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婚約破棄された悪役令嬢ですが、仕事を奪った王宮が先に崩れました  作者: 水城ルナ


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第62話 否定される整理

 神殿の広間は、昼でも薄暗い。


 天井の高い円形の空間。

 中央には星盤。

 壁際には祈りの台。


 そこに、リリアーナとルシアが向かい合っていた。


 今回は偶然ではない。

 ルシアが呼んだのだ。


---


「あなたのやり方を、少し見ました」


 ルシアは静かに言う。


「都市連盟での調整」

「地方会議での整理」


 彼女の声は落ち着いている。


「人の迷いを並べる方法」


---


 リリアーナは軽く頷く。


「ええ」


 それ以上は言わない。


---


「私は」


 ルシアは星盤の縁に手を置く。


「あなたの方法を、危険だと思っています」


---


 アルノーが思わず顔を上げる。


 敵意のない言い方だった。


 だが、はっきりした否定だ。


---


「危険ですか」


 リリアーナは穏やかに聞き返す。


---


「ええ」


 ルシアは迷わない。


「あなたは人に迷いを与えます」


---


 広間に静かな空気が流れる。


---


「人は本来、弱い」


 ルシアは続ける。


「守るものがあれば迷い」

「恐れがあれば揺れる」


「だから神託があるのです」


---


 彼女は星盤を指でなぞる。


「示された道を進めば、

 争いは減ります」


---


「ですがあなたは」


 視線をリリアーナへ向ける。


---


「迷いを増やす」


---


 アルノーは思わず息を止める。


 その言葉は鋭い。


---


 だがリリアーナは驚かなかった。


「ええ」


 静かに答える。


---


 ルシアの目がわずかに揺れる。


---


「私は」


 リリアーナは続ける。


「迷いを消すことはできません」


---


「人は迷います」


「それは弱さではなく、

 守るものがある証です」


---


 ルシアは首を振る。


「その迷いが争いを生む」


---


「ええ」


 リリアーナは否定しない。


---


「ですが」


 彼女は一歩だけ星盤に近づく。


---


「迷いを消したとき」


---


「人は」


 少し間を置く。


---


「何を守りたかったのか、

 分からなくなることがあります」


---


 長い沈黙。


 神殿の灯りが揺れる。


---


 ルシアは星図を閉じる。


「あなたは」


 小さく息を吐く。


---


「人を信じすぎています」


---


 リリアーナは首を振る。


---


「いいえ」


---


 夜空を見上げる。


---


「私は」


---


「人が迷うことを信じています」


---


 アルノーはその言葉を聞きながら思う。


 星導教は、

 迷いを終わらせる。


 リリアーナは、

 迷いを並べる。


---


 二つの方法は、

 同じ問題を見ている。


 だが、

 まったく違う答えを出していた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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