第73話 星導教の会議
中央神殿からの司祭が来て以来、神殿では珍しいことが起きていた。
会議である。
星導教では、本来あまり行われないものだ。
決断は神託が下す。
議論は必要ない。
だが今回は違った。
---
神殿の奥の会議室。
石の円卓を囲んで、数人の修道士が座っている。
中央にカルド・ヴァルグリス。
そして対面にルシア・エルフェルト。
---
「地方神殿の運営としては問題ない」
カルドが言う。
「疫病への対応も迅速だった」
修道士たちは頷く。
---
「だが」
カルドの声が少し低くなる。
---
「この地方の神託は」
---
「小さすぎる」
---
修道士たちが顔を見合わせる。
---
「小さい?」
一人が聞く。
---
「そうだ」
カルドは星導教の紋章を指でなぞる。
---
「神託とは」
ゆっくり言う。
---
「人を導くものだ」
---
「村の水路」
「畑の収穫」
「疫病の泉」
---
「そんなもののためではない」
---
空気が静まる。
---
「では」
若い修道士が聞く。
「神託は何のために」
---
カルドは答える。
---
「国家だ」
---
その一言で部屋が凍る。
---
「国家の方向を示す」
「戦争を避け」
「税を整え」
「人の迷いを消す」
---
「それが神託だ」
---
ルシアが静かに言う。
「それは統治です」
---
「そうだ」
カルドは迷わず答える。
---
「神による統治」
---
修道士の一人が不安そうに言う。
「ですが……」
「王国があります」
---
カルドは笑う。
---
「王は迷う」
---
「貴族も迷う」
---
「民はさらに迷う」
---
机に手を置く。
---
「だが」
---
「神は迷わない」
---
沈黙。
---
ルシアはゆっくり言う。
「神託は道を示します」
---
「ですが」
---
「選ぶのは人です」
---
カルドは首を振る。
---
「それが争いの原因だ」
---
「人に選ばせるから」
---
「世界は乱れる」
---
修道士たちは言葉を失う。
---
カルドは椅子から立ち上がる。
---
「神託国家」
---
静かに言う。
---
「それが星導教の未来だ」
---
ルシアは彼を見つめる。
---
神託は道を示すものだった。
人を導くための灯り。
---
だが今、
その灯りを
**世界の上に置こうとする男**がいる。
---
神殿の外では夜が深まり、
星が一つ、また一つと増えていた。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をお願いします。
応援が励みになります!
これからもどうぞよろしくお願いします!




