理性があれば
目で追える。
あっちの攻撃に対応できる。
こちらから攻撃もできる。
いつもとは格段に違う。
ナイフを仕舞い、爪を伸ばし硬化させる。
留恵の右側へ大きく回り込み加速する。
右手の爪を叩きつけ即座に左の爪で留恵を突く。
槍先で爪を弾かれさらに柄を使って左手も弾かれる。
そのまま右半身でタックルをされて距離を離される。
息を整えてからずっと服の下に折りたたんだままの翼を出す。
前日に穴を開けておいたのでこれ以上服が破れる心配はない。
翼の形を変化させ、槍の先端のように尖った形にする。
右の翼を先に留恵に放ち、そのまま自分も留恵に突撃する。
留恵が槍で翼を弾いた瞬間、左のナイフで留恵を切り裂く。
しかしそれも留恵の翼によって阻まれてしまう。
残っていた左の翼をなるべく細くして留恵の翼の下から攻撃する。
「がっ······」
翼は留恵の腹に突き刺さっていた。
もう一発打ち込もうとしたが即座に槍を使って距離を取られてしまう。
「ふぅ······やっと私にちゃんとした攻撃が入ったわね」
「やっと······ね」
「じゃあ次からはもっと力を出していいわね?」
そういった途端、留恵の手のひらから炎が現れた。
「言い忘れていたけど私のルーツはウリエル。神の炎ぐらい簡単に操れるわ」
マジか······。
勝率すげぇ下がった気がする。
「はっ!」
「うわっ!」
留恵が炎弾を投げつけてくる。
なんとか間一髪のところで避けきれたが今度は留恵自身が槍を持って接近してくる。
さっきよりも大量に炎弾を構えて。
······これはダメっぽいな。
全身を炎に包まれ『悪魔化』が解ける······と思いきやいつになっても『悪魔化』は解けない。
ああ、満月だからか。
炎がそこまで熱くないのは留恵の温情だろう。
「逢、転がって!」
「う、うん」
言われた通り土の上で転げ回る。
「あ、消えた」
「よかった······肌は燃えてないわよね?」
「うん」
「服だけで済んでよかったわ。次からはもっと威力を落とすわ」
「······服?」
言われてみると確かに今日着ていた満月用のTシャツが無くなっている。
「あ······」
「これを着て」
留恵が羽織っていたパーカーを脱いで僕に渡してくれる。
「さ、流石に悪いよ。避けきれなかったのは僕だし」
「そのままだと変質者よ」
「······ありがとう」
留恵から受け取ったパーカーを着て、チャックを閉める。
幸いなことに下は頑張ればダメージジーンズに見える程度の損傷だったのでそこは救いだった。
「さあ帰りましょう?」
「うん······」
足を踏み出した瞬間ぐわんと視界が歪む。
地面が近付いてくるのがわかる。
頭に衝撃は加わらなかったものの、意識は遠のいていく。
ああ······また留恵に迷惑かけちゃうな。
留恵視点
逢が急に倒れた。
頭を打つ前になんとか支えることが出来たけれど今はぐっすり眠っている。
どうせなので近くのベンチに連れていき膝枕をしてあげる。
『完全化』を抑えるための疲れかそれとも私と毎日戦っていたための疲れか。
恐らく後者だろう。
逢に告白されたその日からほとんど毎日逢の体に負荷をかけている。
私だって手加減するなりなんなりしてあげたいが私自身がそうはさせない。
どうしても勝負事には手を抜けないのだ。
それは兎も角、逢はしばらく起きなさそうだ。
私も眠いし寝ちゃおうかな。
逢の身体にそっともたれ掛かり目を瞑る。
逢が起きたら私も起こしてくれるだろう。
意識が深く沈んで行く途中でそんなことを考えた。
寝心地の悪さを感じて目を覚ます。
数十分くらいは寝れたかしら。
携帯を確認すると先程眠りについてから30分程経過していた。
逢は······まだ目を覚ましてなさそうね。
耳元に口を近付け息を吹きかける。
「ひゅい!」
「おはよう。よく眠れたかしら?」
「······ああ。迷惑かけたな」
「いいのよ。今日は帰ってよく休みなさいね」
「ああ······」
「さあ今度こそ帰りましょう?」
ベンチから立ち上がりこの場を後にする。
ひゅい!って言ってたわね。
面白かったわ。
「留恵」
「どうかし······!?」
突如逢が襲いかかってきたが間一髪のところで躱す。
「ちっ、決まったと思ったのによ」
満月の方の逢ね。
やっぱり寝ることがトリガーになっているのかしら。
一息ついた後、また逢が爪を伸ばし突進してくる。
それに合わせ槍を出し柄の部分で肋を強打する。
「ガッ······!」
転げ回って行った逢を追いかけ一応鳩尾に一突き入れておく。
「ゴフッ······」
逢がのたうち回っているのを横目に携帯を取り出す。
「·······もしもし葉月ちゃん?」
『はい』
一瞬のコール音の後に葉月ちゃんが電話に応答する。
「満月のせいで暴れ回ってる逢を持ち帰ってくれる?」
『ちっ、あのクソ兄貴が······。今すぐ向かいます。場所はどこですか?』
「いつも私たちがいる公園よ」
『わかりました』
ツーツーとい音を合図に電話が途切れる。
「くっそ······!不意打ちでも······ダメなのかよ······」
「もっと冷静なときにやってたら?私は性格の悪い方の逢は運べなさそう、というか運んだら暴れそうだから帰るわね」
「ちっ······」
「また明日ね」
「ふん······」
今度こそ公園を後にする。
葉月ちゃんは呼んだしあとは何とかなるでしょうし、明日大丈夫だったか聞いてみましょう。
先週は投稿出来ずすみませんでした。
ところで最近戦闘シーンが多くなってきましたがやっぱり書くのは苦手ですね。
温かく見守ってやってください。




