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婚約破棄された悪役令嬢ですが、仕事を奪った王宮が先に崩れました  作者: 水城ルナ


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第30話 呼ばれる場所

 王宮は、以前より静かだった。


 混乱があるわけではない。

 問題が噴き出しているわけでもない。


 ただ、

 決断の音がしなくなった。


「……これで、よろしいでしょうか」


 文官の問いに、誰も即答しない。


 確認。

 持ち帰り。

 前例照会。


 それらが丁寧に積み重なり、

 結論だけが、遠ざかっていく。


 それが、今の王宮だった。


 エミリアは、その空気を感じ取っていた。


 回復の場は、変わらず人で満ちている。

 感謝も、祈りも、以前と同じ。


 だが、

 最近は誰も彼女に「決めてほしい」と言わなくなった。


 それが、少しだけ寂しくもあり、

 同時に――

 ほっとしている自分にも気づいていた。


「……私は、これでいい」


 癒すこと。

 寄り添うこと。


 それだけで十分だ。


 あの日、

 自分の限界を知ったことは、

 間違いではなかったと思える。


 一方、王宮の外。


「……また、こちらですか」


 地方都市の代表は、苦笑しながら言った。


「ええ。

 王宮を通すと、時間がかかるので」


 第二王子カイエルの執務室では、

 そんなやり取りが日常になっていた。


 案件は増えている。

 だが、混乱はない。


 なぜなら――

 線を引く人間がいるから。


「これは、引き受けすぎだ」


 カイエルは、机に並んだ書類を見て言った。


「回らなくなります」


「分かっている」


 視線は、向かいの席へ。


 そこには、リリアーナ・エヴァレットがいた。


 以前よりも、

 少しだけ距離のある席。


 それが、彼女の望んだ位置だった。


「整理します」


 彼女は、淡々と言う。


「この三件は、こちらで処理可能。

 残りは、別の調整役を立てるべきです」


「……育てる気か」


「依存は、長期的に機能しません」


 即答だった。


 カイエルは、小さく笑う。


「相変わらずだな」


 その日の夕方。


 リリアーナのもとに、

 見慣れない封の書簡が届いた。


 王宮のものではない。

 第二王子陣営でもない。


 他国の紋章。


 それも、

 中央ではなく、辺境に近い領。


「……なるほど」


 内容は、簡潔だった。


内部調整が行き詰まっている。

表に立つ必要はない。

ただ、整理してほしい。


 署名は、

 王族でも、貴族でもない。


 ――都市連盟代表。


「噂が、そこまで行ったか」


 名前ではない。

 肩書きでもない。


 “機能する人間がいる”という噂。


 リリアーナは、書簡を机に置いた。


 すぐに返事は書かない。


 引き受けるかどうかも、決めない。


 ただ、

 どこで判断が詰まっているのかを考える。


 それが、彼女のやり方だった。


「……呼ばれる場所が、変わっただけ」


 王宮を去ったわけではない。

 拒絶したわけでもない。


 ただ、

 必要とされる場所が、

 外へ広がっている。


 窓の外、

 空は広く、静かだった。


 ここから先は、

 一つの国の話ではない。


 彼女は、ゆっくりと息を吐く。


 選ばれないことを恐れない者は、

 どこへでも行ける。


 そして、

 判断が必要な場所は――

 必ず、彼女を呼ぶ。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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