序
「国王様!魔王ヘリオスの軍が攻めて参ります!」
「防御壁を展開し、騎士団を向かわせよ!全力で迎え撃て!」
「はっ!」
突如、窓の割れる音がする。
「!?」
状況も掴めぬまま、従者の一人が無惨に斬り殺される。
「き、貴様!何者だ!」
「ふははは!我は魔王ヘリオス!貴様と対談をする為にわざわざ来てやったぞ!」
クサい悪役口調に、ダサい笑い方。
どこか間抜けな魔王だが、人間を威圧するのには十分だったらしく。
国王はじりじりと後退りをする。
「要件とは、何だ...」
国王は喋りながらも、近くの剣を手に取った。
「抵抗か?」
ヘリオスは青い瞳を見開きながら、威圧的に国王を見下す。
「貴様は人望厚く、冷静な判断を下せる人間だと聞いていたから期待したというのに。どうやら嘘だったようだな。」
カツ、カツ、と靴の音を立てながらヘリオスが国王へと近づく。
「化け物め!貴様のような者に我が国を渡せるか!」
「随分と口が達者だな。そんな貧弱な剣に望みを託しているとは。とんだ下等生物だな。」
ヘリオスは剣を素手で握り、何の躊躇もなくへし折る。
「まあ良い。我は慈悲深いのでな。地べたに頭を擦り付け、平伏し命乞いをするのなら、痛みなどなく殺してやろう。」
「誰が魔王なんぞに頭を下げるものか!」
「そうか、残念だな。」
ヘリオスは目を伏せ、にこりと笑う。
「さらばだ」
瞬間、国王の四肢が血液を散らしながら地を跳ねる。
「声を出さぬとは、なかなかやるではないか。褒めて遣わすぞ。....ン?もう息をしてぬではないか。つまらん。」
「全隊に告知する!国王の首を取った!この国は我の物となる!退却せよ!」
(さて、これで全隊は退くだろ。)
(ところで俺...)
(何でこんなことになったんだっけ!?)