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無と有 13

鎧の将軍、ジャックは「魔術師」の能力者ニコラスの生き別れの兄弟だった


「お前達は家族を捨てた。その罪を償わせてやる!」剣士は叫び、ニコラス目掛けて巨大な剣を再び振り下ろされ、衝撃でさらに後方へ吹き飛ばされ、体中が痛みに包まれた。

彼はジャックの憎しみの言葉に心を乱されながらも、冷静さを取り戻そうと必死だった。

ニコラスも何度か攻撃をしている。しかし彼がいくつかの光の刃を当てても、ダメージを受けているにも関わらずジャックは一瞬戸惑っただけで再び立ち上がり、戦闘に戻ってくる。

彼は復讐の執念によって駆り立てられており、再び戦いに戻る不屈の精神と体力を持っている。

ジャックは、負傷してもその痛みを無視して攻撃を続けるため、ニコラスに絶望感を与え始めた。

彼の手は震え、何度も唱えた防御の呪文も、兄弟の剣の前では意味をなさなかった。

力の差は圧倒的だった。


鎧の将軍は一度剣を地面に突き立て、暗黒のエネルギーを剣に集め始める。

その間、地面が黒く染まり、周囲の空気が震え出した。

ジャックの右のこめかみに浮かび上がる剣に百合のアザが今まで以上に強く浮かび上がり、エネルギーが十分に集まったその瞬間。

「ヘルスプリッター」とジャックが呟き、剣を力強く振り上げ、その後一気に振り下ろす。

剣の一撃が、数十メートルにわたって地面を裂き、ニコラスとその周囲の地面を粉砕するだけでなく、その衝撃波は遠くまで広がり、広範囲に甚大なダメージを与えた。


「こんなところで……終わるのか……」ニコラスの思考が暗闇に沈みかけた。

その瞬間「ニコラス、援護する!」と、セバスチャンの声が響いた。

ニコラスは振り返り、必死に叫んだ。

「手を出すな!」

彼の声は鋭く、そして決意に満ちていた。これは、自分自身で終わらせなければならない戦いだ。

兄弟との戦いを、他の誰かに託すことなどできなかった。


瀕死の状態で立ち上がったニコラスは、その瞬間、彼はふと冷静さを取り戻した。

「ここで終わるわけにはいかない。」

決意が湧き上がると同時に、ニコラスの左のこめかみの剣に薔薇のアザも色が濃くなり、分身の術を発動させた。

瞬く間に、ニコラスの姿が複数に増え、剣士を取り囲むようにして動き出す。

ジャックは一瞬戸惑い、どれが本物か判断できない。

ニコラスはその隙を突き、遠くから無数の光の刃を放った。

光の刃は空を裂き、剣士に向かって一直線に飛んでいく。


「くだらん!」鎧の将軍はそのうちのいくつかを剣で弾いたが、全てを防ぎきることはできなかった。

「こんなものでは俺は倒せない!」ジャックは怒りの声を上げながらも、再び立ち上がり、巨大な剣を振り上げた。

しかし大技を出した直後の彼の体は、限界に近づいていた。


ニコラスはそれを見逃さなかった。

「今だ!」心の中で叫び、分身を引き戻し、全てを一つに統合した。

彼の体から強大な魔力が放出され、最後の呪文を唱えた。

そして、その剣に光の魔法を纏わせると、ジャックの剣を弾き返すように力強く一閃した。


ジャックは倒れかけながらも、立ち上がり、再び剣を振りかざそうとしたが、ニコラスはさらに強力な呪文を唱え、剣士を完全に動けなくするほどの拘束魔法を発動した。

ニコラスは苦々しい声で「お前が俺の兄弟だとしても、俺はお前を止めねばならん。」と語りかける。

ジャックは拘束されながらも、まだ抵抗する意志を見せていたが、その目にはかすかに涙が浮かんでいた。彼はニコラスを睨みつけながら、憎しみと悲しみが入り混じった言葉を吐き出した。

「なぜ……なぜ親は俺を捨てたんだ。なぜお前ではなく俺だったんだ!」

ニコラスはその言葉に胸を締め付けられるが、それでも自分の役割を果たさなければならないという決意を固めた。

静かに返事をする。「俺も知らない。だが、これが俺たちの運命なら、俺は受け入れるしかない。」


光の剣がニコラスの手に現れ、それを剣士に向けて振り下ろす。

その瞬間、何かがニコラスの剣を弾こうとするも、彼の力の方が強く、剣士はその光に包まれ、ついに力尽き、ジャックの体が崩れ落ちた。

ニコラスは膝をつき、息も絶え絶えになりながら、目の前に倒れた兄弟を見下ろし、彼の額に浮かんだアザを見つめた。

同じ運命を背負った兄弟としての絆を感じながらも、彼は剣士を打ち負かすことでその運命を終わらせるしかなかった。

兄弟よ……俺たちは別々の道を歩んできたが、これが我々の結末なのだ。

ニコラスは、心の中でつぶやいた。


その時


「なんだ、それがお前の姿か。所詮は人の子だったんだな。」

あらぬ方向から、見知らぬ声がする。

一同、声がした先を見上げると、彼らの視線の先には、空中に浮かぶ雷の将軍の姿があった。

雷将軍は、まるで空気を切り裂くような存在感を持ち、彼の周りには青白い稲光が散発していた。

雷将軍の気配を感じて目を開け、倒れたまま「お前……ゼクス」と呟くジャック。

その声は冷たく、憎しみと緊張が渦巻く空気を一層重くした。


ニコラスたちは、空中に浮かぶ人物の外見とジャックとの会話から、ゼクスが大臣の側近であることを察知した。

体力的には限界に近づいているのに、もう一人の将軍と戦うのは絶望的だと感じていた。

心の中に湧き上がる恐怖と無力感は、彼らの表情に暗い影を落とした。


セバスチャンは、その新手の将軍の名前に聞き覚えがあった。

あれが、カインの心を悪に染めてしまった将軍……

彼の仇を打ちたかったが、体力をかなり消耗していて、一矢報いる力も出ない。


雷将軍は不敵な笑みを浮かべ、吐き捨てるように言う。

「ふん、鎧の将軍がやられているよ、いい気味だ。

閣下のお気に入りだかなんだか知らないけど、目障りだ。トーラー諸ともみんな消えてしまえ」と声高に宣言した。

その声には、彼の冷酷さと、他者を意に介さない傲慢さが滲んでいた。

彼の手がひらめくと、魔法の攻撃が展開された。

直径1メートルほどの青白い光の玉が彼の手から生まれ、宙に浮き、鎧の将軍へと一直線に向かう。

攻撃が絶望に駆られた4人に直撃するその瞬間、周囲が緊張感に包まれる。


だが、運命の歯車が変わった。

衝撃が二波、彼らの視界に急に飛び込んできた。


一つは光の玉を追いやるように進み、そのまま遠方の森に向かい、地面に衝突して大爆発を起こす。

そしてもう一つは、雷将軍を強く牽制する衝撃だった。

ゼクスは咄嗟にその衝撃を避けるも、空中で大きく体勢を崩さざるを得なかった。


セバスチャンたちは、その衝撃の発生源を一斉に振り向く。

目にしたのは、塔のてっぺんに立ち、技を放とうと両手を前に突き出す構えを決めたマディラだった。

彼女の表情は、これまで見たこともないような鋭い眼光を宿しており、その視線に一同は凍りつく。

王妃の存在は、彼らにとって最後の希望の光であり、同時に恐怖の象徴でもあった。

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