みへと、
変わり始めていた。
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