買い物
「見つけてくれホントにありがとね〜」
「あはは······」
僕は苦笑をこぼしつつ無言でアイスを頬張る留恵を見る。
もっと長く猫探しが続くと思い込んでいたらしい。
あんなにあっさりと見つかってしまってそれは不機嫌になるわけだ。
旅さんのくれたアイスをそっと留恵に渡してから会話を続ける。
「でもどうしてあんなところにいたんですか?」
「昨日あげられなかった夕御飯を求めてきたんじゃないかしら?」
「······」
せめて1日は待っていても良かったんじゃないだろうか。
足元に擦り寄ってまるで見つけてくれてありがとうというような目をしたリアを撫でつつそう思った。
隣の留恵がアイスを食べ切ったのを確認してから旅さんに別れを告げる。
「それではそろそろ行きますね」
「そう······。冷やしたいものがある時は何時でも来てね」
「ご馳走様でした」
留恵が満面の笑みを浮かべながらそう言った。
「そういえば来週ってみんなで海に行くじゃない?」
「うん。そうだね」
『シャル』から出たあと留恵はそう言った。
「それでね。今まで着てた水着が小さくなったみたいだから新しいのを買いたくて」
そういえば僕も去年まで履いていた水着を新調した方がいいかもしれない。
流石にもう狼のは恥ずかしい。
いくら鈴が作ってくれたとしても身体が大きくなれば履けなくなるものだ。
「じゃあどこにしようか······。『アス』はどう?」
「いいわね」
猫を探すのにほとんど時間を取られなかったためまだ時間は有り余っている。
さて、『アス』へ向かうとするか。
「水着って何処に売ってるんだっけ?」
「んー?適当に歩いていれば見つかるんじゃないかしら?」
「そっか」
ここはそこそこ大きいショッピングモールなので一つも売ってないことは無いだろうが少し心配になってきた。
それに比べて留恵は堂々としていてそれに加えて楽しんでるようにも見える。
······まあ多分あるのだろう。
「1階から探索していきましょう」
「うん」
1階は基本的にはフードコートなどの食品を取り扱っているお店が多いが、一応は服を売っているところもある。
「見て!」
「なにか見つかった?」
「たい焼きよ」
「食べたいの?」
「もちろん」
留恵はやはり甘い食べ物に目がないらしい。
僕はクリームのたい焼きを買い、留恵はつぶあんのたい焼きを買った。
この巨大な通路の真ん中に点在しているベンチに腰を掛け、たい焼きを頬張る。
僕は頭から貪り喰らうタイプの悪魔なので一口食べて絶命さえさせてしまえば食べている最中にたい焼きの苦しむ姿を見ずに済む。
しかし留恵は美味しそうにお腹からかぶりついている。
その姿はまるで天使のようだった。
いや天使か。
「あっ!留恵と逢君だ!」
天使を眺めてる僕の耳に此処には似つかないようなテンションの高い声が聞こえてきた。
声の聞こえる方へ顔を向けるとそこには何時ぞやに出会った浮上 知理がいた。
「やっほー」
知理視点
今日は久しぶりに『アス』に来た。
最近忙しくて全然買い物に行けなかったからつい色んなもの買いすぎちゃった。
両手に紙袋の重みが加わって少し手が痛いけどこれくらいへっちゃら。
私が可愛くなるためだったらなんだってやってやる。
そしてゆくゆくはカッコイイ彼氏を······。
そんな事を考えながら歩いてたら留恵とその彼氏である逢君が現れた。
1、気付かぬフリして素通りする。
2、あいさつだけして帰る。
3、二人の仲を深めるよう頑張る。
······3しかない。
ここは近くに来て今気付いた感を出して······。
「あっ!留恵と逢君だ!」
2人がこちらに気付く。
ふふふ、ここまでは完璧。
あとはどう声をかけるか······。
ここは気さくに
「やっほー」
決まったぁ。




