表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された悪役令嬢ですが、仕事を奪った王宮が先に崩れました  作者: 水城ルナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/85

第38話 噂の変質

 噂は、形を変えて広がっていった。


 最初は、便利な話だった。


 ――話が進む。

 ――判断が早い。

 ――整理してくれる。


 それだけのこと。


 だが、都市連盟の一件を境に、

 別の言葉が混じり始める。


 ――都市が一つ、切り捨てられた。

 ――彼女が線を引いたからだ。

 ――彼女が来ると、誰かが損をする。


 事実と解釈が、

 曖昧に溶け合っていく。


---


「……空気が、変わっています」


 ローデリクは、

 側近の報告を聞き、静かに頷いた。


「ええ」

「予想通りです」


 彼は、驚かなかった。


 決断できる組織は、

 必ず“怖い存在”になる。


 それは、

 外から見ればなおさらだ。


---


「彼女にとって、

 不利では?」


 側近は、率直に言った。


「でしょうね」


 ローデリクは、否定しない。


「だが、止められない」

「止めれば、

 我々が元に戻る」


 その覚悟は、

 もう揺らがない。


---


 一方、別の場所。


 重厚な机の前で、

 一人の男が報告書を読んでいた。


 大陸評議会所属。

 統治理論家、セオドール・グランツ。


「……なるほど」


 口元に、

 わずかな笑みが浮かぶ。


「権力を持たず、

 判断を加速させる存在」


 彼は、紙を指で叩いた。


「最も厄介だ」


 独裁者より危険。

 扇動者よりも扱いづらい。


 責任を負わず、

 だが結果を左右する。


「これは、放置できない」


---


「排除しますか?」


 部下が、機械的に尋ねる。


 セオドールは、首を横に振った。


「いいや」

「排除すれば、殉教者になる」


「では?」


「呼ばれなくすればいい」


 淡々とした結論。


「彼女を必要とする状況を、

 作らせなければいい」


 それは、

 力でねじ伏せるよりも、

 ずっと静かな方法だった。


---


 同じ頃。


 都市連盟では、

 新たな依頼が一件、却下されていた。


「……今回は、

 内部で処理する」


 理由は、明確ではない。


 だが、

 “外部を入れない”という判断が、

 増え始めていた。


---


 リリアーナは、

 宿でその報告を聞いた。


「……そうですか」


 表情は変わらない。


 依頼が減ることは、

 珍しくない。


 だが、

 今回は空気が違う。


 避けられている。


---


 窓の外。

 都市連盟の灯りが、

 遠くに見える。


 かつて、

 ここは詰んでいた。


 今は、回っている。


 それで十分だ。


「……次は、私がいなくても」


 そう呟き、

 彼女は灯りを落とした。


 噂は、

 人を守りも、縛りもする。


 そして、

 役割を終えた存在から、

 静かに遠ざけていく。


 だが――

 世界はまだ、

 彼女を完全に手放す準備が

 できていなかった。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ