第46話 広がる影
最初は、噂だった。
――整理役のやり方を真似た者がいる。
――外部から来て、会議をまとめたらしい。
――だが、上手くはいかなかった。
どこにでもある失敗談だ。
だから、大きくは扱われなかった。
---
第二王子カイエルの執務室。
「……増えているな」
机の上の報告書に、共通点があった。
・外部の人物
・会議の整理
・決断を促す言葉
・そして、混乱
「“調整役”を名乗る者が、
各地で出始めています」
側近の声は、慎重だった。
「リリアーナの名は?」
「出していません」
「ですが……やり方だけが、出回っています」
カイエルは、小さく息を吐いた。
「真似されたか」
「表面だけ、です」
---
同じ頃。
地方都市の会議場では、
一人の男が声を張り上げていた。
「選択肢は三つある!」
「だが、時間がない!」
言い切り。
断定。
焦燥を煽る口調。
人々は、黙り込む。
「……誰が、決める?」
その問いに、
男は答えられなかった。
沈黙が、空気を重くする。
---
「あなたは、決めないと言ったではないか」
代表の一人が、低く言う。
「整理するだけだと」
「……そうだ」
男は、視線を逸らす。
だが、
線の引き方が違っていた。
責任の所在を示していない。
代償の大きさも、示していない。
ただ、
急がせただけだ。
---
結果。
決断は、なされた。
だが、
誰も引き受けていない。
「……話が違う」
不満が噴き出す。
混乱は、
以前よりも早く、深く広がった。
---
宿の一室。
リリアーナは、
一連の報告に目を通していた。
「……始まりましたね」
真似る者が出る。
それ自体は、悪いことではない。
だが、
役割は技術ではない。
姿勢だ。
---
「線を引くことと、
責任を見せることは、
同じではない」
彼女は、静かに呟く。
決断を早めるだけなら、
誰にでもできる。
だが、
**逃げられない形にする**のは、
覚悟が要る。
---
夜。
リリアーナのもとに、
一通の手紙が届く。
差出人は、地方都市の代表。
文面は、短く、切迫していた。
――整理したはずなのに、悪化した。
――誰が間違えたのか分からない。
――助けてほしい。
彼女は、
しばらくその文字を見つめる。
これは、
正式な依頼ではない。
だが、
放置すれば、壊れる。
---
「……私が行けば、
また“唯一”になる」
それは、
第三部の最初の壁だった。
真似され、
歪められ、
失敗した役割。
それを、
誰が正すのか。
「……今回は」
彼女は、
静かに立ち上がる。
「“教える”ために、行きます」
救うためではない。
決めるためでもない。
**間違えた理由を、
見せるために**。
調整役の影は、
もう一つの形で、
世界に広がり始めていた。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をお願いします。
応援が励みになります!
これからもどうぞよろしくお願いします!




