大切な話
「ねぇ、今日はもう帰らない?」
いつもと同じように公園で柔軟をして待っていると、突然留恵にそう切り出された。
「それでそれで?」
「そのまま家に帰ったよ······」
「ギャハハハハハハ」
多玖が抱腹絶倒している。
「もう愛想尽かされたのかな······」
「違うよ、逢君。愛想尽かされたんじゃない······」
ありがとう鈴。
お前は多玖と違って良いや······
「何度やっても勝てない逢君に呆れ果てて、嫌気がさしたんだ」
「ギャハハハハ。変わんねぇじゃん」
······つじゃなかったな。
お前も多玖と同類だ。
「はぁ······」
「それでどうすんのよ」
「今日帰ったらすぐに公園来いって」
「ギャハハハハハハハ。もう別れ切り出される寸前じゃん」
そうなんだよな······。
やっぱりそういうことなんだろうな。
「大丈夫。逢君ならまた新しい人が見つかるさ」
「その前に俺が見つけたいんだが」
「多玖は······頑張って」
「何その間」
学校が終わってから一度家に帰り、着替える。
そして数分後に家を出て歩いて公園に向かう。
公園には珍しく留恵が先に来ていて、ベンチにポツンと一人座っていた。
留恵に近寄るとあっちも気付いたようで視線を合わせてきた。
「今日はなんでこんなはやい時間に?」
「それは······」
留恵が言葉を紡ぐまでに生唾を飲み込む。
「最近暑くなってきたからしばらくは公園で戦うのはやめようって言いたくて」
「はぁ······」
つまり暑いから動きたくないと。
「そ、そういう訳じゃなくて」
「出来れば心を読まないでいただきたい」
「あ、汗臭いと嫌だし······」
「なんて?」
「な、何でもない!」
汗がどうちゃらこうちゃらまでしか聞き取れなかったので本当になんて言ったかわからない。
······もしかして運動した後の僕って汗臭いのだろうか。
そうか······。
次からはそこも考えていかなければ。
「そ、その······。か、代わりにうちでゲームしない?」
「え?」
「あ、いや、ルールは引き継いで勝てたら付き合う?ってことで。······どうか」
「やります!」
「······な。わかった。じゃあ今から行こっか」
「はい!」
ゲームなら勝てる気しかしない。
······あれ?
もしかして初めて女の子の部屋入るかも?
公園を出て右側の坂を登る。
交差点を左に曲がり、そのまましばらく真っ直ぐ進む。
灰色の屋根の家。
表札には『雨里』と書かれているのがわかる。
「入れ」
なんで命令口調?
「お邪魔しまーす」
「どうぞ」
ドタドタと2階から人が降りてくる音がする。
「お姉ちゃん、それマジで彼氏!?」
「こら、それとか言わない」
「こんにちは」
「こ、こんにちは」
「曽宮 逢です」
「······雨里 鎌谷」
「私の弟。小学3年生」
「こいつは!」
······こいつ呼ばわりはなんか悲しいな。
受け入れられてない感覚が凄い。
「彼氏」
「············」
「ホント!?」
「ホント」
ここはもうノーコメントを貫いていこう。
「あ、鎌谷」
「なに?」
「ゲーム機借りるね」
「えぇー」
「ほら逢、行くよ」
「あ、うん」
留恵にまたもや手を引かれて留恵の部屋へと向かった。
弟を登場させる気は微塵もありませんでしたが、なんとなく出てきました。




