プロローグ [蒼白の刻印]
冷たい──いや、痛い。
体を突き刺すような痛みを覚え、辺り一面水晶が敷き詰められた、冷たい地面から体を起こそうとするも、思うように体動かない。そんな中にも背中から熱が伝わってくる。かろうじて動かすことができた右腕を背中にやると、剣がまっすぐに降り立ち、そこから幾筋もの血液、血飛沫が流れ出している。止血……、しなくては。だがおもむろに剣を抜いてもそこから血が溢れてくるだろう。治癒の術でも唱えたいところだが、声がまともに出ない。
辺りの水晶は紅く光り、それは自分の血であること知った時には、もうほとんど思考回路は断絶寸前だった。体内から大量の出血。もう命も長くないだろう。
頭上から吐き捨てるような言葉が降ってきた。
「貴様如きが魔術の真術者?笑わせてくれる。たかだか記憶力、思考力が人より少々優れているだけで真術者の称号を手にできるとは、この世界も落ちぶれたものだ。魔水晶としてその身を全うしろ。」
逃げなくては。この場から少しでも遠くへ。
胸ポケットに忍ばせている血だらけの魔水晶を片手に、
「我が身を剣聖にて転移すべし!」
最後の力を振り絞り、そして……。
クロト=シュタインは死んだ。
一つの聖剣に命を変えて。