表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

秘密の友情

作者: こうじ

 今日は貴族学院の卒業式、私ミリア・モンスールは旧校舎の中庭に来ていた。


「ここに来るのも最後かぁ……」


 しがない男爵令嬢である私は所謂友人とかもいなくこの3年間この中庭で多くの時間を過ごしていた。


 お弁当を食べたり薬草を育てて畑を作ったり、レポート作りに勤しんだり……。


 因みにちゃんと教師には許可を得ている。


 旧校舎は立ち入る人は少ない、まぁ魔法の訓練場に行く時に廊下を通らなければならないぐらい。


「あ、やっぱりいたのね」


 声をかけられ振り向くとそこには知った顔がいた。


「はい、今日で見納めなので」


「そうよね、私達が卒業した後旧校舎は取り壊しになるらしいからこの中庭も無くなってしまうのよね」


「寂しいですよね、この中庭が無かったら私とリアーヌ様はこうして出会っていなかったんですから」


「そうよね」


 彼女リアーヌ・クライス様は公爵家のご令嬢である。


 本来ならば私みたいな男爵令嬢が気安く声をかけられない相手だ。


 きっかけはこの中庭、私がいつも通り1人で弁当を食べているとリアーヌ様が声をかけてくれた。


 まさか公爵令嬢に声をかけられるとは思っていなかった私は凄く緊張したがリアーヌ様は薬草に興味があるみたいで色々質問してきた。


 私の実家は山奥で薬草栽培をしている。


 なので薬草に関してはある程度の知識はあるので答えていた。


 それが1日だけではなくその翌日もリアーヌ様がおりそんな日々が続くと自然に緊張も解けて私とリアーヌ様は仲良くなった。


 因みにリアーヌ様が旧校舎を通ったのは訓練場に行く為だった。


 王太子様の婚約者でもあったリアーヌ様は王妃教育やら周囲の嫉妬ややっかみにストレスを抱えていたらしい。


 魔道士としても優秀なリアーヌ様はそのストレスを解消する為に訓練場に行く途中で私と出会った。


『炎魔法をぶっ放そうと思っていたんだけど感情の赴くままに放つと旧校舎ごと燃え尽くす可能性があったからあの時ミリアと会って薬草茶を飲んで無かったら大変な事になっていたわ』とは後から聞いた。


 相当ストレス溜まっていたんだなぁ……。


「そういえば卒業パーティーは出席しなくて大丈夫だったんですか?」


 卒業式の後、卒業記念パーティーが行われる。


 但し参加するのは上位貴族ばかりなので私みたいな地方の男爵令嬢はお呼びではない。


「婚約破棄されるのを知っていてわざわざその場に行くほど馬鹿じゃないわ。 私との婚約は王命だからきっと王太子様は国王様から厳しいお叱りを受けるわね、勝手に恥をかけばいいのよ」


「あの噂、やっぱり本当だったんですか。 ていうか王太子様も見る目が無いですね。 リアーヌ様を放置して明らかに問題がある令嬢の誘惑に負けてしまうんですから」


「王太子様だけでは無いわ。 側近もやられているから多分跡継ぎにはならないわね。 各家も勘当の話が出ているらしいから。 当然よね、怪しい人物から王太子を護らなきゃいけないのに一緒になってイチャイチャしてるんだから」


 ある意味お先真っ暗だな、自業自得ではあるけど。


「それじゃあリアーヌ様の婚約の話も無かった事になりますよね?」


「えぇ、既にお父様と国王様の間で話は済んでいるわ」


「じゃあ別の方と婚約する事になるんですか?」


「いいえ、お父様からは『長い間拘束されていたのだから好きなように生きなさい』と言われてね、せっかくだし薬師の道を極めてみようかな、と思っているの。 それでお願いがあるんだけど」


「お願い?」


「ミリアの実家に私を連れて行ってほしいの」


「はいぃっ!?」 


「薬師になるなら薬草の事をもっと知らないとダメでしょ? だったら現地で勉強した方が身になると思うのよ」


 確かにその通りだ、知識があったとしても行動しないと意味がない。


「わかりました、一緒に行きましょう」


「これからもよろしくね、ミリア」


「こちらこそお願いします」


 貴族学院では友達が出来なかったけど唯一無二の親友と出会う事が出来ました。  


  

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ