表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された悪役令嬢ですが、仕事を奪った王宮が先に崩れました  作者: 水城ルナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/86

第57話 迷わない人々

 翌朝。


 星導教領の朝は、早い。


 鐘が三度鳴ると、市場が開き、

 役人が帳簿を広げ、

 村人はそれぞれの持ち場に向かう。


 誰も急がない。

 だが、滞りもしない。


 決めるべきことは、

 すでに決まっているからだ。


---


「税率変更の通知です」


 役人が紙を配る。


 昨日の神託で決まったものだ。


 農民はそれを読み、

 特に驚きもせず頷く。


「今年は少し軽いな」


「星がそう示したのだろう」


 会話は、それで終わる。


---


 アルノーはその様子を見ていた。


「……本当に迷っていません」


「ええ」


 リリアーナは短く答える。


「少なくとも、表では」


---


 港でも同じだった。


 荷役の順番は、

 神殿が示した優先順位で決まる。


「次は南港の船」


「星盤の順番だ」


 船長たちは文句を言わない。


 自分の判断ではないからだ。


---


「争いは減ります」


 背後から声がする。


 振り向くと、

 ルシア・エルフェルトが立っていた。


「人が決めれば、必ず誰かが不満を持つ」

「ですが神託なら、受け入れやすい」


 穏やかな説明。


---


「決断の速さは、確かに魅力です」


 アルノーが言う。


「ええ」


 ルシアは微笑む。


「迷いは、人を疲れさせます」


 彼女は、星図を軽く閉じる。


「神は、その負担を軽くしてくださる」


---


 広場では、小さな揉め事が起きていた。


「順番を変えてほしい」


 商人が訴える。


「船が遅れているんだ」


 役人は首を振る。


「星盤の順番です」


 それで終わる。


 議論は続かない。


---


 アルノーは、少し戸惑う。


「もし、本当に不公平だったら」


「星は全体を見る」


 ルシアは迷いなく答える。


「一時の不満より、

 長い調和を選ぶのです」


---


 夕方。


 神殿の階段で、

 アルノーはリリアーナに言う。


「ここでは、あなたの仕事は必要ありません」


「ええ」


 リリアーナは否定しない。


 迷いが少ない場所では、

 整理は不要だ。


---


「……少し、羨ましいですね」


 アルノーは苦笑する。


 都市連盟では、

 一つの決断に何日もかかる。


 ここでは、数分だ。


---


 リリアーナは空を見上げる。


 星は、整然と並んでいる。


「迷わないことは、強さです」


 彼女は言う。


「ですが」


 言葉はそこで止まる。


---


 遠くで、

 一人の村人が小さく呟く。


「……本当にこれでいいのか」


 その声は、すぐに風に消えた。


---


 迷いは、消えたわけではない。


 ただ、

 **声に出されない形に変わっただけ**。


 星導教の安定は、

 確かに存在する。


 だがその静けさの下で、

 小さな疑問が、

 まだ消えずに残っていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ