表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された悪役令嬢ですが、仕事を奪った王宮が先に崩れました  作者: 水城ルナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/84

第52話 似て非なるもの

 リーヴェルトから北へ二日の街道を進んだ先に、小さな交易都市ルツェがある。


 そこでも、似たような停滞が起きていた。


 港湾使用料の改定。

 税率の見直し。

 周辺村落との分配比率。


 論点は明確。

 対立も明確。


 だが、決まらない。


---


「……整理してみます」


 アルノーは、会議の席でそう言った。


 今回は、リリアーナはいない。

 彼は一人だ。


 議題を書き出す。

 利害関係者を分ける。

 短期と長期を分離する。


 分類は、滑らかだった。


 参加者は、頷く。


「分かりやすい」

「争点はそこか」


 会議が、前に進む。


---


 第一案は却下。

 第二案は修正。

 第三案が現実的。


 議論は、以前より早い。


(いける)


 アルノーは、確かな手応えを感じていた。


---


 だが。


「最終的に、誰が承認する」


 その問いが出た瞬間、

 空気が止まる。


 前回の経験が、皆の記憶にある。


「確認者は?」

「失敗時の負担は?」


 アルノーは、息を整える。


「確認は、私が」


 声は安定している。


「承認は代表会議で」

「責任は会議全体に」


 理屈は通る。


 誰も反対しない。


---


 だが、違和感が残る。


 決断は、出た。


 だが、誰も“立っていない”。


 位置は、書類上では明確だ。


 だが、覚悟が見えない。


---


 会議後。


 アルノーは、胸の奥の重さを感じていた。


(形式は整っている)


 だが、あの時のような、

 空気の変化がない。


 エドガーが立ったとき、

 部屋の温度が変わった。


 今回は、それがない。


---


 三日後。


 小さな反発が起きる。


 村落側から、

 「負担が一方的だ」との抗議。


 手続きは正しい。

 議事録も完璧。


 だが、

 納得が足りない。


---


「……私は、何を見落とした」


 アルノーは、議事録を読み返す。


 分類。

 位置。

 承認。


 すべて、ある。


 だが、

 誰が本気で引き受けるのかが、

 曖昧だった。


---


 その夜。


 リーヴェルトに戻ったアルノーは、

 リリアーナに報告する。


「形は整えました」

「ですが、何かが足りません」


 リリアーナは、静かに聞く。


「誰が、立ちましたか」


 その問いに、

 アルノーは答えられない。


---


「書類上の位置と、

 本当の位置は違います」


 リリアーナは、穏やかに言う。


「会議全体に責任を置くとき、

 実際には誰が一歩前に出ていますか」


 アルノーは、思い返す。


 誰も、いない。


---


「似ています」


 彼は、ぽつりと呟く。


「前より、確かに進みました」

「ですが、同じではありません」


「ええ」


 リリアーナは頷く。


「似て非なるものです」


---


 アルノーは、ようやく理解する。


 整理はできる。

 位置も決められる。


 だが、

 **覚悟を伴わない位置は、紙の上だけだ**。


---


 夜の風が、静かに吹く。


 第三部は、

 模倣から、差異へ。


 アルノーは、

 自分がまだ“外側”にいることを、

 はっきりと自覚した。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ