表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/303

青の街 6

彬とセバスチャンは同室で寝ることになる。


話の流れから、アテナエルの名前を聞いた途端、以前、アナスタシアから聞いた話をふと思い出し、思い切って質問をする。

「アテナエルは正しいことをしているのでしょうか。僕らは、良いことをしていると思って戦っているのですが。」

彬は彼の言葉に耳を傾け、考え込むように言った。

「君は、何を持って正しいこと、良いことと定義しているのかな。」


「それは……」セバスチャンは言葉を詰まらせ、一瞬思考を巡らせた。

彬は続けた。

「僕は、アテナエルは本当は何がしたいのか、正確には理解していない。

ただ、大臣の野望を阻止すると聞いており、そこは利害が一致しているので協力しているが、恐らくその目的は変わりつつある。」

「と言いますと?」セバスチャンは興味を引かれたように尋ねた。


「鎧の将軍だったジャックが、キーパーソンは大臣ではなく仮面の男だと言っていた。

ジャックと同様に将軍の一人だそうだ。その将軍の動向によっては、僕の立ち位置は変わりえる。」と彬は冷静に説明した。

セバスチャンは黙り込んで考え込み、何も言えなくなった。

彬は話を続ける。

「それ以上のことは、今のところ考えても仕方がない。

ただ、真唯佳はアテナエルの探し物の短剣を見つける決断をした。それがないと敵に対抗できないと。

一時的には、それをサポートしてもいいと思っている。」

「一時的……」セバスチャンはその言葉に思いを巡らせた。


「アテナエルは、大臣の企みを阻止した後、そのアイテムを使って何かするかもしれない。

それは国のためにはならない可能性はある。」彬は真剣な表情で話す。

「だが、僕らは誰もあの生命体を止められない。なぜなら、アレは強いから。

いくら理不尽でも、弱いものは強いものに従うしかない」

彬は、その言葉に重みを感じさせた。


セバスチャンは、彬の言葉の奥深さを理解しようと努めながら、心の中で葛藤していた。

正義とは何か、そして彼らの選択がどのような結果をもたらすのか。

彼は口を開こうとしたが、言葉が見つからず、ただ黙って国王の言葉を受け止めるしかなかった。


「真唯佳は、いつでも運命を受け入れている。出生時に受けた予言やその強大すぎる能力のせいで父親から遠ざけられた事や、アテナエルとの同化の事だって……」

セバスチャンはその言葉に耳を傾けながら、あえて黙っていた。彬の話の続きを待つように、静かに横たわる。

「だけど、僕はいつだって運命に抗っている。人間界での最後の日、蒼と戦った後のことだ。家臣だった僕は、本来のマディラ姫に「自分にはもう関わるな」って言われたんだけどね。彼女の願い……いや、あれは命令だったかも。」

彼はふと笑みを浮かべたが、その笑顔はどこか切なげだった。

「それに逆らって、今もこうして一緒にいる。要らぬ不幸を背負い込んだかもしれないけど、それ以上に得るものもあったから、後悔はしていない。」

セバスチャンは思わず口を開きかけたが、彼の言葉の重みを感じ取り、また沈黙する。

彬の隣で、布団を握りしめる手が微かに揺れていた。

「明日は街を探索するから忙しくなるかもね。そろそろ寝よう」と彬は言い、布団に潜り込む。

セバスチャンもそれに続き、心の中で揺れる思いを抱えたまま、国の未来について考えながら、静かな夜へと身を委ねるのだった。



――――――――――



蒼の寝室のベッドはクイーンサイズで、ゆったりとしたスペースが確保されていた。

蒼と真唯佳は、肩を並べて横になっていたが、一つの布団に包まれながらも、互いに触れ合うことなく、まるで修学旅行の女子部屋のような和やかな雰囲気の中で語らっていた。

壁にかかる柔らかな灯りが、ふんわりとした明るさをもたらし、部屋は穏やかな空気に満ちていた。

蒼は、少しもじもじしながら口を開いた。


「当時のこと、覚えている?俺と彬が対立したこととか」と蒼が声をかけると、真唯佳は少し考え込みながら答えた。「なんとなくは……。さっき一瞬思い出したのはその時の風景ね。」

真唯佳の言葉に、蒼は当時の記憶が彼女の言葉に引き出されたように感じた。

「当時のこと、ずっと謝りたかったんだ。結果的に騙すことになったけど、でも仲良くなりたかったことや告白した気持ちは嘘じゃない。」

彼の目には真剣な思いが宿り、彼女に対する誠実さがにじみ出ていた。


「有罪になるところだったけど、未成年だったこともあり、彬が裏で擁護してくれたらしくて、無罪になったんだ。

釈放後すぐに真唯佳ちゃんにも謝りたかったけど、王宮の遠い存在になったので簡単に面会できないし。

色々ありすぎて心の整理がついていないだろうから、今はやめておけって彬に言われて。」

彼は言葉を続け、心の奥に抱えていた思いを少しずつ解放していった。


「当時ショックを受けたことは否定しないけど、自分が若くて世間知らずだった面もあるし。

今は気にしていないから、もう自分を責めないで。」

真唯佳の言葉には、成熟した理解と許しが込められていた。


「それで……その……、あいつと一緒にいれて幸せ?」

蒼の口から出たこの質問は、彼がどうしても聞きたいことであった。

もしもクーデターのことがなければ、蒼と真唯佳が出逢い直し、結ばれることができたのか、そして、彼女を幸せにできたのかは、もはやわからない。

しかし実際は、蒼は、彬が真唯佳にプロポーズするのを後押ししたが、それは良かったのかと、彼の心は複雑に揺れ動いていた。


真唯佳は一瞬、考え込んだ。

「難しい質問ね。人を好きになるっていう感覚がいまいちわからなかったから、プロポーズされても、最初は断ったのだけど。気づいたら、なんかこんなに長く一緒にいる。」

真唯佳は、これまでのことをあれこれと思い返しながら、慎重に返事をする。

「幸せかぁ、自分の中でどういうのが幸せなのか、ちょっとよくわからないわ。」

蒼は驚いた様子で目を大きくして、顔を彼女の方に向けた。

「え、プロポーズ最初断ったの?相当の決意で言ったと思うぜ、あいつ。」


真唯佳は軽く肩をすくめながら笑った。

「いやー、だってね……言われるまで、異性として見てなかったし。あまり自分の気持ちに嘘はつきたくなかったから。」

真唯佳の声は軽く笑っているようだったが、その奥にはほんの少しの照れが含まれていた。

蒼は黙って彼女の言葉を聞いていた。

真唯佳はふっと小さく息を吐き、続けた。

「でもね、こんな私の側に飽きもせずにいてくれてることには、感謝してるわ。ありがたいと思う。」

その言葉に、蒼は少しだけ笑みを浮かべた。「そっか。でもさ、断ったのにその後OKしたってことは、何か心が動いたんだろ?」

真唯佳は軽く体を横に向け、蒼を覗き込むように微笑み「そうかもしれないけど……それより、蒼君とマリナさんの話も聞かせてよ。私なんかのつまらない話はこれくらいにして。」


こうして、彼らの会話は続き、夜は静かに更けていった。

お互いの心の内にある未練や思い出、そして新たな関係の在り方について、語り合う時間はとても特別なものだった。

夜の帳が彼らを包み込む中、少しずつ理解し合う二人の絆は、ゆっくりと深まっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ