特訓
善悪池公園
「鈴は遅れてくるってさ」
「へー。わかった」
「ところで逢の得物はナイフだろ?雨里さんの得物はなんだった?」
「確か槍だった」
「リーチの差が激しいな。俺みたいに爪を伸ばせないのか?」
「伸ばせるけど強度が人間のとほぼ同じなんだよね」
「それじゃあただの爪が長いだけじゃねぇか」
「うーん、どうしよ」
「あ、そうだ。得物で勝てないなら身体能力で勝てばいい。逢、お前は身体のどこの部位を『悪魔化』出来る?」
「ええと、右眼と左足」
『悪魔化』とは悪魔が生まれた時から持っている能力で、簡単に言うと身体強化の事だ。
その間に首を斬られても『悪魔化』が解けるだけで死にはしない。
それと使用者の才能によって出来る部位がかなり左右される。
僕は右眼と左脚、多玖は両手両足を『悪魔化』できる。
また全身の部位を『悪魔化』して完全な悪魔になること、通称『完全化』も出来る。
『完全化』すると翼が生え、普段の『悪魔化』した状態よりも身体能力があがる。
だがそれも才能によって出来る頻度や時間も左右される。
僕の場合は月に一度一夜の間だけ、多玖は二日に一度その日中は『完全化』できる。
天使も大体同じだ。
違うことといえば天使の『天使化』は常に完全な天使であることと、常に翼があること、身体強化ではなく武器を創り出す『武器創造』があることくらいだ。
思ったより同じじゃなかったな。
『武器創造』も使用者の好みに合わせて作ることができるらしい。
僕は悪魔なのでわからないが。
「それなら、相手の攻撃を避けて、ナイフでジリジリ削っていく作戦でいこう」
「いいね!それ!」
「だろ?お前は今まで受けてばっかりだったからこれからは避けていこう。鈴が来たら他にも色々考えてもらえよ。それまでは俺が相手だ」
いつも持っているナイフを2つ取り出し、逆手にして持つ。
僕は多玖のように武器を創れないので、こうやって持ち運ぶしかない。
「先手は逢に譲るぜ」
そう言うと多玖は『武器創造』で創った太刀を中段で構え両手両足を『悪魔化』した。
多玖がそんなことを出来るのは天使と悪魔のハーフだかららしい。
普通はハーフでもそんな事は出来ない。
特異体質だ。
それでも僕達と一緒にいるのは悪魔の方が気が合うからだとか。
「ありがと」
右眼と左足を『悪魔化』すると視界が紅く染まり、視界に映るもの全てが鮮明に見えるようになる。
多玖を目掛けて右手で切り上げる。
だが難なく太刀で受け止められてしまう。
「お前逆手持ちなのか?」
「ん?ああ、こっちの方が力が入りやすいからね」
「雨里さんは槍使うんだろ?それなら順手の方が少しだけリーチをカバー出来ると思うんだけどな。」
「それなら順手にしよっかな」
ナイフを両方とも順手にする。
今思うと、逆手にしてたのは攻撃を受けやすいからだったのかもしれない。
そんなことが脳裏を過ぎる。
だがこれからは受けずに避ける。これを常に頭に入れておこう。
「さあ、仕切り直してもう一度だ」
今度は右手で袈裟斬りを仕掛ける。
だが止められる事は分かっているので左手で腹部を突き刺す。
「危ねっ!」
多玖が太刀で薙ぎ払うが、すぐに飛び退く
「当たったと思ったんだけどな」
「お前は俺よりも眼が良いんだからもっとよく見ろ」
少し屈みながら多玖から見て右側に近寄る。
それを見て多玖はまた薙ぎ払おうとするが、それを上に跳んで躱す。
そのまま多玖の右肩にナイフを突き刺す。
だが多玖はナイフにぶら下がっている僕の鳩尾を思いっきり殴り飛ばした。
「っ······!」
いつの間にか多玖の太刀は消えていた。
僕は木に衝突し、肺から空気が吐き出される。
そして『悪魔化』が解ける。
「突き刺すのは良くないな、その後対応が出来なくなる」
「そっか······」
僕が心の中で反省点を考えていると、聞き慣れた声とともに足音が近づいてきた。
「遅くなってごめーん」
鈴が来てくれたようだ。




