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第13話 宴の後

「おいアズト……テメェやってくれただろ」


 闇鍋を完食した後、顔色が悪すぎる死にかけのレクスが俺に掴みかかって来た。俺が押し付けたゲテモノ達は、流石の彼にも効いたみたいだ。


「さぁ? 何の事だか。でもお前だって、クレイジーキャットでイカサマしようとしてたよな? 俺は能力の影響で夜目が効くんだ。バッチリ見えてたぜ」


「ぐぐぐ……アズト貴様! 覚えてろ、次こそはお前を屈服させて俺の奴隷にしてやるからな!」


「はいはい。俺は奴隷なんかにならないからお好きにどうぞ」


「軽く流してんじゃねぇ!」


「うん、まぁ闇鍋のお陰で仲が深まったみたいで良かったぜ。これからはウチの羽牟にもしっかり働いてもらうから、よろしくな」


 リンドウは俺とレクスを見て、苦笑しながら言った。ヒスイは何も言わずにぺこりと頭を下げた。


「それじゃ俺達はここらで失礼するぜ。次の事件は絶対に俺達が先に解決するからな。これ以上保証金の為に上に頭下げるのはゴメンだからな!」


 そう言って、リンドウとヒスイは帰っていった。

 時刻は夜の八時。二人が帰って静かになるかと思ったら、全然そんな事は無かった。


「おいお前ら! ナマコとドリアンとコオロギを入れたのはどこのどいつだ⁉ あとエビリス、私の能力がイカサマ向きじゃないのを良いことに散々ゲテモノを押し付けやがって……!」


「そうか……? 一応全員に均等に押し付けたつもりだったんだが。ちなみにナマコを入れたのはワシだ」


「まぁまぁヴェルト、そんなに怒る事ないじゃない。美味しいお肉も入ってたんだし。多分あのお肉、例の新人警官……ハムちゃんが入れてくれたのよね? あの娘、良い子そうで気に入ったわ。ちなみにドリアンを入れたのは私よ」


「エビリスにクリエ……お前らがゲテモノ入れたせいで、俺がアズトから山ほど押し付けられたんだぞ……。元をたどればお前らも悪い! ちなみに俺が入れたのはコオロギだ」


「お前も十分ゲテモノじゃねーか。ちなみに俺はピザだ」


「全く……食べられるものを入れるという闇鍋の基本ルールを知らない奴しかいないのか? まぁ確かに、ドリアンもナマコも食べ物だし、コオロギも偶に食べてるし……だけど絶対に鍋に入れる物ではないだろう!? ゴーヤを入れた私を見習うんだよ!」


「お前も大概だよヴェルト」


 ゲテモノまみれイカサマまみれの闇鍋パーティーの話題は絶えそうになかった。正直言って地獄絵図だったが、魔王荘の仲はまぁまぁ深まったのかもしれない……。


 ~~~


 それから次の土曜日までは、大きな事件もなく平和に時が過ぎていった。

 別に大きな事件が無くても、魔王荘は騒がしかった。昨日はレクスがコンビニ前の不良に喧嘩売って警察沙汰になってたし。転生しても騒ぎから逃れられないのは、魔王の宿命なのかもしれない。

 

「アズト、少し話があるんだけど、良いかい?」


 ヴェルトに声をかけられたのは、土曜日の夜の事だった。


「どうしたんだヴェルト。新しい任務か?」


「いや、任務って訳じゃないんだ。ただ、君の生活用品がまだ揃っていないと思ってね。明日は私も仕事が休みだから、どこかに買いに行こうと思うんだが、大丈夫だよね?」


「それなら大丈夫だ。別にここにいた所で何もないからな」


 確かにヴェルトの言う通りだ。この世界に転生して五日が経つが、必要最低限の物しか用意してなかった。


 特に用意したいのは服だ。今はレクスの物凄くダサいTシャツ(「頂点」とプリントされた白いTシャツ)を借りているのだが、流石にダサすぎて着ていられない。早急に自分の服を用意しなくては。


「ヴェルト、買い物行くのか? なら俺も連れていけ!」


「レクスは駄目だ。絶対に無駄遣いするかトラブルを起こすからな。クリエ、君は一緒に来てくれないか? アズトに似合いそうな服を選んでやってほしいんだ」


「フフ、オーケーよ。久々にコーディネーター・クリエの腕が鳴るわね」

 

「エビリスはレクスと留守番を頼む。明日はこんな感じで動くから、皆把握しておいてくれ」


「あぁ、了解した」


 ショッピング、と言った所か。レクスじゃないけど、確かに少し楽しみかもな。

 俺はまだこの世界に来たばかりだから、あまりこの世界の事を知らない。今度のショッピングはこの世界の知識を深める良い機会になるかもな。


 ひとまず明日買うべき物をリストアップして、俺は眠りについた。それにしても、相変わらず狭い部屋だ。ヴェルトが毎日残業するほど忙しいのは分かるが、早くこの物置部屋を整理してほしいものだ。


 この時の俺はまだ知らなかった。普通のショッピングがまさか、あんな死闘に発展するなんて……。

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