当たり役 声劇台本
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登場人物表
みゆき♀:
ひかる♂:
みゆき「ひかる君。久しぶりね」
ひかる「みゆきさん。お久しぶりです」
みゆき「三回忌ね。もうそんなに経つのね」
ひかる「……人、多いですね」
みゆき「めちゃくちゃ慕われてたからね。忠春さん。本当に、三回忌と思えないくらい、皆本気で悲しんでる」
ひかる「そう、ですね」
みゆき「ねえ、ひかる君!」
ひかる「なんですか?」
みゆき「2人で、抜け出さない?」
ひかる「はい?」
みゆき「喫煙所がいい?喫煙所がいい?そーれーとーも、喫煙所?」
ひかる「俺、もう禁煙してるんですけど」
みゆき「えー!?」
ひかる「みゆきさんもいい加減禁煙したらどうですか?女優人生縮みますよ」
みゆき「ひかる君は真面目ねー。大丈夫よ。スパスパ吸ってる俳優なんていくらでも見てきたでしょ」
ひかる「時代が違いますんで」
みゆき「そーねー。でも、ちょっと外出てよ。話したいことがあってね」
ひかる「分かりましたよ」
間
みゆき「ありがとう。付き合ってくれて」
ひかる「それで、話したい事って?」
みゆき「まだ気にしてるのかなって思っててね」
ひかる「……何がですか?」
みゆき「検討はついてるんでしょ?」
ひかる「……忠春さんに俺が楯突いた直後に、忠春さんが死んだ事ですか?」
みゆき「そう」
ひかる「それと、みゆきさんが何の関係が?」
みゆき「私も気にしてたのよ。あの時、何も出来なかったから」
ひかる「別に、みゆきさんが気にする事はないですよ。それに、忠春さんが死んだのだって酒とタバコのやりすぎってだけですし」
みゆき「見事な悪役俳優だったよね。忠春さん。酒とタバコだって、悪役の声を出すための役作りの1つだった」
ひかる「本当に、役者って仕事に対して、真面目な人でしたよ」
みゆき「最後の舞台、忠春さんの主役観たかったなー」
ひかる「みゆきさんも結構いい役でしたよね。本当に、残念です」
みゆき「結構現場ピリピリしてたよねー。その時も忠春さんが皆を休憩中は笑わせてくれてさ」
ひかる「なのに、俺は……」
みゆき「「悪役しか出来ないくせに、俺の演技に口出さないでくれ」」
ひかる「よく覚えてますね」
みゆき「あん時は凍りついたからねー。でも、忠春さんは笑ってた」
ひかる「本当に、俺は」
みゆき「実はさ、忠春さん、最初は何でもやってたんだよね」
ひかる「え?」
みゆき「私がこの世界入ってすぐくらいの頃はさ、まだ忠春さん売れてなくてさ、その頃はどんな役もこなしてたし、実際上手かったんだよね」
ひかる「そんな、じゃあなんで今は」
みゆき「ほぼ悪役専門俳優かって?」
ひかる「はい」
みゆき「ある時、たまたま演じた悪役をさ、当時の人気脚本家が観たわけよ。その時、脚本家はおかしくなったのよね」
ひかる「それは、どういう」
みゆき「魅入られちゃったのよ。忠春さんの悪役に。それからその人気脚本家は忠春さんが悪役をやるための脚本を作り続けた。人気すぎて、誰も逆らえなかった。その脚本家が亡くなるまで」
ひかる「そんな。でも亡くなったなら新しい役が」
みゆき「遅かったのよ。その頃にはもう悪役のイメージが着きすぎた」
ひかる「そんな、俺は、俺はじゃあ」
みゆき「でもね、忠春さん言ってたのよ」
ひかる「なんて?」
みゆき「俺は、皆の夢を守れたんだって」
ひかる「どういう、意味ですか?」
みゆき「ひかる君みたいな若い子に、悪役しか出来ないと思われるくらい、全うしたんだって」
ひかる「なんですかそれ、本当に、真面目な人だな」
みゆき「そうね、皆が恐れる悪役である事を守って、あの世にいった」
ひかる「……みゆきさん、俺もね、そうなるかもだったんですよ」
みゆき「へ?」
ひかる「俺、結構ヒーローの役が多いじゃないですか?」
みゆき「そうね」
ひかる「忠春さんが亡くなる直前、その事件の前にとある脚本家に気にいられて、大きめの舞台に出る予定だったんですよ」
みゆき「あら、そんな事が」
ひかる「まあ結局、大人の都合でおじゃんになったんですけど、ただ、その時の脚本家が怖くて」
みゆき「なになに?」
ひかる「「あなたのヒーローに惚れました。絶対に輝くヒーローとして書いてみます」って」
みゆき「忠春さんと全く同じじゃない」
ひかる「俺には、ヒーローだけやる人生なんて、恐ろしくてできません」
みゆき「……忠春さんの主役、観たかったわね」
ひかる「そうですね」
みゆき「役者って、求められる事を全うするのが仕事じゃない?」
ひかる「ですね」
みゆき「私たち、最期までできるかな」
ひかる「演じ切るしか、ないですよね」
みゆき「そうね」