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中ボス令嬢は、退場後の人生を謳歌する(予定)。【書籍化】  作者: こる.
本編

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01:目覚め

 ――じくじくと右足が痛む。


 深い眠りが保てないほどの疼きに、次第に意識が浮上する。




「ぃ……っ、痛ぅ……っ」



 柔らかなベッドのなかで体を丸め、右足の痛みの元に触れようとして――足が一向に手に触れることのないことに気付き、一気に意識が覚醒した。


 上掛けを跳ね上げて起き上がろうとしたのに、体がいつものように動かない。まるで幼い日に高熱で寝込んだあとのような怠さ。



 いつもより暗い室内に戸惑いながら、肘をついて重い上半身を持ち上げて座り、痛みが続く右足を確認すべく上掛けをまくった。




「あれ? どうして……ネグリジェ? パジャマは……」



 ヒラヒラとした裾から出ているのは細い左足で、これは、明らかに私の足じゃない、その上大問題は右足だ。



 スカートの膨らみで、太ももまであるのはわかる。膝もある、だけどそこから下がない。



「いやいやいや。ちょっと待てよ? なにか、根本的に、なにかおかしくない?」



 ぞわぞわと背筋が寒くなる。


 まさか、私が、私じゃない? 入れ替わってるーっ! って叫ぶべきかも。


 入れ替わってる。多分。だってこれ、私の体じゃない。なにこの細さ、筋肉ないじゃないっ、髪も長いしっ、なにコレーっ!






 …………夢ね、きっと。





 足の痛みも、もうなくなってるもの、夢だわ。


 よし、寝よう。


 違和感のある右足を敢えて無視して、剥がした上掛けを肩まで引っ張り上げて大きく息を吐き出す。



 そうよ、明日も仕事だし。

 明日仕事に行けばー、三連休。


 仕事帰りにチユキちゃんたちとケーキバイキング行く予定だから、お弁当は軽くしておいたほうがいいかな。冷凍したおかずまだあったよね、うん。

 土曜日は久し振りに実家に行こうかしら。でもなぁ、兄嫁苦手なのよねぇ、子連れでお出かけしてくんないかな。

 今時、同居ってナイわよね。お父さんも、孫だからって甘やかしてばっかりだし、私にはゲーム機なんてよっぽどお願いしたり、イイ成績取らなきゃ買ってくれなかったのに、クリスマスだの誕生日だの年に何回もねだられるままプレゼントして。



 あーあ、私も早く結婚したーい。もう二十八だし、いい人いないかなー。


 寝返りを打とうとして、右足の違和感に体が強張る。



 なんなのよもうっ、どういう系の夢なのよ。

 悪夢よね、片足ない上に体はガリガリで力が入らないし、なんだか無性に胸が悲しいし。


 まぁいいや、もう寝よう、明日も仕事なんだから。

 五時半に起きなきゃだから、もう寝ないと。


 なんだかわからないこの胸くその悪さも、寝て起きたらスッキリしてるわよね。


 それにしても、なにかしらこのムカムカ。

 悲しいのとは別の嫌な感情が、べったりと胸に乗ってくる。


 いやいや、こんなダークな気持ちでいるのはよくないわ。

 来るべき明日のケーキバイキングに焦点を合わせるべきよ。

 あそこのバイキングははじめてだけど、ケーキ大好きなチユキちゃん情報だと、三つ星パティシエがプロデュースしているから超美味しいらしいじゃない。

 いま、私の中でピスタチオがブームだから、チョコとピスタチオの素敵な出会いをしたケーキもあったら嬉しいわね。時々箸休めにゼリーを食べて、杏仁豆腐とかもあるかしら? あー、テンション上がってきたー!


 明日のケーキバイキングに思いを馳せ、ワクワクした気分を盛り上げて無理矢理眠りについた。

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