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金髪ポニテ騎士、その名はレスカ

 しばらく公爵の執務室で待っていると、とつぜん廊下側の扉が開けはなたれる。


「ノックもせずに入ってくるなんて無作法じゃないかしら? 騎士レスカ」


 まるでそれがわかっていたように余裕の対応をするところ、さすが公爵という地位にいる人は違う。

 庶民のおれなんて驚いてその場で飛びあがってしまったのに。


「わたしはあなたによばれて来たのだ。ならばなにを遠慮する必要がある?」


 ポニーテールに結んだ美しい金髪をはねさせて、とんでもなく大胆不敵な女が入ってきた。

 歳は俺とおなじくらいのはずだが、公爵という大貴族をまえにしてもなんら怯むことのない堂々とした態度に自信にあふれた瞳。

 凛とした美しさに抜群のスタイル。

 この少女は人としておれよりひとつ……いや三つくらい上のステージにいるような、そんな魅力にあふれている。


 その輝く瞳がおれをとらえる。

 それだけでおれの背筋にぞわぞわしたものがかけ抜けた。

 悪寒のような歓喜のような名状しがたい感覚で、恐怖してるのか喜んでるのか、自分でもわからない。


 彼女は視線をソファーに座っているおれの頭のてっぺんからつま先までおろし、さらに額のところまであげて固定した。


「赤い未契約のクリスタル。おまえが今回公爵に庇護されることになったアルフェイルか」


「ああ。ケイスケ・ハセだ」 


 タメ口だけどいいよな。同年代だし。

 おれは今日、三度目になる自己紹介をした。まだ一度もされてないけどな。


「かわった名前だな。異世界人だから当然か? わたしはレスカ・コーバックだ」


「へっ?」


 だからこの女騎士に自己紹介されたことに心底驚いたのだった。


「どうした?」


 よほどマヌケな顔をしてたんだと思う。不審な顔をされてしまう。


「いや、自己紹介するんだなあと思って」


「あたりまえだろ。初対面なんだから」


 うん。あたりまえだ。でもそのあたりまえのことが出来ないヤツがこの世界には多くないか?


「……」


 おれは何となく公爵のほうを見た。されてないんだけど。


「なにか言いたそうね? わたし、自己紹介ってしたことがないのよ。なにせ会う人みんなわたしのことを知っているから。あなたも中尉から聞いていたんじゃない? だからする必要もないと思ったのだけど」


 たしかに聞いてたけど。

 自分を知らない人間に会ったことがないってどんなセレブだよ。


「リンダ・リンガーハイムよ。たいてい公爵とかリンガーハイム公爵ってよばれるから名前なんてほとんど飾りでしかないけど」


 それはそれで寂しいな。

 そんなふうに同情したのが悪かったのかもしれない。

 公爵はまるで少女がとびっきりの悪戯を思いついたような笑みを浮かべたのだ。

 なんかイヤな予感がするぞ。


「そうだ。ケイスケ。あなたはわたしのことをリンダとよびなさい。ひとりくらいそういう人がいるのもいいわ。せっかく親からもらった名前なのだし」


 やっぱり!


「おれがですか!? どうして!?」


「異世界の人間だからよ。この世界の人間に強要して自殺したらどうするの」


 そんな大それたことをおれにさせようとしてるのか、この人!?


「勘弁してください」


「ダメ。これは命令よ」


 根っからの我がまま人間だ!


「ううっ……」


「ほら、はやく」


 ああもう! 本人が言えって言ってるんだ!なにをはばかることがある? もともと身分なんてない国からやってきたおれだぞ!


「リ、リンダ……さん?」


 思いっきりどもった! カッコわるッ!


「ふふっ。なるほど。なんだかこそばゆいわね。でもイヤじゃないわ。新鮮よ」


 おれは何か胃のところが痛いです。

 なんでこうなった?


「遊んでるところ申しわけないが、そろそろわたしがよばれた理由を聞かせてもらえないか?」


 こっちはこっちでイラついてらっしゃるし!

 けして遊んでるわけじゃないから!


「まあそう慌てなくてもいいじゃない。お茶を用意させるから。一緒に飲みましょ」


「けっこうだ」


 おおっ。公爵の誘いをこうまできっぱりと断るなんて、気位の高さではこっちも負けていないな。


「即断はあなたの美徳だけど、拙速はあなたの欠点ね」


「帰らせてもらおうか」


 頑として譲らないレスカにさしものリンダさんも肩をすくめた。


「わたしのところで預かることになったこの子の世話をあなたに任せたいの。この子の契約先が決まるまでね」


「わたしがか?」


「そうよ」


「あなたのところの騎士にさせればいいではないか」


「彼らは忙しいの。泊めてあげてるんだからそれくらいしても罰はあたらないと思うわ」


 こいつ公爵に仕えてる騎士じゃないのか。

 そりゃそうか。主にたいしてこんな無礼な態度の騎士、いるわけない。


「チッ。痛いところを。わかった。いいだろう。ではケイスケ、行こうか」


 考える素振りは一瞬だった。そして決めれば即座に次の行動に移っている。さすが即断の騎士である。


「えーっと」


 リンダさんの様子をうかがうが、笑って手をふってらっしゃるので、もうここから出ていっても良さそうだ。


「わかった」


 おれはここに来たときのように、次はレスカのあとについて公爵の執務室をあとにした。


「で、どこに行くんだ?」


 廊下に出て迷いなく進んでいくレスカに、おれは背後から聞いてみた。


「街の外だ」


 彼女はこちらにふり返ることなく足を動かしている。

 ずいぶんと歩くのが速い。なにをそんなに急いでいるんだ?


「街の外になにかあるのか?」


「セルジアは騎士の集まる街だ。この時間なら郊外で誰かしらが決闘してるだろ。急ぐぞ」


「騎士の決闘?」


 そこでようやくレスカはこちらにむかってふり返った。


「見ておきたいだろ? おまえが騎士とともに乗ることになる、この世界の戦争主力兵器『ナイトフレーム』の実戦を」

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