海②
やっとのことで脱衣場に辿り着き、着替えを始める。
「ほら2人ともはやく着替えちゃって」
「ああ、わかってるよ」
鈴に急かされ少し早足で着替える。
「よし、じゃあ外行くよ」
扉の前に立っていた鈴がドアノブを回す。
すると室内に太陽で熱せられた空気と塩の匂いが立ち込める。
「あっ、鈴達も来たよ」
「みんなおそ〜い」
いや流石にはや過ぎるでしょ。
ドアを開けると水着に着替えた3人がいた。
「逢、どう?」
その中でも一際目立った天使が僕にそう訊ねた。
「うん、とても良く似合っているよ」
上下ともに白色で揃えられ、小さなフリルがついた留恵の水着姿はとても綺麗で目がくらむようだった。
「じゃあこれからなにする?」
「······泳ごうか」
まあ海に来たってやることはそんなもんだ。
「じゃあ私たちは砂浜で眺めてるね」
留恵たちはバックからパラソルとレジャーシートを出し始めた。
鈴に耳を近づけ、
「10分くらいで戻ってくるぞ」
そう囁いた。
「じゃあこの砂浜から向こうにあるあの赤色の浮きを触ってくる、でいいな?」
「ああ」
「もちろん」
膝が浸かりそうになるほどのところまで歩き、ルールを確認する。
「あとどんな泳ぎ方でもいいよね?」
鈴が笑いながら言う。
よほど自信があるのだろう。
「いいよ」
「ああ······、じゃあ始めるぞ。3!」
すると多玖は『完全化』し、鈴は先程のクラゲとイルカを2頭出した。
僕も負けじと脚を悪魔化する。
「2!」
3人とも体の重心を落とし飛び込む用意を始める。
「1!」
左脚を後ろに下げ力を込める。
「スタ······」
多玖の声が全て聞こえる前に強く踏み出し海に潜る。
一瞬は飛び込んだ勢いに任せそしてクロールに移る。
数秒たち顔を上げた際に、ふと2人の方を見るが誰もいない。
違和感を感じ立ち止まって前を見ると多玖も鈴も海面を走っていた。
すぐにもう一度潜りクロールで進み出す。
なんだあいつら走るなんて聞いてないぞ。
全身全霊で水を掻くが全く追いつける気がしない。
すると不鮮明だが雄叫びが聞こえたような気がし、顔をあげる。
すると5メートルほど前方で鈴と多玖が殴りあっていた。
今度は何をやっているんだか。
そーっと波音を立てないように近付き浮きを触ろうとするが多玖に足首を掴まれる。
「よしっ」
そのまま多玖が僕を投げて鈴にぶつけようとする。
「月!」
しかし足下からクラゲが出てきてそのまま僕は弾かれる。
そして口腕と触手で多玖の足を掴み海に沈んでいく。
「あっ!ちょっ、待······」
「ははっ、ざまぁみろ。うっ······、あ、足が······」
今度は鈴が足をつったようで海面を悶えながら浮かんでいる。
「ぶはぁっ!」
「うおっ!」
多玖が何とか海面まで上がってきては沈んでを繰り返している。
「待っ······」
さっさと掴んでしまおう。
はぁ疲れた。
なんとか2人の醜い争いによって浮きに触ることが出来た。
「逢、おめでとう。かっこよかったわよ」
まあそれから良かったかな。
······かっこよかったかは知らないけど。
「おつかれ〜。多玖君も最初はトップだったのにねー。残念」
「ああ、ありがとな」
知理が多玖を励ましている?のか知らないが、多玖も満更では無さそうだ。
その横では······
「わぁっ!この子すごーい!」
「可愛いだろ?月って言うんだ」
葉月が先程まで鈴の乗っていたクラゲで跳び跳ねている。
葉月も昔から動物とか好きだからなー。
「次は······ビーチバレーでもしよっか?」
「賛成!」
ビーチバレーとか久しぶり、なんならやったことあるか思い出せないくらいだ。
「じゃあチーム分けしよっか。月の赤い手を掴んだ人が同じチームね。月、お願い」
そう言うと鈴と月が後ろを向き腕で何かをし始めた。
「はい、みんな引いてー」
鈴が月の腕の根元を見せないよう覆い被さり、月の腕をこちらに見せて来た。
「じゃあ私これー!」
「俺はこれで」
残りも一つずつ選び、余った最後の腕を鈴が選んだ。
「みんな選んだね?じゃあ掴んだまま離さないで」
そして鈴が1本の腕を持って離れると僕の持っている腕が根元から先にかけて段々と赤く染まっていった。




