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夏の一日

作者: えんがわ
掲載日:2025/10/24

 うう。水。

 猛烈な喉の乾きで目を覚ます。蝉しぐれが響く埃っぽい寝室からのそのそ出ると、銀のシンクの蛇口から水をひねり出す。とろとろと最初に出る水は熱を帯びて生温い。手で受けて、少しずつ冷たくなるのを見極めて、コップに水を満たす。

 首まで上げて水を一気に飲み切る。ふはぁ。部屋に戻ると段ボールの上で猫がじくじく寝そべっている。

「お前も、バテタかぁ」

 猫は仕方なさそうに僕の元へ行き、前足を伸ばしちょいちょい催促する。僕はこのネコ、アメリカンショートヘアのアメちゃんに、特別に創られたエサを袋から取り出す。京都の「猫のための研究所」とカナダの「インターナショナルキャットビレッジ」が共同研究し、我が家のネコの嗜好や栄養バランスを考えて特別に考案したフードだ。冬はカリカリを使うが、夏はウェットフード、ちゃおちゅーるのような液状のもの、それを数万倍素材を厳選し豪華にしたものを与える。だがその前に

「アメちゃん、今日は稚内タラバガニ味と大間天然ホンマグロ味どっちがいい?」

 アメちゃんは、そんなのいいから早くくれと催促している。

「それとも新作のホタテとサーモンのフランス風がいい?」

 ほれほれと見せつけていると、がぶり、噛みやがった。

「わーた、わーた」

 僕は諦め顔で

「三分の一ずつ、三種類食べような」

 アメちゃんは朝食を終え、満足げな顔をするとまた段ボールにのしっと乗っかった。

「それにしても暑いな」

 部屋にはエアコンが2台と高級扇風機が1台あるが、猫がいるためそこまで低温に設定できないのだ。温度が低すぎると、猫はこの熱帯夜の中、平気で庭の雑木林に逃げ込んでしまう。

 スマホを取り出しセバスチャンに連絡する。

「よっ、今起きたよ。今日は朝食は要らないや。庭から野菜とってくる。えっ? 健康に悪い。せめておにぎりでも? じゃあ、シソの葉と生めんたいのおにぎり2つ。味噌汁も? うーん、なんか冷静ポタージュがいいな。すっごく冷たいコーンスープ。うん」

 トランクス一枚のまま、玄関の扉を開ける。軽井沢は避暑地と言っても夏は暑い。さんさんの太陽に、季節のあじさいやヒマワリや百合がお出迎えだ。そのまま庭に行く。庭が広い家は良い家だというが、ここまで広いとちょっと嫌になる。畑まで五分かかる。こう暑いと、家のすぐ隣にわがままで建てた僕専用ローソンを使う頻度も多くなる。そんな文句を言いながら、「くだらなぇとつぶやいて」なんて歌いながら、畑まで歩く。畑にはとうもろこし、トマト、ナスが植わっている。珍しいところでは桃。そしてもちろん巨大なスイカも。ジェームス、この畑の庭師だ。彼に一番熟れ頃のスイカを聞いて、でも直感的に一番おいしそうだと自分が思ったそれをもいで、とっとっと家に運ぶ。重いスイカに汗ふきふき運ぶ。超巨大冷蔵庫のスーパークーラーにスイカを入れる。おやつ時には最適の冷たさになっているだろう。

 一仕事終えた僕は、おむすびをほおばる。シソの香りが豊かに香り、お米の美味しさが伝わって、美味しい。生き返る。冷製コーンスープをがぶ飲みし、おかわりを2杯いただく。

「ちょっとプール行ってくる」

 セバスチャンにそう言って、また玄関を出る。今度は電動スクーターに乗って、整備された土道を駆ける。プールの入り口には管理人と、ライフセーバーが10名。僕はトランクスから水泳パンツにその場で着替え、まずは「超高速流れるプール」に向かった。「超高速流れるプール」にはライフセーバー10名の他に誰も居なくて、自由に泳げる。普通の流れるプールだったら、たぶん人同士がぶつかって危険なんだろう水流が流れ、僕をびゅんと飛ばす。普通に泳いでるのにインターハイに出れるほどの速度で泳げるので気持ちいい。爽快だ。十五分ほど泳いで疲れたので、ライフセーバーの方に浮き輪をいただいて、その中でぷかぷかと浮きながら流される。これもまた気持ちいい。

 次に波のプールに行く。僕が好きなサイパンのプライベートビーチのちょっと波が激しい日の波を再現してもらう。このプールには世界五十種類の波を再現する機能がついているのだ。波の来るプールに浮き輪で浮かびながらぷかぷかしたり、波打ち際で波が穏やかに身体を撫でるのをひと通り楽しむ。

 それからウォータースライダーで滑る。僕が楽しく、それで怖くない絶妙な加減を知っているコース設計者が作ったコースだ。彼には今度僕専用の遊園地のジェットコースターの設計も頼んでいる。

 そんなこんなでプールで過ごしてたら、もう3時を過ぎてしまった。水を乾かすことなく、トランクス一丁で、電動スクーターで家へと道を駆ける。風と水で気持ちいい。こういう時、夏だって思う。

 家に帰ると、アメちゃんが玄関先でぐでんと寝ていた。この暑いのに、冷房が効いた部屋が五万とあるのに、ここでわざと寝る。

「セバスチャン、アメのごはん」

 とスマホをポチポチすると、五分も経たずして、セバスチャン、灰色のスーツ姿の白髭の執事はやって来る。

 プールに入って疲れた身体をマッサージしてもらう。彼は足立区で有名な整体師だったのを僕専用のトレーナーとして雇った人だ。他にも同じようなマッサージ師は五人いて切磋琢磨してさまざまなマッサージを研究している。彼は足圧というか足を器用に使って僕をマッサージしている。足できゅっきゅっきゅっと絶妙な加減でマッサージしてくれるのでとても心地いい。最後の〆に他のマッサージ師に足つぼマッサージを受けて、身体のメンテナンス完了。

 しばらく僕専用の映画館で「鬼滅の刃」の最新作を観る。もちろんポップコーン片手で。最先端スクリーンに4DXで。長い映画だったので、途中で観るのを止めて、映画館を出た。また今度続きから観ればいい。

 映画館から家に帰る途中、カナカナカナとヒグラシの鳴き声が聞こえた。少しもの悲しくも急き立てるような夏の終わりを教える声。

「そんなに終わりも悪くないよ」

 なんて言って家に帰る。

 家に帰ったら良く冷えたスイカを冷房がきんきんに効いた部屋で食べる。スイカはほどよく甘く、でも人工的な甘ったるさがない野性味のある味で美味しい。丸ごと大玉1個食べてしまった。

 ふぅ。

 今日は「和食」にしようかな。「洋食」にしようかな。

 晩ご飯には少し早いがいただくことにする。もちろんウチにはシェフが20名いて、それぞれ得意のジャンルのゴハンを作ってくれる。本格懐石から、家庭のごはんに至るまで。

「ラーメンが良いな」

 ラーメンをいただく。冷やしラーメンだった。あっさりしたホタテだしに、だしを凍らせたかき氷状の氷がかかっていて、ひんやり冷たくいただいた。

 セバスチャンが差し出す、栄養サプリをしぶしぶいただく。セバスチャンは栄養管理士の資格も取っているのだ。

 僕はごろ寝をしながら、ゲームミュージック「クロノトリガー」のオーケストラを聴く。もちろんオーケストラも本物だ。50人構成の新進気鋭のオーケストラ団がヴィオラやハープを使って、音楽を奏でる。聞きながらうとうと眠りごこち。夢気分。

 それから自室に帰ってネットサーフィンしてテレビゲームして眠る。

 僕は今日、こんな一日を過ごしました。

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