第37話 評価が割れる
都市連盟に、奇妙な静けさが広がっていた。
混乱はない。
物流は回っている。
数字も、最悪ではない。
それでも、
どこか落ち着かない。
理由は、はっきりしていた。
――決断が、常に重くなった。
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「……以前より、会議が疲れますね」
誰かが、ぽつりと漏らした。
「ええ」
「発言一つに、責任がついてくる」
それは、愚痴ではない。
実感だった。
以前は、
意見を言うだけでよかった。
決めなくても、
誰かが何とかしてくれた。
今は違う。
**決めた結果が、現実として返ってくる**。
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「だが」
別の代表が、静かに言った。
「止まらなくなった」
誰も、否定しなかった。
連盟は、
楽な組織ではなくなった。
だが、
機能する組織になった。
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その変化を、
歓迎する者もいれば、
恐れる者もいる。
「彼女が来てから、
都市は一つ減った」
「だが、崩れなかった」
「次は、どこが切られるか分からない」
噂は、廊下を巡る。
理屈では理解している。
だが、感情は追いつかない。
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ローデリクは、
その声をすべて聞いていた。
「……評価が、割れています」
側近の報告に、
彼は頷く。
「当然だ」
変化は、
必ず不安を生む。
それを無視すれば、
元に戻る。
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「彼女に、相談すべきでしょうか」
側近は、迷いながら尋ねた。
ローデリクは、
しばらく考えた後、首を横に振る。
「いいや」
「これは、我々の問題だ」
その言葉には、
確かな覚悟があった。
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一方。
都市連盟の外では、
別の評価が生まれていた。
「……噂の調整役、か」
他国の使節が、
報告書に目を通す。
「便利そうだな」
「いや、危険だ」
意見は、分かれる。
決断を早める存在は、
味方になれば心強い。
だが、
敵に回れば、厄介だ。
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宿の一室。
リリアーナは、
静かに茶を飲んでいた。
連盟内部の空気が、
変わり始めていることは、
把握している。
だが、
介入するつもりはない。
「……次の段階」
独り言のように呟く。
組織は、
必ずこの局面を迎える。
決断できるようになった後、
**決断すること自体を、
怖れる段階**。
それを越えられるかどうかは、
彼ら次第だ。
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夜。
都市連盟の議場では、
小さな衝突が起きていた。
「彼女の整理は、
冷たすぎる」
「だが、正確だ」
「正しいだけでは、
人はついてこない」
「それでも、
止まるよりはましだ」
議論は、熱を帯びる。
だが、
決裂はしない。
それが、
以前との決定的な違いだった。
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遠く離れた場所で。
リリアーナは、
窓の外を見ていた。
評価が割れる。
称賛と、恐怖。
それは、
調整役にとって
最も健全な状態だ。
「……必要とされているうちは」
小さく息を吐く。
「まだ、ここにいる理由がある」
だが、
永遠ではない。
そのことを、
彼女自身が
一番よく理解していた。
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