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攻撃魔術って

攻撃魔術ができないレイだが、ふとしたことでファイヤーボールもどきを打ち出すことができる。ウォーターボールも材料さえあれば精錬することができるのでは…。普通のやり方とは違うけどとレイは攻撃魔術を精錬しだす。

 外は、まだほの暗い。早朝。僕は、いつもよりも早く目覚めた。腕、足、背中、腹筋。全てに筋肉痛。昨日の素振りは効果てきめんだったようだ。「あ痛たた…。」(おやじか…よっ。)

 「レイ、起きたの?」廊下から声がする。(アメリア姉さん。ミラねえだ。)

 「うん。でも、筋肉痛で起き上がるのが大変。」

 「ヒールかけようか?」

 「お願い。」僕は、のそのそと起き上がり、ドアを開けた。

 ミラ姉がドアの前に立っていてすぐにヒールをかけてくれた。

 「ありがとう。楽になったよ。」

 「どういたしまして。でも、レイにヒールが効くようになって良かった。」ミラ姉はとっても嬉しそうに僕を見ていた。「今までは、どんなに苦しそうでも見ているだけしかできなかったから。」

 「そんなことないよ。今までも、薬を飲ませてくれたり、食事の世話をしてくれたり、たくさんお世話になってたじゃない。」僕は、慌ててミラ姉に伝えた。本当に伝えきれないくらい感謝している。

 「そう…、でも、レイが元気になって嬉しいってこと言いたかっただけ。昨日は、家に帰ってきたらもう寝ていたから…。祝宴の時もゆっくり話せなかったしね。そうそう、朝ごはん食べるでしょう。準備したから一緒に食べよう。ロジャーとアンディも起きてるわ。」

 僕たちは、この村の家に暮らす4兄弟みたいなものだ。血のつながりはないけど兄弟みたいに育てられ、育ってきた。小さい頃は、みんな一部屋で寝ていたし、何をするにも一緒だった。いつも寝込んでいた僕以外はだけど。それでも、とっても大切にしてもらっていた。

 「うん。一緒に食べるよ。」

 「レイ、お早う!」「おはようさん。」ロジャーとアンディも声をかけてきた。

 「全員集合、4人そろってこんな時間に朝ごはん食べるのは初めてかもしれないわね。」ミラ姉が嬉しそうにいった。

 「そんなことより、腹が減っているんだ、早く食べようぜ!」とロジャー。

 「そうね。じゃあ、いただきましょう。」

 「今日の恵みを神と大地、空と海、すべての命に感謝して、いただきます。」

 「いただきます。」

 「ミラ姉、今日の予定は?」アンディが聞いてきた。

 「そうねぇ。ギルドの依頼も昨日一応終わったし、予定は未定ってところかしら。レイの鍛錬も見てみたいし、スキルももう少し確認したいしね。」

 「じゃあ、俺たちも一緒に遊ぼうかな。4人で遊ぶなんてどれくらいぶりかな…。」ロジャーもノリノリだ。


 村から森へ向かう道から少し外れた草原。危険な魔物もほとんどいない。狩りの獲物になる動物もほとんどいないのだけど、子どもたちが狩りや戦闘の訓練をする場所だ。朝からそんなことする子どもはいない。大抵、家の手伝いをしているか、教会で勉強をしている。勉強は週のうち二日程度だけど。

 僕たちは、その広場でスキルについて確認することにした。

 神父様と一緒に戦闘魔術について練習したが発現できなかったことをみんなに話した。アイテムボックスについて確認しようとしてオープンの呪文を唱えると見慣れないものがいくつかあった。(薪、炭は分かる。昨日の夜、竈から収納したから。でも、炎ってなんだ?)

 「アイムボックスオープン・炎」「あちちちっ」手元に炎が現れた。

 「えっ?ファイアボールできるの?」

 「戦闘魔術できないんじゃなかった?」

 「今のは、ファイアボールじゃなくて、竈の中の焚火の炎なんだよね。」

 「焚火の炎じゃ、そんなに威力はないかもね。」

 (炎の威力か…。温度が上がれば威力は上がるはずだよね。温度を上げるには、燃料と酸素を大量に送り込めば良い。理科で習った。でも、炎を手元に出したら火傷してしまうよね。動かせるかな…。やってみよう。)

 「じゃあ、もう一度、炎を出して、動かしてみる。ファイアボールみたいにできるかやってみるね。」

 (イメージは、かめ〇〇はー)

 「アイテムボックス・オープン・ほーのーおーっ!」

 さっきくらいの炎が勢いよく飛び出したが、3mもしないうちに消えてしまった。

 「すぐ消えるファイアボールね。」ミラ姉が笑いをこらえて言ってきた。

 (威力を上げるには、燃料と酸素。燃料は昨日の薪の燃焼成分。酸素は空気中にあるからアイテムボックス収納する。)

 「アイテムボックス・酸素」

 「アルケミー・焔」

 「見てて、アイムボックス・オープン・ほーむーらーっ!」

 ゴ~~~ッ

 すごい音とを立ててファイアボールが飛んで行って、小さい木にあたって木を燃やした。

 「あわわわわっ。火事になる~。ウォーターボール・ウォーターボール・・ウォーターボール・ウォーターボール・ウォーターボール」ミラ姉が慌てて火を消した。ゼイゼイと荒い息になっている。ロジャーとアンディは、口をあんぐりと開けたまま固まっていた。

 「レイ!こんなところでそんな威力のファイヤボール使わないの!」

 「ごめんなさい。こんなことになるなんて思わなくて…。」

 「じゃあ、ウォーターボールはできないの?」

 (水を沢山アイテムボックスの中に入れておけば、できるかもしれない。)

 (そもそも、水を入れることができるのだから、ウォーターボールを収納することができれば精錬できるかもしれない。)

 「ミラ姉、お願いがあるのだけど…。ミラ姉は、ウォーターボールを加減して撃ち出すことができる?」

 「できるけど…、どうして?」

 「じゃあ、ここに向かってウォーターボールを打ってみてくれない。真正面から。お願い。」

 「そんなことしたら、あなたに当たってしまうじゃない。」

 「多分大丈夫だと思うけど、もしものことがあったら怖いから怪我しないくらい加減したウォーターボールでお願いしたいのだけど。」

 「多分、大丈夫なのね。わかったわ。じゃあ、準備ができたら言ってね。」

 僕は、自分の真正面にアイテムボックスを準備した。他の人からは見えないけど僕には、アイテムボックスが開いているのが見える。

 「ミラ姉、ここに向けてウォーターボールを出して。2・3発お願い。」

 「ウォーターボール・ウォーターボール・ウォーターボール」ウォーターボールは、アイテムボックス吸い込まれていった。

 「ウォーターボールが消えたわ…。」

 アイテムボックスの中にウォーターボールが3発入っている。

 「アイテムボックス・オープン・ウォーターボール」唱えるとミラ姉が出したのと同じ威力のウォーターボールが飛び出した。

 (ウォーターボールは後2発残っている。どこかで水を収納すればウォーターボールは作れるかもしれない。)

 「ねえ、この辺りに、小川か池がないかな?」

 「ここから、森の外れに沿って東に少し歩けば川があったと思う。村の畑のほうにつながっている川な。」ロジャーが教えてくれた。

 「じゃあ、そこに行って水を手に入れよう。そうしたらウォーターボールができるようになると思う。」僕がそう言うと、アンディが怪訝な顔をして尋ねた。

 「レイ?水は、魔術で出せばいいのじゃないか?」

 「そうしてもできるかもしれないけど、効率悪いでしょう。魔術で水を出すのってそれに魔力が必要になるし。僕は、アイテムボックスがあるから実物を収納したほうが効率的だと思うんだよね。」という訳で、僕たちは小川にやって来た。

小川の水に手をかざして「アイテムボックス」水が収納されて、一瞬川が干上がったが、すぐに上流から流れてきた。小エビや魚がはねていたから取りたかったけどあっと言う間に水が来たから無理だった。

 「アルケミー・ウォーターボール。」ウォーターボールが3つに増えた。やっぱり精錬出来た。

 「ミラ姉。さっきよりも強めのウォーターボールをさっきみたいに僕のほうに撃ってくれない。」

 「でも、さっきよりも強めだと受け損なうと怪我しちゃうわよ。」

 「多分、大丈夫と思うけど大怪我しないように、まずは少し強め位でお願いします。」

 「分かったわ。少し強めね。でも、本当に気を付けてよ。」

 僕はさっきと同様にアイテムボックスを開いて準備する。

 「ミラ姉、お願い。アイテムボックス」

 「ウォーターボール」ウォーターボールはアイテムボックスに吸いこれ、ウォーターボール(中)がアイテムボックスに表示された。

 「アルケミー・ウォーターボール(中)」ウォーターボール(中)が二つになった。

 「ミラ姉、最高威力のウォーターボールもお願い。」

 「危ないわよ。失敗したら大怪我で済まないかもしれない。」

 「でも、冒険者として生きていくためには必要なんだ。威力の高い魔法の中では、僕にとっては一番安全だと思う。だから、お願い。」

 「レイも冒険者になるの?。なりたいの…?。」ミラ姉が、心底心配しているのは分かる。それでもお願いしたい僕は、真剣な目でミラ姉を見つめた。

 「分かった。冒険者で成功するためには、私のウォーターボールぐらいでは足りないかもしれないけど、ないよりましだよね。じゃあ、準備して。私もできるだけ威力の高いウォーターボールを練ってみるからね。」

「ミラ姉、お願い。アイテムボックス」

「ウォーターボール!」大きなウォーターボールが僕の直前でアイテムボックスに吸い込まれていった。魔力がググっと取られていくのが分かった。

 「フゥー。」ミラ姉が大きくため息をついた。魔力がかなり減ったんだと思う。

 「ありがとう。」僕はお礼を言うとすぐにアイムボックスを開いてみた。「アイテムボックス」ウォーターボール(高)がそこにあった。

 「アルケミー・ウォーターボール(高)」高威力のウォーターボールが二つになった。

 「レイ、ウォーターボールを撃つことができそうか?」アンディが聞いてきた。

 「できると思う。」僕が答えると「じゃあ、あの木に向かって撃ってみな。」ロジャーが煽ってくる。

 「OK。見ててよ。アイテムボックスオープン・ウォーターボール(高)」

 ドツシャーン、バキバキバキ、ドーン。

 川の横に生えていた大きな木が倒れてしまった。焔の時のようにあんぐりと口を開け固まるアンディとロジャー、呆れるミラ姉。僕は、こそこそと倒れた木を収納して証拠を隠滅した。

 「おめでとう。レイ。これで戦える魔術が一つ手に入ったわね。だけど、魔術だけじゃだめだわよ。冒険者は、体力第一。レイの体力不足は否めないわ。」

 ミラ姉の言う通り。僕には、体力がなさすぎる。よく食べ、よく運動することもこれから取り組まないといけないこと。魔法みたいに一朝一夕で手に入れられるものではない。

 「じゃあ、さっきの広場に戻って剣術と格闘の訓練をしましょうか。」ミラ姉に促され、僕たちは、さっきの草原に戻って来た。

 「じゃあ、俺が家に戻って木剣取ってくるわ。」アンディが村の家に走っていった。

 「俺と格闘の練習しようか。」ロジャーが言ってきた。ロジャーは、普段は槍を使っているが、格闘術も得意だ。槍が使えないような場所では、ナイフも使う。槍・格闘・ナイフがロジャーの戦い方。身体強化も得意なようだ。

 「お願い。」僕が答えると「じゃあ、基本の型からな。」と構えをとった。

 「腰を落として、重心は体の中心に…。力は必要以上に入れない。自然体が大切。正拳突き。ㇺッ。」

 ロジャーを見ながら真似をする。「ㇺッ、ㇺッ、ㇺッ…。」直ぐにじっとりと汗が出だす。(やっぱり体力が足りない。すぐに息が上がってくる。)しばらく、基本の型を繰り返した。ロジャーは、涼しい顔で続けている。ロジャーについていけなくなって型を中断した。

 「もうバテテしまったか?」ロジャーが僕のほうを見て心配そうな顔をしてきた。

 「うん。少し。でも、大丈夫。ちょっと休めば続けられる。」

 ふと周りを見るとアンディが木剣を持って僕のほうを見ていた。

 「おいおい、レイ。これ以上格闘の訓練をしたら剣術ができなくなるんじゃないかい。俺とも遊んでくれよ。」

 「ふぅー。よし、じゃあ、アンディ、剣術教えてくれ。」

 「OK。じゃあ木剣。素振りよりも打ち込みをやってみよう。」

 「ちょっと待って、アイテムボックス。」僕は木剣を収納した。アイテムボックス・オープン。木剣を取り出してロジャーに渡した。「アルケミー・木剣」「アルケミー・木剣」精錬した木剣を取り出し、ミラ姉に。そして僕の木剣。(この木剣は、少し長すぎる。)「アルケミー・木剣」次に作った木剣は神父さんが渡してくれた剣と同じくらいの長さと重さになった。

 「アンディ、お願いします。」「おう!」僕は木剣を入れ替えると、アンディの正面で剣を構えると上段から打ち込んだ。カーン。アンディ剣を受けると高い音がした。次は、アンディが打ち込んできた。次は、僕が受ける番だ。昨日の素振りと違ってなんか楽しかった。アンディの次はミラ姉。その次にロジャー。4人で代わる代わる打ち込みを行っていった。

 「ミラ姉…。」

 「ん?なあに?」

 「お腹が空かない?いや、お腹が空いた…。」

 「そうだ。お腹が空いた!」アンディも「腹へった。」ロジャーも。

 「そうね。お腹空いたわね。」みんな、お腹が空いていたようだ。

 「家に帰りましょう。」

 僕たちは、家に帰って夕食の準備を始めた。竈に薪を入れて、アイムボックスの中にある炎を竈に移した。ミラ姉が料理を作ってくれた。僕もロジャーも手伝った。もちろんアンディも。直ぐに暖かい夕食の準備ができた。

(四人そろっての夕食。暖かい。)

 それから4人で食事をしながら話をした。魔術のこと。剣術のこと。格闘術のこと。冒険者や冒険ギルドのこと。僕にとって攻撃魔術は精錬できるものだということが分かった。この世界で生きていくために大きい収穫だった。4人で過ごした楽しい一日だった。

 「そうだ。ミラ姉、ヒールもアイテムボックスに入れられるかやってみていいか?」

 「もしものためのヒールか…。じゃあ、一番効果の高いヒールがいいかもしれないね。」

 僕はさっそくお願いすることにした。

 「準備できた。アイテムボックス。お願い。」

 「よし。練りに練った。ヒール!」ミラ姉のヒールは、アイテムボックスに吸い込まれていった。ググググッと魔力が減っていった。

「うまくいったよ。アルケミー・ヒール」魔力が…、意識が薄くなって、歯磨きもしてないのに…。

冒険者へ、レイは希望を見つける。

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