外伝:第40回精霊会議
『第40回!精霊会議を始めます!』
『おう~!』
『お、おう~・・・です?』
『本日は特別ゲストとしてセリア様にお越しいただきました。宜しくお願いします』
『はい、宜しくお願いしますわ』
ポチャポチャポチャ!
パチパチパチパチパチ!
慣れた口調でスラスラと精霊会議の開催を宣言する闇精クーデルカと、
元気な歓声を上げるのはその姉精霊の水精アクアーリィ。
その隣には今回が初参加の土精ノイティミルが困惑気味に声を漏らしつつも、
尻尾を駆使して床をパシパシと叩いている。
しかしながら拍手の代わりに行ったその行為は、
砂で出来た体を有する為に音らしい音が発せられることはなかった。
続くクーの言葉は本日の特別ゲストの紹介に移っていた。
精霊会議らしくゲストも精霊ということで、
久々にお父さまと再会を果たしたらしい風属性の上位精霊であるセリア=シルフェイドもこの不毛な会議に呼ばれていた。
時刻は寝る前。
その少しの時間を使って開催をしようと言い出したのは、
もちろん水精アクアーリィであった。
『今回のお題をお願いします、お姉さま』
『え?お題ってなんです?そもそもこの集まりってなんです?』
『こんかいは・・・どうしたらおとなになれるか!』
宗八の枕元で寝ようとしていた所を無理やり連れてこられ、
その場でいきなり始まった精霊会議とやらを良く理解出来ていない土精ノイの質疑に応答はなく、
水精アクアはキラキラと輝く目線を風精セリアへと向けながら、
本日のお題を高らかに宣言した。
『大人ですか?お姉さま、何かしたいことがあるんですか?』
『ばいんばいんになりたい!』
『えぇと、私は別にばいんばいんというわけではないんですのよ?
だからその視線はお辞めなさい、アクア』
『あー、まえがみえないよ~』
ばいんばいんのセリアの胸は慎ましいとは決して言えず、
されとて風船のように膨らむ巨乳というわけではない。
セリアが言うようにばいんばいんではないが、
宗八の世界で言えばCからD手前のお手前であった。
自身の胸に寄せられる熱視線の正体であるアクアの頭に手を置いて、
視界を遮りながら注意をするセリア。
しかし、アクアに感化された他2人の精霊も無意識にセリアのばいんばいんに目線を向けてしまう。
仕方なくアクアの視界ではなく自分の胸を抱えるように隠すセリア。
残念だ、実に残念だ。
『貴女達はまだ成長途中の精霊なのですから、
焦らずともいずれ、ば・・・ばいんばいん・・・になりますわよ』
ばいんばいん発言に顔を朱に染めるセリアであるが、
この場には子供、それに全員性別が女の子なので特にその事についての発言はなかった。
『そういえば、セリア様はどのくらい生きていらっしゃるんです?』
『私も精霊ですから長く生きてはいますけど、
特に何年生きてきたというのはわかりませんわ。
何故なら浮遊精霊時代は大して自意識はありませんし、
成長してからも都度加階までに数年から数十年の月日が必要になりますから、
いちいち数えている精霊はいないんですのよ』
『長命種族あるあるとお父さまから聞いたことはあります。
ちょっと休憩すると言って100年経ったりするんですよね?』
『ま、まぁ私はそこまで悠長ではありませんが、
知り合いに居なくはありませんわね』
へぇー、勉強になるなぁといった表情のノイとクーを見つめて、
微笑ましくなるセリア。
その空気に爆弾を投じる者がいた。
『で、ばいんばいんにはどうすればなれるの??』
水精アクア。
先の話を聞いては居たものの、言外に伝えていた、
成長が進めば胸部装甲もそれなりに膨らむという内容を、
この精霊だけは理解していなかった。
『おしえて~、せりゃ~=ばいんばいん=しるふぇ~どぉ~』
『・・・っぶ!』
『アクア!なんですの、その卑猥なミドルネームは!
ちょっとそこに正座なさいな!』
『あ、ますたーがよんでるからもどるね~、おやすみ~』
『ちょっと!アクア!?』
『すみません、セリア様。クーも戻ります。
お疲れ様でした、おやすみなさいませ』
『え?クーもですの!?』
『あー・・・ボクも今日はあっちで寝ますです。
セリア先生も早く寝て忘れた方がいいです。おやすみなさい』
『あ・・・、何なんですの・・・もう。
辱められただけで終わっちゃいましたわ・・・』
不名誉な名前を付けられ、
挙句放置して寝に戻る奔放な水精に弄ばれた上位精霊。
ほかの娘達も念話で呼び出されたのか、
直ぐにアクアの後を追って部屋を出ていってしまい、
やり場のない感情がグルグルとセリアのばいんばいんを締め付ける。
「もう・・・何なんですのよ・・・。
明日絶対に水無月君に教育について説教をかましてあげますわ!」
やり場のない羞恥心と怒りは保護者である宗八に、翌日向けられるのであった。