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青の街 4

蒼の屋敷 リビングダイニング



日がすっかり沈んだ頃、一行は大広間からリビングダイニングへと移動し、夕食の席へと落ち着いた。

広々としたリビングダイニングには、柔らかなオレンジ色の照明が部屋を包み込み、壁際には現代的なデザインのキッチン家電が整然と並んでいた。

整ったカウンターから漂う香ばしい香りに、自然と食欲がそそられる。


彬は、テレビに映し出されたニュースに目を向け、じっと一人静かに見入っていた。

彼は普段からニュースに気を配っており、特に不穏な事件には目を光らせる習慣があった。

画面には「未解決の通り魔事件」という見出しが映し出され、被害者が生気を失い、出血は一切見られないという奇妙な状況が語られていた。

犯人もまだ捕まらず、数か月前から続くこの事件に、新たな犠牲者が出たことが伝えられると、彼の眉がわずかに寄る。


一方セバスチャンは、テレビの内容よりも、そもそも大きな画面に何が写っているのかとその様子をちらりと見ながらも、目の前に並んだ不思議な家電や内装に目を奪われていた。

冷蔵庫、電子レンジ、そして料理を温めるコンロなど、どれも彼にとっては初めて見るものばかりだ。

まさに異世界に迷い込んだと言わんばかりで、キッチンを興味深げに見回しては、その光景に圧倒されていた。

「これがこの世界の技術なんですね……」と小さく呟きながら、不思議そうにリビングの天井や壁に取り付けられた照明にまで視線を向けていた。


そんなセバスチャンの様子を見て、蒼は微笑みながら軽く声をかけた。

「そんなにびっくりするか?まぁ、ニーベルにも、こんなのはないもんな」

「はい、全てが初めてで……何だか不思議です」とセバスチャンが答えると、蒼はくすっと笑ってうなずいた。

その間、マリナは真唯佳と料理の話で楽しげに盛り上がっていた。

テーブルに並べられた料理について、マリナは「これは私の地元の名物なんですよ」と真唯佳に説明しつつ、料理の盛り付けや味付けについて熱心に語り合っていた。

時折真唯佳も「それは美味しそうね!」と相槌を打ち、二人で料理の話に花を咲かせていた。


夕食を終えた彬は、リビングの片隅で蒼に借りたノートパソコンを開き、新聞やニュース番組と並行してネット上で情報収集を始めた。

長いこと人間界から離れていたが、以前住んでいた頃から、彼は必要に応じてハッキングをしていたため、パソコン操作はお手の物で、画面を注視しながら静かにキーボードを叩く姿は、どこか昔と変わらない雰囲気だ。

一方真唯佳は、彬の情報収集の邪魔をしないように様子を見守りつつ、「私たちが離れている間に、世の中も大分変わっちゃった?」と問いかける。

彼女の声に彬が少し顔を上げ、「ああ、技術も社会も進化している。それに伴う問題も増えたが、便利さも段違いだ」と穏やかに答えた。

その言葉を受けて真唯佳は、しみじみとした表情を浮かべながら、自分たちの知っていた世界がすっかり別物に変わっている様を思い描いていた。


真唯佳が興味深そうに彬の作業を眺めていると、そこへ蒼がリビングに戻ってきて、みんなに順番に入浴を済ませるよう声をかけた。

「もう遅いから、順番に風呂に入ってくれよ。特に……」と言いながら、視線をセバスチャンに向ける。「お前、一人で風呂に入れるか?」

彼は戸惑いながらも「はい、大丈夫です」と答え、まだ不慣れなこの場所で、入浴すらも一つの冒険のように感じているのだろうといった様子だったので、蒼は浴室の設備を口頭で一通りの説明をする。

そして、蒼は皆の寝室の割り当てについて話し始めた。


「今晩の寝室だけど、屋敷には部屋はたくさんあるけど、実際にベッドを入れてあるのは俺たちが寝る部屋と客間のうちの一つだけ。

最初にパトリック様から連絡をもらった時、二人くると思ってたけど、途中から三人と分かって、急いで追加のベッドを注文した。

でも、届くのは明日なんだ。」

その言葉に、一同が少し驚き、特に真唯佳が気まずそうに笑みを浮かべた。

「つまり、今晩はベッドが一つ足りない……ということね。」

蒼は苦笑いしながら頷く。「まぁ、どうにかするしかないな。誰かには少し我慢してもらうことになるかもな」と、蒼が部屋割りについて説明を続ける。

「で、マリナは地下の水槽で眠るんだ。今日に限らず、数日に一度は海水に浸からないといけないし。」

と言いながら、蒼はマリナの方に目をやる。マリナは頷きつつ、もはや当たり前のことのように微笑んでいる。


蒼はさらに言葉を続け、「客間にはシングルベッドが二つ。で、俺の部屋は広いベッドがあるから……」と話しながら、周りを見回す。

そしてにやりと笑って、「だから、俺は今日は真唯佳ちゃんと寝る!」と堂々と宣言した。


彬は即座に顔を険しくして「ちょっと待て、そんな勝手な——」と言いかけたが、蒼は手を振って遮る。

「俺様は自分のベッドで寝たいし、みんなに寝床を用意するにはこれが一番!

俺様の考えた最強プランにケチつけるなよ」と、まるでこれが唯一の正解だと言わんばかりに胸を張った。

彬はため息をつき、冷静さを保ちながら「なぜ君が真唯佳と寝る必要がある?客人として扱って、別の場所で寝てもらいたい」と言い返す。

蒼は軽く笑いながら、「俺は男と寝る趣味はない」と軽妙に答え、さらに彬の言葉をかわそうとする。


彬も譲る気はなく、「僕はこのソファーでもいいよ。真唯佳がセバスチャンと同室になれば」と提案する。

しかしセバスチャンは恐縮しながら「いえ、では僕がソファーで寝ます。陛下がソファーで僕がベッドだなんて、申し訳なさすぎます」と丁寧に断った。


「あなたはちゃんとベッドで寝たほうがいいわ、慣れない環境で疲れてるでしょ。

せめて寝床くらい、ちゃんとしたところで」

そのやり取りを聞いていた真唯佳は、苦笑しながらもセバスチャンに向かって、諭すように言った。


そして真唯佳は少し考え込んだあと、「……蒼君とシングルベッドで二人はさすがに嫌だけど……広いベッドなら、まあ構わないかも……」と、少し気恥ずかしそうに同意した。

この言葉に彬は目を丸くし、一瞬驚きの表情を浮かべる。

すると蒼は、待っていましたと言わんばかりに微笑み、「ほら、円満解決じゃないか。と言うことで、風呂から上がったら俺の部屋に来てね」と、真唯佳の気が変わらないうちに蒼が畳みかけた。


どうやら話が纏ってしまったようなので、彬は最終的には肩をすくめて小さくため息をついた。

そんな状況に、セバスチャンはただ成り行きを見守るしかなく、彼の視線はあちこち彷徨っているが、何も言えず静かにしていた。

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