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婚約破棄された悪役令嬢ですが、仕事を奪った王宮が先に崩れました  作者: 水城ルナ


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第28話 選ばれなかった未来

 アルベルト・ルーヴェンは、久しぶりに何も予定のない時間を持て余していた。


 会議は減った。

 報告も、最低限だ。


 王宮は、以前より静かになった。

 それは安定ではなく、

 中心であることをやめた静けさだった。


 机の上に、一枚の古い地図が広げられている。


 境界線。

 交易路。

 緩衝地帯。


 かつてなら、

 これらはすべて自分の判断の範囲だった。


 今は違う。


 地図の横には、第二王子陣営から回ってきた報告書。

 完成度は高く、

 修正点を探す方が難しい。


「……見事だな」


 それは、弟の手柄ではない。


 分かっている。


 線を引いている人間がいる。


 ふと、思考が過去へ滑る。


 もし、あの時。


 もし、空気に逆らっていたら。

 もし、彼女を切らなかったら。

 もし、“冷たい役”を引き受けていたら。


 王宮は、今も中心だっただろうか。


 答えは、分からない。


 だが、一つだけ確かなことがある。


 その未来は、

 もう存在しない。


「……選ばれなかったのは」


 アルベルトは、静かに呟く。


「未来の方だな」


 彼女が去ったことで失われたのは、

 人材ではない。


 可能性だ。


 窓の外を見る。


 王都は、今日も平穏だ。

 混乱も、暴動もない。


 だからこそ、

 誰も間違いに気づかない。


 この国は、

 “よく回っている”と思われ続けるだろう。


 ただ、

 最高にはならない。


 それで十分だと、

 かつての自分は思っていた。


「……それを選んだ」


 選んだのは、自分だ。


 誰に強制されたわけでもない。


 責任は、

 逃げ場なく、ここにある。


 机の引き出しを開ける。


 奥にしまわれていた、

 彼女の覚え書き。


 もう見返す必要はない。


 それでも、一度だけ取り出す。


 短い文章。

 要点だけ。


 判断のための、道標。


「……ありがとう」


 誰に届くわけでもない言葉。


 それでいい。


 謝罪は、もう意味を持たない。

 後悔は、

 自分の中だけで完結させるべきものだ。


 彼女は、

 その外側にいる。


 夕刻。


 王宮の廊下を歩く。


 人は、彼に道を譲る。

 敬意は、まだある。


 だが、期待はない。


 それを、

 不思議と受け入れられる自分がいた。


「……終わったな」


 この言葉には、

 悔しさも、怒りもない。


 ただ、

 選ばれなかった未来への送別。


 一方、その頃。


 王宮の外では、

 次の協定が静かに締結されていた。


 名前が刻まれているのは、

 第二王子と――

 エヴァレット公爵家の名。


 そこに、

 第一王子の名はない。


 それが、答えだった。 アルベルト・ルーヴェンは、久しぶりに何も予定のない時間を持て余していた。


 会議は減った。

 報告も、最低限だ。


 王宮は、以前より静かになった。

 それは安定ではなく、

 中心であることをやめた静けさだった。


 机の上に、一枚の古い地図が広げられている。


 境界線。

 交易路。

 緩衝地帯。


 かつてなら、

 これらはすべて自分の判断の範囲だった。


 今は違う。


 地図の横には、第二王子陣営から回ってきた報告書。

 完成度は高く、

 修正点を探す方が難しい。


「……見事だな」


 それは、弟の手柄ではない。


 分かっている。


 線を引いている人間がいる。


 ふと、思考が過去へ滑る。


 もし、あの時。


 もし、空気に逆らっていたら。

 もし、彼女を切らなかったら。

 もし、“冷たい役”を引き受けていたら。


 王宮は、今も中心だっただろうか。


 答えは、分からない。


 だが、一つだけ確かなことがある。


 その未来は、

 もう存在しない。


「……選ばれなかったのは」


 アルベルトは、静かに呟く。


「未来の方だな」


 彼女が去ったことで失われたのは、

 人材ではない。


 可能性だ。


 窓の外を見る。


 王都は、今日も平穏だ。

 混乱も、暴動もない。


 だからこそ、

 誰も間違いに気づかない。


 この国は、

 “よく回っている”と思われ続けるだろう。


 ただ、

 最高にはならない。


 それで十分だと、

 かつての自分は思っていた。


「……それを選んだ」


 選んだのは、自分だ。


 誰に強制されたわけでもない。


 責任は、

 逃げ場なく、ここにある。


 机の引き出しを開ける。


 奥にしまわれていた、

 彼女の覚え書き。


 もう見返す必要はない。


 それでも、一度だけ取り出す。


 短い文章。

 要点だけ。


 判断のための、道標。


「……ありがとう」


 誰に届くわけでもない言葉。


 それでいい。


 謝罪は、もう意味を持たない。

 後悔は、

 自分の中だけで完結させるべきものだ。


 彼女は、

 その外側にいる。


 夕刻。


 王宮の廊下を歩く。


 人は、彼に道を譲る。

 敬意は、まだある。


 だが、期待はない。


 それを、

 不思議と受け入れられる自分がいた。


「……終わったな」


 この言葉には、

 悔しさも、怒りもない。


 ただ、

 選ばれなかった未来への送別。


 一方、その頃。


 王宮の外では、

 次の協定が静かに締結されていた。


 名前が刻まれているのは、

 第二王子と――

 エヴァレット公爵家の名。


 そこに、

 第一王子の名はない。


 それが、答えだった。

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