決闘②
一度家に帰ってから夕食を食べ、少しの間くつろいでから上着を羽織って家を出た。
公園に着くと鈴がベンチに座って僕のナイフに糸を付けているのを見つけた。
「鈴、はやいね」
「ん、ああ、逢君か」
少し驚いた様子だったがすぐに作業に戻った。
「ごめんね、勝手に持ち手の先に穴空けちゃった」
「気にしないで。元々僕が頼んだことだから」
「ありがと。······はい!これで完成だよ!」
鈴から手渡されたのは持ち手からとても細くて長い糸がついたナイフだった。
「······糸細くない?」
「大丈夫大丈夫。ウチに蜘蛛の魔獣がいるからその子からもらってきた丈夫な糸だから」
「そうなんだ」
「後はこれを逢君の着ている上着の内ポケットに括りつければ完成」
「凄いね」
「1回投げてみなよ」
鈴に言われた通り投げてみる。
予想通りヒュっと音を立ててから地面に突き刺さる。
「それで糸を引っ張るんだ」
軽く引っ張ると地面からナイフが抜けて手元に帰ってくる。
「おお。かっこいいね!」
「でしょ?いやー頑張って作った甲斐があったね」
「ほんとにありがとね」
「いいんだよ。逢君にははやく身を固めて欲しいからね」
なんだそりゃ。
まあいいか。
「そろそろ多玖来るんじゃない?」
噂をすればなんとやら。
本当にやってきたようだ。
多玖が軽く手を振りながらこっちへ向かってくる。
「なあ逢、今日は脇差を使うのか?」
先程脇差を使っていたから気になったのだろう。
「うん。今日は様子見で脇差を使ってみるよ。それと暗器のナイフね」
「そうか。頑張れよ」
「あ、そうだ。逢君ちょっと脇差出してくれる?」
「いいよ」
何をするのだろうか。
流石にもうやることは残っていないだろう。
鈴は瓶を取り出し脇差にかけ始めた。
何か甘い匂いがするのでひとしきりかけ終わった鈴に聞いてみた。
「これってもしかして媚······」
「その通り。媚薬だよ」
やっぱりか。
何となく察してはいたがやはりそうだったか。
「お前らな······」
「ところで鈴」
「なんだい?」
「媚薬って脇差に塗っても効果はあるの?」
「············」
知らないのか。
「逢君ちょっとこっちに顔寄せて」
「いいけど」
今度は何をするつもりなのだろう。
そう思っていると媚薬を服に吹きかけられた。
「わっ、何やってんの!?」
「あはははは」
「これで完璧」
完璧じゃないんだよ。
「そろそろ俺らは離れるよ」
「もうすぐ雨里さんも来るだろうし」
「わかった」
「じゃあね」
2人は多玖が来た方向とは反対に進んでいく。
ここは広い公園だから離れれば簡単にはわからないだろう。
2人を見送った後は1人でストレッチをする。
かれこれ5分ほどストレッチをしていると足音が聞こえてきた。
「逢、こんばんは。今日もはやいわね」
「留恵こんばんは」
「あら、逢······」
気付けば目の前に留恵がいた。
「いい匂いね。これは香水?いや昨日と同じ媚薬かしら?ふふふ、どんな目的でつけてきたのかな?」
「いや、その······」
それは鈴にかけられたんです。
そのまま留恵は僕の左肩に顎を置き始めた。
緊張で身体が固まる。
頭の中をどんどん留恵が侵食していく。
留恵の髪の匂いが鼻腔をくすぐり、言葉では表すことが出来ないような幸福感に襲われる。
すると急に耳元に息が吹き掛かる。
「っ······!?」
思わず飛び跳ねそうになってしまう。
「る、留恵······」
情けない声が出てしまった。
「っ〜〜!?」
る、留恵に、だ、抱き締められてる!?
どういうことだ!?
あ、離された。
「さ、そろそろ始めましょうか」
そうだ。
忘れかけていたが今日は戦うためにここにいるんだ。
気持ちを切り替えないと。
「そうだね。じゃあ合図はまた硬貨が落ちたらでいい?」
「いいわよ」
今回は事前に鈴から借りてきたのだ。
いつも鈴には助けて貰ってばっかりだな。
いつか返せるようにならないと。
ワンテンポ置いてから硬貨を上に投げる。
そして『悪魔化』をしてから脇差を出す。
留恵は既に『天使化』をして武器も構えている。
地面と硬貨が衝突する。
まずは一気に詰め寄り、両方の脇差を振りかぶって攻撃する。
留恵はそれを受け止めたが少し驚いた顔をしている。
そりゃそうだ。
ナイフよりも長いから火力も高いに決まっている。
すぐさま左手の脇差を引き、それを使って留恵に突き刺す。
だが留恵も槍を回すようにして突きを躱した。
反撃を警戒して後ろへ飛び退く。
今度は右側から回り込む。
左の脇差で頭上から攻撃し、反対側の脇差で右から薙ぎ払う。
しかし留恵は槍を斜めに傾けて防いだ。
そこから留恵は押し返し、石突で鳩尾を突いてきた。
「うっ、ゴホッゴホッ」
鳩尾を突かれたことによって少しだけ噎せてしまう。
その間に留恵はこちらに近づき槍を振り下ろしてきた。
なんとか脇差をクロスさせて防ぐ。
だが槍を回してからの攻撃は防ぎきれず、左脚を切り付けられてしまった。
そしてそのまま『悪魔化』が解けてしまう。
「ナイフよりも脇差の方がいいんじゃない?」
「僕もそう思ってる」
ああ、また負けてしまった。
しかも鈴の作ってくれた暗器を全く使うことが出来なかった。
「明日明後日は休日だから、しっかり身体を休めておきなよ。休日は私と戦わなくていいから。」
「わかった。じゃあこれから平日は毎日戦うって事でいい?」
「いいわよ。それじゃあまた来週」
「じゃあね」
留恵はそういうとさっさと帰ってしまった。
後ろから多玖と鈴が出てくる。
「おつかれ。」
「うん。ごめん。結局今日は暗器使えなかった」
「別に気にしてないからいいよ。それより次頑張ってね」
((犬撫でててほぼ観てないなんて言えない······))
「あと休日に筋トレはしといた方がいいぞ」
「わかった。ありがと。今日はもう帰ろっか」
「そうだね」
「じゃあな」
「じゃあね」
疲れ果てた身体で家へと向かう。
ああ、そういえばそろそろ満月だったな。
その日はもしかしたら留恵に勝てるかもしれないな。
「鈴にかけてもらった媚薬凄かったな······」
すみません。
こちらの事情で1日1話投稿が難しくなってしまいました。
しばらくは2日に1話投稿するかたちで行きたいと思います。
またさらに厳しいようだったら3日に1話投稿にしたいと思います。
いつも読んでくださる皆さん、本当にすみませんでした。




