第6話 一人じゃ何もできないくせに
埋蔵金を簒奪しにくるんだったら、素直にうばわれればいい。
あげちゃえばいいだろ。
あの時ちょっと掘り出した、ちょっと金目の物っぽいものが、まさか重要な物だったとは。
でも、あいつは「いや秘密の一端を知ってしまったからなら、口封じに必ず殺されるはずだ」と言ってきた。
詰んでる!
私達は、悲劇の予感に頭を悩ませた。
絶望して泣きべそをかき始める者もいる。
「やはりこんな事は話すべきではなかったな、忘れろ。後は俺がなんとかする」
やつは、そんな悲壮感漂う私達をみて、どこかへ去ろうとした。
「どこに行くつもりだよ。お前、一人じゃ何もできない馬鹿だろ!」
シリアスな雰囲気まとったって私は知ってるんだからな。
お前がどうしようもない馬鹿だって。
何度もループして、いい案も浮かばず、余裕がなくなっちゃうくらい馬鹿だってことくらい。
「だから私達に相談したんだろ。だったら一人でかかえこむな!」
「だが、相談しても何もならなかっただろ。ならいずれ解決策が思い浮かぶまで、未来の事を知っているのはお前だけでいい」
私はそいつに頭突きした。馬鹿の脳みそをゆする。
「っ!」
「おまえな!」
未来でどんな物を見てきたか知らないが、私はこれだけは分かった。
「何も知らされないで、お前にシリアスな顔される方がよっぽど気になるし、無茶するにきまってるだろ。言ってくれた方がまだましだ」
ショックを受けるのは当たり前だ。
未来の事なんか知ったら、衝撃を受けるのが普通の人間だ。
けれどそれでも、何も知らないで、何もかもすべてが終わった後に、あいつ一人だけが笑えないでいるのは嫌だった。