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悪魔となって  作者: 羊木 なさ
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遊園地②

『ジェットコースター』乗り場の近くで乗るためのチケットを買い、列に並ぶ。

タイミングが良かったのか順番はすぐに回ってきた。

貴重品を備え付けの袋に入れ、安全バーを下げる。


『それではいってらっしゃいませ〜』


店員さんの掛け声を合図に動き出す。

長い時間をかけて最初の山を登る。


(ドキドキするわ)


登りきったあと、ふわっと身体が宙に浮くような感覚がしてから重力が一気に襲いかかってくる。


「きゃあああああああああああ!」


留恵も大絶叫している。

勿論自分もだ。


「あああああああああああああ!!!」


決定的に違うのは留恵は両手をあげて笑っているのに対し、自分は顔面蒼白で縮こまっているところだろう。


「あああああああああああああ!!!」


手を繋ごうとか考える暇もなく地獄の『ジェットコースター』タイムは終わった。


「ぜぇ······ぜぇ······。酷い目にあった」

「『ジェットコースター』って傍目から見るより面白いのね!」

「そこら辺は人によって違うと思うけどね」

「じゃあもう一周しましょうか」

「えぇ······」

「ほら行きましょう」


留恵に手を引かれてまたチケット売り場へ向かう。

多分これは留恵が飽きるまで終わらないやつだろう。

抵抗しても無駄だ。

諦めよう。


「きゃあああああああああああ!」

「あああああああああああああ!!!」



「次は何処に行きましょうか」

「出来れば穏やかなのがいいな」


合計3回も『ジェットコースター』に乗った。

暫くは『ジェットコースター』は乗りたくない。

それに怖さがキャパオーバーしてもう何も感じない。

感じないはずなのに足腰がまだ安定していない。

どういうことだろうか。


「あの滝から落ちるやつは?」

「ちょっとなぁ······」


絶対に嫌だ。

今日はもう絶叫系は勘弁してほしい。


「そう······。ならあそこの御屋敷みたいなのは?」


多分『お化け屋敷』なのだろう。

遠目で見ても外装が凝っているのがわかり、存在感を放っている。


「······そこならいいかな」


よく見ると『発狂!恐怖のゾンビ屋敷』と書かれている。

絶叫じゃなくて発狂なのか。

······そんなに叫ぶのか。

まあ、『お化け屋敷』なら多分大丈夫だろう。

ここの『お化け屋敷』は1度も来たことがないので少し楽しみだ。

チケットを買って受付で渡す。


「それでは先へお進みください」


黒い洋服で身を包んだ女性に先を促される。

冷房をつけているのかやけに涼しい。


「ねぇ、心配だから手繋いでもいい?」

「いいよ」

(やったー!合理的に逢と手を繋げるわ。ラッキーね)


パッと見ると落ち着いているように見えるが全然そんなことはない。

心臓がいつもよりはやく脈打っているのがわかる。

それが恐怖によるものなのか、留恵と手を繋いでいるからなのかは置いておくとして。

自然と身体に力が入り、ギュッと手を強く握ってしまう。


(きゃあ!逢が私を求めてくれているわ。この調子でビックリ要素が来たら逢に抱きついちゃおっ)


「ガァァァァァァ!」

「あああああああああああああ!!!」


通路の横側のガラスに急にゾンビが張り付いてきた。

叫びながら目の前にあるものにしがみつくと違和感を感じた。

ふわっと鼻腔をくすぐる甘い香り。

柱にしては妙に柔らかく、顔が何かに挟まれている感覚を覚えた。

そこまで考えたところで思考が停止する。

僕は何に抱きついている?

ゆっくりと顔を上げるとなんとそこには頬を膨らませた留恵がいたのだ。


(それ、私がやるはずだったのに······。でも抱きついてくれたのは嬉しかったわね······。うふふ)

「ご、ごめん」

「いいわよ」


まだ頭がこんがらがっている感じがする。


(次は私がやらないと)

「さ、進みましょう」

「う、うん」


暗い通路をまた進み始める。

大丈夫だ。

出てくるとわかっていれば怖くない。

どうせそこの曲がり角辺りにいるんだろう。

そーっと静かに曲がり角を曲がる。

あれ?

いないぞ?


「アアアアアアア!」

「ぎゃあああああああ!!!」

「きゃっ!」


すぐに留恵の手を取って走り出す。

なんでゾンビが後ろにいるんだ!?

さっきまでいなかったはずなのに。

怖すぎる。

さっさと出口へ向かおう。

出口までの道のりにビックリ要素が何個もあったが、夢中で走っていたため驚く暇さえなかった。


「あぁ······。疲れた」

「あんなに走ったからよ」

「だって······あれは許されないでしょ。なんで背後にいるんだよ」

「そういうものでしょ」

「そういうものかぁ」

「じゃあ次はあの回転するコップに乗りに行きましょうか?」

「いいよ」


今度は留恵はあの『ローリングティーカップ』に乗りたいらしい。

あれは多分大丈夫なはずだ。

絶叫要素もなければホラー要素もない。

ただのアトラクションだったと思う。

また新しくチケットを買って列に並ぶ。

今日は全体的に人が少ないのかすらすら入れる。

『お化け屋敷』なんて人が並んですらいなかったし。

待っている間に留恵が話しかけてきた。


「これはどういうアトラクションなの?」

「回転するカップに乗るアトラクションだよ」

「ふーん」


まあ、それ以外に説明するものがないしね。

僕達の順番が回ってきた。


「この真ん中のは?」

「······持ち手だよ」


下手に「これを回すとカップも回るんだよ」とか言うと留恵が全力で回し始めそうなのでやめておいた。


「あ、すごい!これ回る!」

「あっ······」

「きゃー!カップも回ったわ!」


やらかした。

留恵が遊園地に来るのが初めてだからって油断していた。

先に触ってはいけないと伝えるべきだった。

そんなことを考えている間にカップはどんどん加速していく。


「あああああああああああああ!!!」


そして地獄のような時間が終わった。


「ねぇ、次はどうする?」

「そろそろお昼ご飯にしよっか」


スマホの時計は11時47分を指している。


「そうね。そうしましょう」

「じゃあフードコートに行こっか」


フードコートは確か『ジェットコースター』とは反対側にあった気がする。

5分ほど歩くとフードコートのあるお店が見えてきた。


「留恵は何食べたい?」

「んー、たこ焼きとか?」

「それならあっちだね」


たこ焼きを売っているお店を見つけて並び始める。


「レギュラーと卵をお願いします」

「それに明太子とたこ無しを1つ」

「お持ち帰りですか?」

「いえ、ここで食べます」

「4つで2600円になります」

「3000円で」

「400円のお釣りです。ありがとうございました。208番ですので出来上がりましたらお越しください」

「わかりました」

「······ありがとね。じゃあレシート見せて」

「返さなくていいよ。僕がやりたいからやっただけだからね」

「そう······。ありがとね」


本当は留恵にかっこいいとこを見せたかったからやっただけであってそんな感謝されるような事ではないのだが留恵に感謝されたらやって良かったと思える。


「208番の方ー!」

「はーい!」


受け取り口まで行ってたこ焼きを受け取る。

そして空いている席を探して座った。


「こっちが留恵のね」

「ありがと」

「「いただきます」」


付いていた箸を使ってたこ焼きを食べる。


「······ねぇ、たこ無しってどんな味なの?」


何個かたこ焼きを食べたところで留恵が質問してきた。


「たこ焼きからたこを抜いただけだよ」


たこ焼きからたこが無くなったらただの焼きになってしまうがそこそこ美味しい。


「ふーん。ちょっと食べさせてくれる?」

「いいよ」

(ふふふ、これで間接キスは頂いた)


すると留恵は口を開いた。

いわゆる『あーん』というやつだ。

食べさせてくれるとはそういう事だったのか。


「はい、あーん」

「あーん」


パクっと留恵は1口で食べてしまった。

出来たてだから熱いだろうに。

予想通りすぐにコップの水を口に含んだ。


「ぷはぁー。熱いわね」

「そりゃあね」

「代わりに私の卵のやつを食べさせてあげるわ。はい、口を開けて。あーん」

「あ、あーん」


勢い余って留恵と同じように口に全て含んでしまった。


「あっつ!」

「ふふふ」


すぐに水を含む。


「ふー」

「熱かった?」

「熱かった」


もう一度水を含んでからたこ焼きを食べる。

そこで気付いた。

これ、間接キスじゃね?


(ふふふ、逢よ、やっと気付いたか。頬が染まっていくのが目に見て分かるぞ)


留恵は平然としている。

まあ、気にせず食べればいっか。


(あ、普通に食べるんだ······)


その後は特に何事もなく順調にたこ焼きを食べ終えた。

一応R15追加しときます。

理由としては今回のような事があるからって言うのと、これからこういう感じのが多くなるかもしれないからです。

今後も羊木 なさをよろしくお願いします。

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