第三話 会議
階段を降り、地下の会議室へと降りる。
天井は高く、壁は白い。
なかなか美しい内装だな。
ここ、中学生が作った設定が反映されてるんだよな...?
それにしてはちょっと精巧過ぎるんだよなあ...俺、ここまで細かく作ってないのに。
何かの補正がかかっているのかも。
俺が作ったのはヘリオス含めて合計十四人の部下たちと、本拠地の大体の構造だけ。
それ以外の設定はふわっとしか作ってない。
でも、他の国や、他の魔王も存在してるかもしれない。世界に俺たちだけ、なんてことは多分ないからなあ...
俺の作ったキャラクターたちを元に展開された世界、なんてこともあり得るしな。
それに、あと一人の従者の名前がどうしても出てこない...あとで皆んなに聞いてみるか。
「ヘリオス様〜!」
お、一人来たっぽいな。
あれは...ジェミニか?
双子の兄で、弟とは反対の性格。人懐っこく、可愛いように見えるが、残虐な面も多い、だったか?
うーーん、何という、その...厨二臭い...
ごめんなジェミニ、酷な設定を背負わせたな。
「ジェミニよ、我の不在の間、元気にしておったか。」
「はい、勿論ですとも!妊婦の腹を縛って、羊水で腹を破裂させたり、猫の皮を生きたまま剥いだり、あと」
「もうよい、元気であったのなら何よりだ」
オエ、聞くんじゃなかった...聞くだけでグロさが伝わってきたし...
あれ、弟の方が見当たらないな
「ディディミはどうした」
「俺の後ろにいますよ。ほら」
ジェミニの背後に隠れていたディディミが引きずり出される。
「おへぁ!?」
「こらディディミ!ヘリオス様の前で失礼だろ!」
「だって、だって...あぅぅ...」
「何だよも〜!」
ディディミ。ジェミニの弟で、人見知り。好奇心旺盛な兄とは正反対な性格で、他人にはあまり心を開かない。
微笑ましい双子を眺めていると、背後で扉が開く音がする。
振り返ると、チャイナ服の女性と、二頭身ほどの子供が立っていた。
チャイナ服がタウロス。華奢な体だが、もの凄い怪力で、武器は大斧。左右のお団子が特徴的。俺、ギャップが好きだったのか...
もう一人はレオ。悪魔と天使の間に生まれた小悪魔。確か、一番スピードに長けていたな。
タウロスが口を開く。
「ヘリオス様のご復活、嬉しく思いまス。レオも、千年もの間、さびしがっテいましたよ。」
「ボクはヘリオスさまがふっかつすること、わかってたからね!さびしくなんてなかったよ!」
レオはそんなことを言いながらも、俺の服の裾に縋り付いている。どこか小動物っぽく、可愛い。
「そうですわ、ヘリオス様。急な収集だったノで、遠征中の数人ハ、遅れるらしいでス。」
「そうそう!スコーピオンと、サジタリウスと、カプリコーンと、アクエリアスと、ピスケスは遅くなるって!」
ふむふむ。まあ急だったもんな。後は、バルゴには偵察を頼んでいるから、バルゴも不在だな。
そんなことを考えていると、背中に衝撃が走った。
脳でうるさく声が響く。
『スキル【衝撃耐性】発動!個体名、キャンサーの衝突を確認ました!!』
うるせーーーっ!!何だこいつ!!!スキルだろ!?俺の!正確にはヘリオスの!!!もう少し静かにしろよ!!!
『スミマセン、ヨクワカリマセン』
クソ、このエセSiriめ、急に白けやがって...会議が終わったら問いただしてやる...
で、
「何をしているのだ、キャ」
言いかけたところで、アリエスが怒号をとばす。
「キャンサー貴様!ヘリオス様に軽々しくぶつかるなど!家臣としての威厳がないのではないか!?」
アリエスさん、ブチ切れの模様。折角の美人が...
背中から声がする。
「良いではないですか、久々の対面なのです。どうか無礼をお許しくださいヘリオス様ぁ〜。えへへへ...」
後ろを振り向くと、もみあげだけを長く伸ばし、前髪を真ん中で分けた細身の男が、うりうりと俺のマントに顔を埋めている。
「キャンサー...我のマントに皺を付ける気か」
「申し訳ありません!直ぐに引き離しますので...!こら、キャンサー!」
アリエスがキャンサーと奮闘する。
「すみませんねヘリオス様。あいつも寂しがっていたんですよ。仕事はちゃんとやってましたから許してやってくれませんかね...」
キャンサーと一緒に来たとみられる男が言う。
あれ、こいつ...
リブラだ!!!
俺がヘリオスと同じくらい気に入ってたキャラクター...髪を斜めにぱっつりと切っていて、左右に長い角を持っている魔人。クールな性格に作ったよなあ。
「フハハハ!我は慈悲深いのでな。部下の失態くらいならば許そう!」
一度言ってみたかったんだよな、こういうセリフ。
というかやっぱり、ヘリオス声でかくない?我ながらうるさいんだけど...
「はっ。ありがとうございます。」
「キャ、ン、サー...!!!ヘリオス様から離れなさい〜!」
「やですよ〜!」
さて、これで全員かな。まあ、十二人の半数だけどさ。
「静まれ!」
場は静まり、全員が膝をつく。
「只今より、会議を開始する!」
さて、今後の方針の相談だ!