廃墟のラジオ
次で完結予定となります。
「すごいわ」
「これは!」
「すげぇ……」
眼前に広がる庭園を見渡し、感嘆の声を上げる咲希。ワタル。翔の3人。
視線の先には、まるでヨーロッパの宮殿をの庭を思わせるような、植物のアーチや噴水。綺麗に剪定された植込み。完璧に管理された庭園があった。
「テレビの中みたいね」
咲希は数歩あるくと、花壇の前でかがみ込み、目の前に咲いている黄色い花を指で突っついた。そんな彼女を目撃すると翔はそっと近付き、スマホで1枚写真を撮ったのだった。
「ちょっと翔!」
シャッター音に気付き、スマホをかまえていた翔に駆け寄ると頬を膨らませる。
「いつも突然はやめてって言っているでしょ!」
「いや。咲希が可愛すぎてさ……よく撮れているから。これを待ち受けにしていい?」
「どれどれ?」
翔の言葉を受け、咲希は彼のスマホを覗き込む。
「私にもこれちょうだい!」
「了解。送るよ……はい」
「ありがとう」
咲希が翔に抱き付く。
「相変わらず仲のいいことで……」
いちゃつく二人をどこか疲れたような目で見つめるワタルとススム。
パンパン。
ススムは2度手をたたくと、いまだにいちゃつく二人にジト目を向けた。
「お二人さんの仲が良いのは知っているけど、そろそろ15分経つので先に進んでいいですかね?」
『あっ!』
翔と咲希は同時に我に返り、顔を赤くした二人はススムとワタルに頭を下げる。
「わるい。じ、じゃあ。先に進むか……」
翔はそう言うと咲希の手を取り歩き出した。
ギィィィッ。
「カギは掛かっていないみたいだな」
洋館の扉がすんなりと開く。4人は中に入る。
「中も凄いな……」
ホールを見渡し、ワタルはつぶやいた。
銀で装飾されたガラス製のシャンデリア。通路の真ん中には赤いカーペットが敷かれ、通路の要所要所には高そうな壺や絵画が飾られていた。
庭園から始まりここまで圧倒される光景が広がっていたが、何故か不気味な違和感を感じる一同。
不意に、
「ここ。廃墟なのよね?」
咲希がポツリとつぶやき、3人は同時に頷く。
「誰が管理しているのかしら?」
「そりゃ。不動産屋の管理会社だろ?」
ワタルが答えるも咲希はうかない顔で。
「私達。さっき庭園の周りを1周したでしょ」
「ああ。したな」
遠い目でススムが頷く。
「ここに来るには、私達が通って来た道しか無かったのよ。
で。思い出して欲しいの。あの道って私達以外に人が通った形跡ってあったかしら?」
『…………』
咲希の言葉に誰も答えられなかった。
そして、彼女は話を続ける。
「森に囲まれた庭園なのに落ち葉1つ落ちていない。
廃墟のはずなのに室内の家具はもちろん。窓ガラス1つ。ホコリ1つたまっていない……誰かが管理していたとしてもこんな事あり得るのかしら……」
4人は足早に、この洋館の主の書斎を目指して進む。
あの後、4人は急遽話し合った結果。ここまで来たのだから目的は達成しようとなったのだ。
右側の1番奥の部屋は……
「ここか!」
これまで素通りしていた扉よりも大きく重厚な造りの扉であった。
洋館への入り口と同様に扉にはカギは掛かっていなかった。抵抗無く開く扉。
執務室には、部屋の奥に大きな執務机が1つと本棚が3つ。
本棚に駆け寄る。真ん中の本棚に、
「……あった。ラジオ!」
翔はラジオを手にするとスイッチを押して電源を入れてみる。
「動かないか……」
翔は言うとラジオを調べ、電池の挿入口を確認するとラジオをワタルに手渡す。
「電池やっぱり無いのか。頼むワタル」
ラジオを受け取るとワタルはポケットから電池を取り出し、ラジオにセットする。彼は3人に顔を向け。
「電池入れたけど誰からやる?」
数秒は沈黙の後。
「じゃあ。俺から行くぜ!」
翔が立候補し、ラジオを動かし、流れるノイズをスマホで15秒程スマホで録音すると電源を切る。
「次、誰行く?」
順番にラジオを動かし、流れるノイズを録音していくのだった。
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