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婚約破棄された悪役令嬢ですが、仕事を奪った王宮が先に崩れました  作者: 水城ルナ


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第7話 対等な提案

 王宮の回廊は、夜になると人が少ない。

 灯りも抑えられ、昼間とは別の顔を見せる。


 リリアーナが足を止めたのは、人気のない書庫前だった。


「……つけられているわけではない」


 気配は、はっきりしている。

 隠すつもりのない、静かな歩調。


「やはり、君か」


 振り返ると、第二王子カイエル・ルーヴェンが立っていた。

 護衛も、近侍もいない。


「こんばんは、リリアーナ嬢」


「殿下。お一人で?」


「君も同じだろう」


 余計な挨拶はない。

 それだけで、この場が“用件だけの場”だと分かる。


「立ち話で構わない。

 今の君を、引き留める立場でもないからな」


 リリアーナは、表情を変えなかった。


「ご用件は?」


「率直に言おう」


 カイエルは一歩も近づかず、距離を保ったまま告げる。


「兄上は、君を切る」


 断定だった。


「時期は読めないが、方向は変わらない。

 聖女を中心に据える以上、君は“邪魔”になる」


 事実の列挙。

 感情はない。


「……ご忠告、感謝します」


「忠告ではない」


 カイエルは、わずかに口角を上げた。


「提案だ」


 その言葉に、リリアーナは初めて視線を向ける。


「君が王宮を離れる時、

 その“後”を、俺と組まないか」


「殿下は、私に何を求めているのですか」


 即座の質問。

 曖昧な言葉は、受け取らない。


「能力だ」


 即答だった。


「感情で動かず、全体を見て、

 必要な線を引ける人間は少ない」


 一拍置き、続ける。


「君が抜けた後、王宮は確実に混乱する。

 俺はそれを“見てから拾う”ほど、悠長ではない」


 利用価値の提示。

 誤魔化しのない言葉。


 リリアーナは、少しだけ考えた。


 (守る、ではない)


 彼は、庇おうとしていない。

 同情も、慰めもない。


 ――だからこそ、信用できる。


「条件を伺いましょう」


 そう言うと、カイエルは目を細めた。


「話が早いな」


「感情論で来られるより、好ましいです」


 正直な返答だった。


「君は王宮を去る。

 だが、人脈と情報は持ち出せる」


「……可能でしょう」


 すでに整理は終わっている。


「その後、俺の管理下で一部の業務を引き継いでもらう。

 表には出ない。

 だが、判断は君に委ねる」


 リリアーナは、即座に計算する。


 責任。

 権限。

 そして、自由度。


 悪くない。

 いや――かなり良い。


「私に拒否権は?」


「ある」


 迷いのない答え。


「その代わり、結果責任も君が負う」


 公平だ。


 リリアーナは、小さく息を吐いた。


「……一つ、確認を」


「何だ?」


「私は、“拾われる”立場ではありません」


 カイエルの視線が、鋭くなる。


「承知している」


 その一言に、嘘はなかった。


「だから、頼んでいる」


 ――初めてだ。


 彼女の能力を、

 立場ではなく“価値”として見た人間は。


「検討します」


「構わない。

 だが、時間は多くない」


「ええ。理解しています」


 リリアーナは一礼し、踵を返す。


 背後から、カイエルの声が飛んだ。


「一つだけ」


「?」


「君は、まだ何も失っていない」


 彼女は、振り返らなかった。


 (その通り)


 失うのは、

 役目を終えた立場だけ。


 それ以外は――

 すでに、次の場所にある。


 リリアーナは、夜の回廊を静かに歩き去った。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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