表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された悪役令嬢ですが、仕事を奪った王宮が先に崩れました  作者: 水城ルナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/85

第42話 詰まる世界

 最初に異変が出たのは、小さな自治領だった。


 港湾の使用期限。

 旧契約の更新。

 新たな管理主体の選定。


 どれも、急ぐほどではない。

 だが、放置できるほど軽くもない。


「……次の会議で」


 そう言って、三度目の延期が決まる。


 誰も反対しない。

 誰も声を荒げない。


 だから、進まない。


---


 次に、商会同盟。


 内部規約の改訂案が、

 半年以上、棚上げされていた。


「決めるには、情報が足りない」


「だが、集める責任者がいない」


「誰かがやるべきだが……」


 会議は穏やかに終わる。

 結論は、出ない。


 被害は、まだ出ていない。

 だから、誰も焦らない。


---


 都市連盟にも、影が落ち始めていた。


 大きな混乱はない。

 だが、小さな滞りが増えている。


「判断が、遅くなっている」


 ローデリクは、報告書を閉じた。


 以前のような詰まりではない。

 だが、確実に――重い。


「決められなくなっている、わけではない」

「だが、“決め切れない”」


 側近は、言葉を選ぶ。


「……彼女がいた頃より、です」


 名は出さない。

 それでも、意味は共有されている。


---


 一方、大陸評議会。


 セオドール・グランツは、

 各地の報告を一覧していた。


「想定内だ」


 小さな遅延。

 小さな不満。

 小さな停滞。


 致命的ではない。

 だからこそ、放置できる。


「世界は、問題を抱えながら回る」

「完璧に回す必要はない」


 それが、彼の統治理論だ。


---


 だが。


「……件数が、増えています」


 部下の報告に、

 セオドールは視線を上げた。


「どれも、単独では軽微です」

「しかし、同時多発的に起きています」


 セオドールは、黙って考える。


 彼女がいた時。

 問題は、表に出ていた。


 今は違う。

 **中で、溜まっている**。


「……人は、耐えるな」


 ぽつりと呟く。


 耐えられるうちは、

 声を上げない。


 だが、限界は突然来る。


---


 宿の一室。


 リリアーナのもとにも、

 断片的な情報が届いていた。


 正式な依頼ではない。

 相談でもない。


 ただの噂。

 雑談。

 愚痴。


「……詰まり始めている」


 彼女は、そう理解する。


 封殺は、成功している。

 自分は呼ばれていない。


 だが、

 判断の空白は、

 世界に残ったままだ。


---


 夜。


 遠くの街で、

 小さな暴動が起きた。


 原因は単純だ。

 決定が、遅れた。


 それだけ。


 だが、

 積み重なった遅れは、

 怒りに変わる。


---


 セオドールは、報告を受けていた。


「規模は?」


「小規模です」

「鎮圧可能です」


「なら、問題ない」


 即断。


 それが、彼のやり方だ。


 だが、

 一瞬だけ、

 彼の脳裏をよぎる。


 ――もし、整理されていれば。


 すぐに、その思考を切り捨てる。


「……必要ない」


 そう言い聞かせるように。


---


 同じ夜。


 リリアーナは、窓の外を見ていた。


 遠くに、

 不穏な灯りが見える。


 小さな火だ。

 だが、確かに燃えている。


「……来たか」


 それは、期待ではない。

 予測だ。


 判断を先送りにした世界は、

 必ず、音を立てる。


 呼ばれない時間は、

 もう、終わりに近い。


 次に来るのは、

 “例外”。


 世界が、

 自分で封じたはずの存在を、

 再び必要とする瞬間だった。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ