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ナイトフレームってすげえ

 鋼鉄同士のぶつりかあう音があたりに響きわたった。


 ここはセルジアの街の郊外。

 おれたちはレスカがあやつる馬(馬といっても地球産とは違って足が六本も生えている)に乗って街を出て、荒涼と広がる荒野から聞こえてくる大きな音を頼りにここまでやってきた。


 馬を岩場の影に停め、そこに隠れて音の正体を見物する。

 そこでは二体の鋼の巨人が力くらべをするように密着していた。


「運がいいぞ。ライオットにあたるなんて」


「ライオット?」


 こっちの世界にきてからおれは相手の言葉をオウム返しばかりしてるな。

 知らないことばかりなんだからしかたないけどさ。


「あっちの青い機体のことだよ」


 レスカが指さしたのは両手の甲に丸いシールドを装備したクワガタ角の機体だ。


「あれに乗ってるシド・ホーエルマイアーは雷神の異名をもつエース騎士だ。一度の戦闘で五体のナイトフレームをほうむったこともある」


 まるでクリスマスの朝に枕元のプレゼントを見つけた子供のように目を輝かせるレスカ。


「相手は狼騎士団のシュナイザか」


 ブラウン系のカラーリングがされた重厚感ある機体は見るからにパワーがありそうだ。

 こちらはライオットと違ってそれぞれの手に斧と盾を装備している。


「肩のあたりにずいぶんと派手なマークがついてるな」


 シュナイザの右肩に描かれているアレは天にむかって吠える狼のマークだろうか? 


「良いところに目をつけたな。あれは騎士団の紋章シンボルだ。騎士団所属の機体はあそこに騎士団の紋章を描くことが通例になってる」


 へえっと感心しながらもう片方のナイトフレームを見る。


「でもあのライオットとかいうヤツには描いてないぞ」


「雷神は傭兵団を率いていて、どこの国にも属していない。士官の話は引く手数多らしいがな」


 レスカの説明を聞いているうちに、密着していたふたつの機体がはなれた。

 ナイトフレームの実戦か。


 正直、おれはそんなに期待してなかった。

 元の世界でもさんざん乗りこなして実戦形式の訓練も積んできた。

 しかしあちらでも結局、このナイトフレーム(元の世界ではフレームアームと呼ばれていた)は戦闘機にも戦車にもとって代わることができなかった二流の兵器だ。


 そりゃそうだろ。

 立てば全長十メートル以上のデカイ図体に人を似せただけのぎこちない鈍重な動き。そして携行できる武器はバランスと間接部の耐久性の問題で戦車の主砲におよばない中途半端な射程距離のものばかり。

 こんなのが戦場に出てくれば格好の標的だ。


 だから異世界に輸出された。

 こんなのでも科学技術が発達していないこの世界では十分に兵器として使えたのだろう。


 いまでは向こうの世界がこちらに輸出する製品の半分近くがこのフレームアーム関係らしい。むろんおれ達もふくめてだ。

 それがおれのフレームアームの知識である。


 そのはずだ。


 そのはずなんだ。


 なのに――


 なのにこれはなんだ?


 おれはなにを見ている?


 シュナイザが手にした斧を打ちこむ。

 それをライオットがいっぽうの盾で見事に受け流し、もういっぽうの盾を武器のかわりに叩きつける。

 両者の盾がぶつかりあい、カン高い音の波が大気を震わせた。


 それはまるで人間のように滑らかな動きだった。

 間接部分はどうなってるんだ? バランスはどうやってとってる? このレスポンスの速さはどうやって生みだしてるんだ?

 こんなのロボット(フレームアーム)の動きじゃないだろ。


「驚いただろ?」


「…………」


 レスカの言葉も半ば素通りしていた。

 驚いたなんてものじゃないぞ。おれはいまありえないものを見ている。


「だがナイトフレームの真骨頂はこんなものじゃない。そら、ライオットがその片鱗を見せてくれるぞ」


 ライオットの周囲に青白い光がスパークし、手盾のギミックから刀身が飛びだす。

 ここからの展開は一瞬だった。


 ライオットが両手の盾をかざして突っこむ。

 シュナイザが斧をふり下ろす。

 それが今度こそライオットを真っ二つにしたかと思えば、あの巨体が霞のように消え去ってしまった。

 ライオットのあまりのスピードに残像が生まれたのだ。

 シュナイザの斧はそれを斬ったにすぎない。


 実体はシュナイザの真横に現れた。

 青い機体が踏みとどまる足元で大量の土砂が跳ねあがる。


『チッ! 雷神お得意の雷歩ブリッツか!』


 外部スピーカーのようなものからシュナイザを操る騎士の焦った声が聞こえてくる。

 ふり返るシュナイザ。


『遅い!』


 だがそのときにはライオットの刃がシュナイザの利き腕をはね飛ばしていた。

 ボタボタと零れていく赤黒い液体はまるで血のようだ。


『クウッ! サリー! 七番弁を閉めろ! まだやれる!』


『やめておけ。次は首をはねる』


「す……すごい……」


 超重量の巨人がくり広げた戦いに得体の知れない感情が湧き上がってきた。

 レスカの目が子供のように輝くわけだ。

 これを見て興奮しないわけにはいかないじゃないか。


 それほどに人知を超えた動きなのだ。

 この世界の人間はあれが当然なのか?

 これならむこうの世界でも兵器として通用するかもしれない。


 フレームアームはこの異世界という舞台でまったく別のナイトフレームという怪物に変貌していたようだ。

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