放課後の公園 1
失恋して泣いている由良を雪白玲は羨ましく思う。物心ついたころには恋人兼婚約者がそばにいた。
ずっとそばにいるから恋もよくわからない。
ただ失って泣くとしたら死に別れしかないと玲は考える。
「さあ、盛大に泣くがいい」
「オニかー」
玲が促せば由良が叫ぶ。泣くよりは怒っている方がいいし、我慢して落ち込んでるくらいなら恨み言でも叫んて泣けばいい。
「どうあがいても負け犬。あそこでいちゃついている彼女には勝てない」
「うっさい!」
「だって仕方ないじゃない。わかんないんだもーん」
「あ゛ぁ、自慢かっ」
一瞬由良が女の子としてしたらダメな顔していたが玲は笑っていなす。
「うらやましいか?」
「うらやましいけど、ヤバイとも思ってるわよ」
「うん、まあ、そこは触れないで」
GPSはそんなに問題なのだろうか。連絡しなくても迎えに来てくれて便利なのだが、周囲の反応から普通ではなさそうだと理解はしている。
「レイが思っているよりあんたのカレ、ヤバイからね」
「そう? でも、ユラの元カレよりはいいから。正直どこが良くてつき合って泣いてるのかわかんない」
少し離れた場所でシーソーの片側に並んで座っている恋人たちに視線を向ける。
「どっちもファッションでつき合っただけの恋人でしょ。新鮮味が無くなったらポイはお互いさまじゃない?」
由良との距離を詰め、玲は耳元でささやく。
「捨てる予定が振られて気に入らないでしょ?」
黙ってしまった由良に玲は肩をすくめる。わざわざ学校から離れた公園に呼び出したのだ。ただ眺めて終わりにするつもりはない。
腕をとり、嫌がる由良を二人の前まで連れて行く。
「ちゃんと見なさい。ユラがどれだけ泣いてもこの二人はいちゃついてるんだよ」
愉悦に笑う愛美にイラっとしながら玲は言葉を続ける。
「元カノに対してこれだけ情のない行動する男のどこがいいの? こんなのとつき合ってても大事にされないし、不幸になるだけ」
「ちょっとヘンなこといわないで」
愛美が立ち上がりくってかかる。
「邪魔しないで。これはあなたたちの為でもあるの。毎日教室に入るたびに恨みがましい目で見られていたいの? ここてスパッとあきらめさせた方がラクよ」
後半部分を祐樹に向かって言えば、愛美の手を取り止めようとする。
「マナが理解してくれてたらオレはそれでいい」
玲の中で何かが切れた。
「あなたの別れ方が悪いのが全ての原因でしょ。ふった女が恨むのは当然の権利だし、ロクな男じゃないからこじれてるの! サイテーさ以外に理解できるとこがない」
「れいちゃ〜ん。怒ってくれるのはありがたいけど、落ち着こう。あなたの彼氏のスペックと比べると勝てる高校生はいないから」
「女癖悪くて自分に酔っちゃうナルシストで、劣化スペック。こんないいとこなしなのにユラちゃん泣かすからムカつく。こんなののどこがよくてつきあってたの?」
「あれでもいいとこあったのよ。ちょっとすぐ言葉には出てこないけど」
「祐樹くんはかっこいい」
愛美に叫ばれ玲はそちらに視線を向ける。それから祐樹に視線を向け、首を傾げる。
「かっこいい? 髪型で雰囲気誤魔化してるだけでしょ。……パグにウィッグ付けたら似てそう」
怒っていたのにマジマジと祐樹を見つめ、淡々と告げる玲に由良は笑えた。