海①
朝8時半に駅で待ち合わせをする。
少しはやいのではと思ったが鈴が言うにはこれくらいがちょうどいいらしい。
「おはよ〜」
「おはよう」
「おはようございます」
駅に20分くらいに着いた僕は葉月と入口でみんなを待った。
最初に着いたのは留恵で、その後鈴、多玖、知理、の順番で駅に着いた。
「これで全員かな?」
「じゃあ行くぞ」
目指すは海岸沿いのフォカロル駅。
鈴の知り合い?みたいな人がそこらへんの土地を所有しているらしい。
プライベートビーチ?みたいな感じで詳しくはよくわからない。
出発してから30分。
天地駅方面に向かい、その後乗り換える。
そして10分ほど電車に揺られているとその駅に着いた。
「わぁ!キレイ!」
辺りを見回し驚く葉月の声を聞きつつ、目の前に広がる海を眺める。
電車の窓からもチラチラと見えていたが青く澄んだ海が駅の奥にあるのが見えた。
「ほんとね」
「でも······人が少ないっていうかほぼいないっていうか」
「ここの所有者さんが気を利かせてくれてね」
そう言った鈴に自然と視線が集まる。
「俺がちょっと前にここに来ることを伝えたら何日か予約を断ってくれたらしい」
「すげぇ。良い人だな」
「じゃあそろそろ行こっか」
そう鈴が言うとみんな足を動かした。
「ここが所有者さん、ルキフグス・ロフォカルスさんの家」
まず最初に鈴が連れてきたのは砂浜を少し歩いた所にある木造の家。
鈴が扉を叩く。
「誰だい?」
「やあルキフグス」
扉を開けたのはハワイを思い出されるような服装をした大柄の日焼けした男性だった。
「おぉ!鈴か!待ってたぞ。今日は楽しんで行ってくれよな」
「ありがとう。紹介するね。この人が」
「ルキフグス・ロフォカロスだ。ルキフグスと呼んでもらって構わない」
「御園 多玖です」
「曽宮 逢とその妹の」
「曽宮 葉月です」
「雨里 留恵と」
「浮上 知理だよ〜」
「じゃあ僕はちょっとルキフグスと話すから先行ってて。着替え場所はそこらへんにあるから」
「ああ」
一礼してから鈴を残してルキフグスの家を去る。
多玖が先頭で来た道を戻っているが少したどり着けるか不安になってきた。
鈴視点
ドアが閉まりみんなが戻って行ったのを確認してからルキフグスに向き直る。
「今夜の準備はしっかりとしてくれているんだろう?」
「ああもちろんさ。雰囲気もしっかり出せてるぞ」
「ならよかった。火薬の方は僕が用意してある。少し遅れて僕の魔獣達が持ってくるさ。······ところで空き部屋を1つ貸してくれないかい?俺も着替えて置きたくてさ」
「じゃああっちの物置を使ってくれ。俺は夜まで寝る」
「ありがとう。感謝するよ」
逢視点
結局どこなんだ。
周囲を探索した後、駅まで戻ったうえそのまま反対側まで歩いて来たが全く見つからない。
「多玖、一度ルキフグスさんの家に戻って場所を聞こう」
「そうだな。もう見つかる気がしなくなってきた」
「じゃあ引き返しましょう」
踵を返し来た道を戻る。
数分歩いたところで前から人影が見えてきた。
「なあ逢、あれって鈴じゃないか?」
「え?」
目を凝らしてよく前の方を見ると確かに誰かいるのが確認できた。
「ほんとだ、あれ鈴だよ。おーい!」
知理が声をあげて手を振ると目の前の誰かも力なく手を振り返してくれた。
「おーい!」
多玖が手を振りながら走る。
それに続き小走りで多玖を追いかける。
少し近付くと疲弊した鈴が狼に乗っているのが確認できた。
「鈴、大丈夫か?」
「ああ多玖、問題ないよ。それより皆まだ着替えてなかったのか」
「そうなんだ。脱衣場が全然見つからねぇんだよなぁ」
「そりゃあ反対側に歩いてたら見つかるわけもないよねぇ」
「え?」
「え?」
ああそういうことか、駅側に戻らずに進んでいればよかったのか。
「まぁいいや、ほら付いてきて。俺が連れてってやるよ」
「ありがとな、鈴」
そう言ったあと鈴は黒いクラゲみたいな魔獣を出して頭上に浮かべた。
「やっぱ思ったより暑いね」
「日傘代わり?私も入りたーい」
「私も私も」
「私もいいかしら?」
「ああ、いいよ。月、拡大」
鈴の呼び掛けに応じて月と呼ばれたクラゲも直径
4メートルくらいまで大きくなる。
「わあ、すごーい」
ふと見るとさりげなく葉月が鈴の後ろに乗っている。
鈴も何故気付かない。
そして直射日光を浴びながら今戻ったばかりの砂浜を憂鬱な足取りで引き返すのだった。




