決闘?〜ゲーム〜
留恵の部屋に足を踏み入れる。
部屋中から漂う甘い香り。
すれ違うときや、近くにいる時にフワッと香るあの匂いだ。
「ちょっと待っててね」
そう言って留恵は部屋を出た。
······そういえば女の子の部屋に入るなんて何時ぶりだろう。
留恵は、多分鎌谷くんのものであろうゲーム機を隣の部屋から持ってきて弄り出した。
ゲーム機に電源を入れた後、コントローラーを渡される。
「じゃあ、この格闘ゲームにしよっか」
そう言って留恵が取り出したのはゲームのキャラクターが戦う格闘ゲームだった。
このゲームは僕が小学生の頃にずっとやっていたので結構自信はある。
得意なキャラクターのコンボ技は今でもしっかりと思い出せる。
留恵には申し訳ないが今回でこの勝負事は終わりのようだ。
「私はこのキャラ」
留恵は赤色の帽子を被ったおじさんを選んだ。
「じゃあ僕はこれで」
僕は留恵の選んだキャラクターの弟である緑色の帽子を被ったおじさんを選んだ。
僕がキャラクターを選ぶと同時に画面が暗くなり、カウントダウンが始まった。
3、2、1のカウントダウンでゲームがスタートする。
始まった瞬間に留恵のキャラクターに近付いて掴もうとしたが、技を使って躱された。
すると、留恵のキャラクターに下から打ち上げられてしまう。
上空からすぐに下に降りようとしたが既に手遅れだった。
下には常に留恵のキャラクターがスタンバイしており、地面に近付くとすぐにまた打ち上げられる。
それを何回も続けているうちに、フィニッシュが決まり、自分のキャラクターが吹っ飛ばされ残機が減る。
「······」
やばい、勝てないかもしれない。
そんな不安が胸を過ぎる。
リスポーンしてからの無敵時間を使って留恵のキャラクターに近付き、今度は掴みを成功させる。
そして上に投げ、着地までの間にため技をヒットさせようとする。
だが留恵は溜めている間に空中で移動し、ため技を躱される。
そしてさっきと同じように永遠に打ち上げられ続ける。
残機がもう1つ減ってしまった。
こちらは1つしか残っていないのに対して留恵は3つも残っている。
ああ、これ、多分負けるな。
そう確信し、今度は端っこの方に移動してずっと遠距離攻撃を仕掛け続ける。
案の定、こんな単調な攻撃はすぐに回避されすぐに撃破される。
残機が無くなり、留恵の勝利となる。
「いえーい」
「······」
······運が悪かったのかな。
そんな風に落ち込んでいるとドアをノックする音が聞こえる。
「鎌谷ー?」
「うん」
留恵がドアを開けると鎌谷くんが右手に大きいサイズのペットボトルを、左手にポテトチップスを持って部屋に入ってきた。
「持ってきた」
「ありがとね」
鎌谷くんが持ってきたペットボトルの中身は炭酸水のようだ。
鎌谷くん将来めっちゃお酒飲みそう。
「あ、コップ······。取ってくる」
「鎌谷くんありがとね」
どてどて足音を立てながら鎌谷くんが下に降りていき、すぐにまたどてどてと足音が近付いてくる。
「取ってきた」
「えらいね」
留恵がコップを受け取り、そのままテーブルの上に置いた。
「鎌谷が注ぐ」
「はい、じゃあお願いね」
鎌谷くんが大きなペットボトルを脇に抱え、頑張ってコップに注ぐ。
3つ全てのコップに炭酸水を注ぎ終わった鎌谷くんはその場に座り、1つのコップに手を付けた。
「ポテチ開ける?」
鎌谷くんはコクコクと首肯した。
留恵がポテチを開け、テーブルの上に置いた。
そのまま留恵も1つコップを手に取る。
僕もその後コップに口を付けた。
しばらくポテチを食べていると鎌谷くんが「鎌谷、トランプしたい」と言い出した。
「じゃあトランプしよっか」
留恵が部屋のタンスの中からトランプをひとつ取り出す。
「ババ抜きでいい?」
「なら僕がシャッフルするよ」
「そう?なら任せるわ」
留恵からトランプを受け取りシャッフルする。
昔から葉月とトランプをよくやっていたのでシャッフルだけは慣れてる。
「配るよ」
左から留恵、鎌谷くん、僕の順番で配っていく。
配り終わってから手札を確認すると自分のところにジョーカーがあるのに気付く。
まあ最初にジョーカーがあったとしても何ら不都合はない。
「じゃあジャンケンね」
ジャンケンで勝った留恵から順番にカードを引いていった。
そして何周かして残りの手札が一人3枚ほどになった頃、序盤に鎌谷くんに引かれたジョーカーがまたこちらに回ってきた。
ここで戻ってくるか······。
左端にジョーカーを入れて他よりも目立つように少し上に上げておく。
鎌谷くんならこれを取ってくれるだろう。
「······鎌谷、あれは取っちゃダメ」
「わかった」
そう言って鎌谷くんは右端のハートのクイーンを取った。
「留恵〜!」
そこからは全くジョーカーが僕の手札から離れず、結局は1位が留恵で2位が鎌谷くん3位が僕という結果になった。
「くっ······。流石留恵」
「えへへ」
やはり一筋縄ではいかないか。
そろそろいい時間だし、お暇させてもらうか。
「それじゃあそろそろ帰るね」
「じゃあね〜」
「お姉ちゃんを大切にしてね」
「あはは······肝に銘じるよ」
そう言って留恵の部屋を出て、玄関に向かう。
「じゃあね〜」
「じゃあね」
留恵の家のドアを開けて外へ出た。




