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第四話 街

 重い体を引きずるように歩き、何とかして街に入る。

 どう見ても日本では無い。

 広めの街路はアスファルトではなく、綺麗に整備されているがむき出しの地面であり、通りに面するように並んでいる建物も、木造で高さもそれほど高くない。

 建物の前には得体の知れない文字が書かれた看板と、灯りはランプのようなモノである。


「まずはこの通りを真っ直ぐ行け。そうすると、デカい建物がある。『召喚人』はギルドと言う呼び方をしたがるが、要は仕事の斡旋所兼換金所ってところだ。あの程度の小物だったとしても、多少の金にはなったのにな。たしか、ギルドマスターとやらは『召喚人』らしいから、お前の知り合いではないのか?」


 ギルドマスターが翔英の知り合いかどうかはともかく、赤い眼の剣の話から翔英がイメージしたのは集会所だったが、大差無い事だった。

 どうやらここはヒロイックRPGの世界と言うより、ハンティングゲームの世界観の方が近いみたいだ。

 そう思いはしたが、翔英はひとまず考える事を中断した。

 何より疲れていたと言うのが大きい。

 赤い眼の剣に導かれるままに、翔英は目標地点だったの大きな建物の前に立つ。

 通りに面していた建物は、入口の前に看板を立てていたのに対し、この建物は入口の上に大々的に看板を掲げている。

 例えるなら、通りの建物は小さな喫茶店などが今日のオススメを書いた黒板を立てているのに対し、ここは老舗の大型店舗と言った感じである。

 ちょっと入るのに抵抗を感じるくらいの、敷居の高さがある。


「ちょっと待て。このまま入るのは余計なゴタゴタを呼ぶかも知れない」

「え? あの、何か問題が?」

「俺を抜き身のまま持ち込むのは、さすがに気にした方がいいだろうな。切れ味の良さはお前も見ただろう?」


 なるほど、その通りだと思った。

 まったく無意識だったが、翔英は抜き身の太刀のような長剣を持って街中を歩いていた事になる。

 人通りが少ない事も助かったが、そのせいで気付かなかったとも言える。

 まあ、変な目立ち方をせずに済んだのでよしとしよう。

 しかし、この剣は意外と常識がある。

 本当にこちらの事を考えてくれているみたいだ。


「えっと、どうした方が良いでしょうか?」

「そうだな、街中で戦闘になる事は少ないから、腰に下げるなり背負うなりしたらいいのではないか?」


 こういうところはいい加減なので、本格的に興味が無いのだろう。

 ベルトに通す時に切れたり、足を刺したりしないかと心配になったが、とりあえずベルトに通す事は出来た。

 刀身が長いので地面を擦りそうになったが、そこは上手く調節して建物の中に入る。

 かなり広いロビーと言える一階だった。

 入ってすぐ左手に、見張りと思われるゴツイ鎧と体格の男が立って、入ってきた翔英を睨みつけている。

 奥の右手に受付の様なところがあり、露出度の高い愛らしいショートカットの少女が眠そうにしている。

 左手奥にもカウンターはあるが、ガラスで仕切られ、その奥に怪しいローブ姿の人物が一人いた。

 見た感じで言えば、女の子の方がクエスト受注を、ローブの方が換金を受け付けているのではないかと思う。

 ようやく一息つける。

 そう思った瞬間に、翔英は倒れるようにその場に座り込んだ。


「え? ちょ、大丈夫ですか?」


 すぐ近くに立っているゴツイ鎧の男ではなく、右手奥のカウンターのところに立って眠そうにしていた少女が驚きの声を上げる。

 大丈夫じゃない。もう立ち上がる事も出来ない。


「あの、あちらにイスがありますから、あちらに行きませんか?」


 少女は受付から慌てて出てきて、翔英を助け起こす。

 目を疑う程の美少女だった。

 大きな目が魅力的な黒髪ショートの少女で、背中からコウモリの羽根が生えている為か着ているのは露出度がかなり高いが、フリルやカチューシャのせいでベースはメイド服っぽい気がする。

 上半身は肩や背中がむき出しなのに、スカートが膝丈なので微妙にエロさを軽減しているが、そこはかとなく清楚さも残している。

 ここのギルド長であるらしい『召喚人』が誰かは知らないが、好みは合いそうな気がする。

 背中の羽根もあって見た目には悪魔っぽい少女のむき出しの肩を借りる形になるので、自然と密着する事になり翔英はドギマギしたのだが、少女の方は心配そうに翔英を気にしながらイスのある隅の方に翔英を運ぶ。


「そこで少し休んでいて下さいね」

「あ、すみません、お水とかいただけますか?」

「水ですね、お待ち下さい」


 受付の少女は翔英をイスに座らせた後、走ってその場を離れ、どこからかグラスに入った水を持って戻ってくる。

 彼女から水をもらって、翔英は水を一口飲む。

 よく冷えていて、ただの水のはずなのに物凄く美味かった。


「ありがとうございます」

「いえいえ、そこで休んでいて下さい」


 受付の少女はにっこり微笑んで言う。


(て、天使だ。羽根は違うけど、天使がいる。いや、神だ。女神がいる。やべ、結婚したいとか言ってたキャラの気持ちがマジでわかる)


 翔英は放心したように彼女を見つめていたが、ギルドの中に別の人物達が入ってきたので、彼女は受付に戻ってしまった。

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