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番紋の恋人  作者: 九ノ丸
恋の終わりに幸せなんて願えなかった
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夜のファミレス

夕食時間のピークを過ぎたファミレスで、楡木由良にれぎゆらは泣き続けていた。手にしていたハンカチにはもう乾いているところはない。


まだ陽のあるうちからやって来た少女たちは高校の制服を着ていおり、店内にいられる時間は残りわずかとなっていた。


はたから見ていてもわかる失恋して泣く少女とそれを慰める友人。数時間その光景を見せられていたアルバイトたちは、追い出し役をこの時間の責任者である社員に押しつける。


押し付けられた男は時計とにらめっこしつつ、レジカウンターで様子をうかがっていた。そこへクルマが一台入ってくる。ファミレスには少々似つかわしくない高級車が軽四やファミリーカーと一緒に並ぶ。


店内に入って来たのは若い男が一人。


若いがどこかの重役を想わせる貫禄がある人目を惹く男。視察か出張でやって来たかのような場違い感があった。案内に出てきたウェートレスを手で制し、高校生二人は組の席へ向かう。


「そろそろ時間だよ」


うつむき泣いていた少女が顔を上げると友人を睨む。


「失恋して泣いているところに彼氏呼ぶなー」


店内で叫ぶには迷惑な大声だったが、叫んだ少女に向かう視線は避難より同情だった。


「今から帰るには便利でしょ」

「そんなことどうでもいいの!」

「ケンカしないで。お店に迷惑だよ」


周囲を見渡し、二人はしぶしぶ店を出る準備を始める。その間に男は会計を済ませてしまう。


「だいたいいつの間に呼んだのよ」

「呼んでない。ただGPS作動させておかないと外出させてもらえないから」

「何それ? DV?」

「今どこ、何してるメール五分おきにされて、メール返信ないと出るまで電話の着信があるから、放置できるGPSがラク」


見た目もよく、お金も持っていそうな男。誰からも羨まれそうな男が、背後の女子高生二人の会話で残念な男に見える。


「ありがとうございます」


レジカウンターにいた男は三人を見送り頭を下げた。



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