第24話 並んだ結果
同じ報告が、二つの場所に届けられていた。
一つは、王宮。
もう一つは、第二王子カイエルの執務室。
内容は、同一の案件――
北部交易路の再調整。
違ったのは、
処理にかかった時間だった。
王宮では、三度目の会議が開かれていた。
「前提条件の確認が不足していました」
「責任の所在を、明確にする必要があります」
「聖女様のご意向も伺わねば……」
言葉は正しい。
手順も、間違っていない。
だが、
結論は、まだ出ていない。
「……次回に持ち越しましょう」
その一言で、会議は終わった。
誰も反対しない。
誰も責められない。
それが、今の王宮だった。
一方。
第二王子の執務室では、
すでに結論が出ていた。
「判断は、ここまでで十分です」
リリアーナの声は、淡々としている。
机の上には、整理された三枚の紙。
決定事項
保留事項
危険事項
それだけ。
「決めるのは、俺だな」
カイエルが確認する。
「はい。
ただし、この条件で進めるなら、
次の摩擦は避けられません」
「許容範囲だ」
即答だった。
「なら、進めてください」
それで終わりだ。
時間にして、二十分。
議論はない。
だが、独断でもない。
線が、はっきり引かれている。
数日後。
北部の商会から、返答が届いた。
第二王子殿下の陣営と、
優先的に話を進めたい。
理由は、添えられていない。
だが、誰もが分かっていた。
話が進むからだ。
王宮でも、同じ返答が届く。
「……また、こちらではない」
文官が、静かに報告する。
「理由は?」
「明確には……
ただ、“判断が早い方を選んだ”と」
その場にいた者たちは、
互いに視線を交わす。
否定できる者は、誰もいなかった。
夕方。
アルベルトは、窓辺に立っていた。
遠くに見えるのは、
第二王子の執務棟。
以前なら、
すべてが自分のもとに集まっていた。
今は違う。
並べてみれば、
結果は、あまりにも明白だった。
正しさ。
配慮。
善意。
それらは、確かに必要だ。
だが――
機能しなければ、選ばれない。
「……負けたな」
誰に聞かせるでもなく、そう呟く。
それは、敗北宣言ではない。
事実確認だった。
一方、第二王子の執務室。
リリアーナは、次の書類を整えていた。
勝った実感は、ない。
ただ、
回る場所で、回しているだけだ。
「……これでいい」
誰かを見返すためではない。
証明するためでもない。
必要とされた場所で、
必要な役割を果たす。
それだけ。
だが、その積み重ねが――
世界を、確実に分け始めていた。
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