山中の洋館
書いていて話が膨らんできている。
ラストが初期の設定とかなり変わりそう。
翌日。昼過ぎ。
「本当にこんなところに……有るのかねぇ」
山道を歩きながら翔が誰にともなくつぶやいた。
ここは4人が住む市内の小高い山……いや、山と言うより森と言った方が近いであろうか。そんな場所に4人は来ていた。
「でも。懐かしいわねぇ……」
咲希が立ち止まると元来た道を振り返りながめる。
視線の先には山道の出発点となる無人の小さな神社の姿。
小学校低学年の頃は、4人で仲良くこの神社で遊んでいた。いわばこの山は4人にとって庭みたいなものであった。
だからこそ……
「確かに、懐かしいけど……さ。
廃墟? 屋敷? そんなの見たことはおろか聞いたことすらないぜ」
ワタルも神社を見下ろしいうと、ススムがニヤリと笑い。
「だから面白いだろ?
詳しく知っているはずのこの場所に、見たことはおろか聞いたことさえない洋館があるなんて……
そして、その洋館は……」
スマホを片手に、洋館にまつわるある噂を彼は語りはじめた。
それは、ある人物の手記とされる。
いつからそこにあるのか。大きな屋敷が、⬛道の中程に存在しているとされる。
人が住まなくなり数十年が経つといわれるが、不思議と屋敷の手入れは行き届いている。これは屋敷が⬛⬛と現⬛の狭間にあるためといわれる。
この屋敷の主人の書斎には一つ興味深い物があるとされる。それはラジオである。
このラジオは、境界が曖昧なこの場所で使用すると……自身の死ぬ間際の声が聞こえるといわれている……
私は様々な文献を調べ、そしてとうとう場所をつきとめたのだ。
程なくして、見つけた。私は件の屋敷を。屋敷は白い外壁が見事な洋館であった。
私は屋敷へと足を踏み入れた。屋敷は不思議なことにキレイであった。庭も屋敷の中も手入れが行き届きホコリ一つ落ちていない。怖い程、キレイであり私は思わず身震いしていた。
屋敷の主の書斎は、1階の右端にあるという。
私は書斎へと直行した。狭間は⬛の流れがおかしいのだ。長居は出来ない。
書斎には本棚が3つ置かれ、その1つにラジオが置かれていた。
私はラジオを手に取る。どこにでもあるような普通のラジオであった。スイッチを入れてみる。ラジオは動かない。
これは噂の通りであれば壊れているわけではない。
ラジオのカバーを開け、持参した電池を中に入れ、私は再びラジオのスイッチを入れてみた。
するとラジオから流れるノイズ。
私は持参したカセットテープにラジオから流れるノイズを録音した。
後は、このカセットテープを再生すればいい。だがまず優先することは早くここから出ることである……
私は持ち帰ったカセットテープを再生して……しまった。
カセットテープには。ノイズしか入っていないはずのカセットテープには私の……おそろしい……
そんな噂をススムはネットで見つけたのだった。
「ところどころで出てきた⬛ってなんなのかな?」
「さあ?」
スマホを見ながらつぶやいた咲希の言葉に首を傾げるススム。
「でも。珍しいよな」
ワタルがペットボトルのキャップを開けながら、続ける。
「この手の都市伝説って、普通は某県とかS県とかで語られるのに、ピンポイントでここだもんな」
周囲をゆっくりと見渡してからペットボトルの中身を一口。
するとススムが幽霊のポーズを作ると、
「何かに誘われてたりして」
「んな訳ないだろ……」
翔が呆れ顔で言った。
「ん。あれ?」
山道も中程までさしかかった時、ワタルは立ち止まると眉をひそめた。
「どうした?」
ワタルの不思議そうな声に3人は足を止めて振り返る。
3人の疑問に答えるた為にワタルは茂みを指差す。
「そこ。分かりづらいけど……道じゃね?」
『えっ!』
3人は同時にワタルの指し示す方へ顔を向けた。
ススムは茂みを掻き分け、しゃがんで周囲の地面を観察する。
「……道かはわからないけど。何か人の手が入っているのは間違いないな。
しかし、よく気付いたな」
「いや。さっきの話でさ」
頬を掻きながらワタルは答える。
「大きな屋敷が、⬛道の中程に存在しているってくだりあっただろ。⬛道ってこの山道のことじゃないのかなぁ……って。考えて注意していたんだ」
「なるほどな」
ススムは立ち上がると三人の顔を順に見つめてから問うた。
「ここが道なら、この先が目的地の可能性が非常に高いと思う。
だが、この先はご覧の通り道らしい物は無い。どうする?」
道無き道を慎重に進むこと10分。いまだに建物の【た】の字も見付からない……
「予想外れたかな?」
ススムは立ち止まると振り返り、
「このまま進んでも何も無さそうだから……戻る……」
「待って。あれ……」
咲希がススムに声を遮り、右前方を指差した。
そこは、不自然に木々が途切れ、全貌はここからでは見えないが、広場のようなスペースが空いているようであった。
『…………』
4人は頷きあうと歩き出したのだった。
そこには、大きな庭園を備えた白い洋館がそびえ立っていた。
【山中の洋館】最後までお読みいただきありがとうございます。
この作品は、完結次第。
夏のホラー2022にエントリー予定です。
皆様よろしくお願いします。
追伸
ブックマーク/感想/誤字脱字のご報告/いいね等の何らかの足跡残して頂けるとうれしいです。
引き続きよろしくお願いします。