遊園地③〜葉月視点〜
兄ちゃんが次に向かうのは『メリーゴーランド』らしい。
食後なので懸命な判断だろう。
白馬に跨って雨里先輩と楽しそうに談笑しているのが遠目でもわかる。
あ、兄ちゃん落ちそう。
と思ったが雨里先輩にお姫様抱っこされて落ちるのは回避したようだ。
今度は『フライングブランコ』だ。
まだ食べてからほんの少しの時間しか経っていないというのに。
もちろん私たちはパスだ。
下から二人を見守るとしよう。
また兄ちゃんの叫び声が聞こえる。
今日で何回兄ちゃんの叫び声を聞いたのだろうか。
小さい頃はあまり気にしていなかったが、今第三者として見るとなかなかに騒々しい。
それよりもなぜ食事後なのにあんな風に横に回転する乗り物に乗れるんだろう。
自分は絶対に吐く自信がある。
あ、兄ちゃんが口元押さえてる······。
多分もう少しで終わるから耐えるんだ。
『フライングブランコ』で回りながら嘔吐とか笑えないぞ。
『フライングブランコ』はギリギリ吐かずに乗れたようだ。
その後にトイレに行ったのは言うまでもない。
トイレから帰ってきた兄ちゃんは『迷える館』に行くようだ。
あそこは俗にいう迷路である。
「迷路なら······」と今度は入る事にした。
中には大小様々な大きさの鏡が設置してあり、大人でもしっかりと迷う仕掛けになっている。
出る頃には兄ちゃんの身体はボロボロになっていた。
そろそろ良い時間になったところで兄ちゃん達は『ハルファス観覧車』に向かった。
兄ちゃん達とは数個ずらしたのに乗り、千和さんの持ってきた双眼鏡で覗いていた。
まさか観覧車内でキスをするとは思ってもいなかった。
しかもあんなに長い時間。
帰りはずっとイチャイチャしてるのを眺めているだけだった。
電車の中では多分LNIEを交換してたし、帰り道では兄ちゃんの方からキスするし。
早足で行っちゃったから先に帰ろうとする計画が無駄になったし。
「ただいま〜」
「おかえりー 」
案の定、兄ちゃんはしっかりと家に帰ってきてた。
「どこ行ってたんだ?」
「あー、友達と遊びに行ってた」
別に嘘はついていない。
「兄ちゃんの」 友達と 「兄ちゃんを尾けて遊園地に」 遊びに行ってただけだ。
「そうか。風呂はもうそろそろで沸くだろうから先入っておいで」
「わかった。ところで兄ちゃん」
「なんだ?」
一呼吸置いてから質問する。
「デートは楽しかった?」
「······ああ、とても楽しかったよ」
それなら良かった。
「じゃあ部屋に戻るから風呂から出たら教えて」
「わかった」
これで安心して今日も熟睡できる。




