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Blank Cartilage  作者: 海祇マリネ
1章 立志編
1/15

プロローグ

 

 立ち上る硝煙。そこに立つ、一人の『虐殺者』。

 その眼差しは凍てつくように冷たい。深く、黒く。無感情で冷酷な軍人がそこにいる。

 間髪入れずに少年は煌々と光るランプを撃ち抜く。銃声を合図に光を失った室内は刹那、闇に呑まれ、視界を奪う。


「……ありがとう、助けてくれて。じゃあ……」


 のろのろと立ち上がる少女。今や月だけが唯一の明かりだ。精彩を失ったその空間で彼女は見る。

 ぼんやりと鈍色の光が映し出す銃口は、下がらない。

 対峙する男女。

 月を背後に受け、妖精のようにたたずむ少女。細い金糸のような紙が振り返りざまにふわりと舞い,

神々しさすらある。

 照準は、その額に据えられていた。

 驚いたような、唖然としたような声で少女は呟いた。鈴のような声が耳に届く。


「国王は、死んだわ。あなたの手によって息絶えた。もうこれで、終わりなのよね?」


 少年は答えない。


「……早く戻りましょう。増援が来るわ」


 少年は動かない。

 長いような、一瞬のような間。それを震える声が破る。


「悪い。俺は……俺は、家族を、見捨てられないんだ。俺はまだ、死ねない」


 その意味は。


 少女の身体がびくりと硬直する。


「そんな……なら、どうして」


 手伝ってやるなんて言ったの。

 その言葉は声にならない。

 少年はかぶりを振る。明確な拒絶の合図。


「ごめん……本当にごめん」


 ほんの一瞬、後悔でくしゃりと歪めた顔。

 彼女に見せた、最後の心。


「さよならだ」


 ――銃声。

 少女の額の中心。真っ赤な銃創が開く。そのままゆっくりと、途方もなくゆっくりと。彼女は背中から崩れ落ちた。


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